ブルネロ・クチネリの人間主義的経営の書評


人間主義的経営

著者:ブルネロ・クチネリ
出版社:クロスメディア・パブリッシング(インプレス) 

本書の要約

ブルネロ・クチネリは「人間のための資本主義」を実践することで、会社の価値を高めています。従業員に高い給与を払い、売上に繋がらない村や自然の環境に投資しながら、高い収益を上げ続けています。贈与が収益を産み、収益を贈与に振り当てる、そのサイクルを生み出したことが、顧客や投資家の共感を生んだのです。

ブルネロ・クチネリが実践する「人間のための資本主義」

人間と自然の間には結婚に似た関係があり、自然は人間の生活に欠かせない時間の概念を教え、人間は自然に合わせて働き生活します。両者の結合から大地の恵みが生まれます。農業には人が生きていく上で経験するあらゆる事象が胚芽のように含まれています。聖なるものへの畏敬、整理整頓し、勤勉に働くことの大切さ、予測不能の不確実性、人間ならではの助け合い、放置するのではなく、18世紀の風景画家の絵のように人の手で整えられた自然の美しさ。ホメロスが詳細に描写した古代のアルシヌーの菜園のように、庭園も、菜園も、田園風景も人の手が加わることによって美しくなるのです。(ブルネロ・クチネリ)

イタリアの片田舎で育ったブルネロ・クチネリは、人間の尊厳と自然との調和を事業の目的とした「人間のための資本主義」という考え方を提唱します。彼は農家の子供として生まれ、自然と共生する中で、人間と自然が調和すべきだと考えるようになります。ペルージャという都会に引っ越した際に、父が勤めている工場からいじめを受けるようになります。その際、クチネリは人間を大切にする経営を志します。

「ブルネロクチネリ」は、1978年、色鮮やかなカシミヤセーターを製造する小さな会社を立ち上げ、事業の目的を倫理的にも経済的にも人間の尊厳を追求することと決めました。1982年、イタリア・ウインブリアの小さな村、ソロメオに移り、そこを「人間のための資本主義」を実現する場所と決めたのです。彼は幼年時代の自然と一体化した生活や、 両親、親戚との愛情あふれる触れ合いを大切にすることにしました。

ソロメオの豊かな暮らしを取り戻すため、村を修復し、文化、芸術、人々の交流を促進するために、彼は、劇場、図書館、公園などの施設をつくり、地域への貢献を続けます。教会や工場の修復を行うなど、過去の人々が大事にした文化や建物への「贈与」を続けることで、多くの人々の共感を得ます。

人間を大切にすること。人として、企業家としての私の指針はここにあります。人間の尊厳のために働くなど雲をつかむような怪しい話であり、現実にそんなことはできるはずがない。そう感じられるかもしれません。しかし私は人間の尊厳を守るために働くことは誰でもできると考えています。それは何か目に見える結果を出すのではなく、いかに行動するかという問題だからです。人間の尊厳を守ることは結果よりも自分の思いと行動次第なのです。

クチネリ氏はその知恵を、古代ギリシャからローマ帝国、ルネッサンスから産業革命まで、様々な人間の歴史と数々の哲人・賢人の言葉を経営に取り入れることで、資本主義の時代に新しい価値を提供しています。多くの顧客や経営者が、クチネリの経営思想に共感し、この会社を成長させらのです。

ブルネロクチネリ社が成長する理由

「ブルネロクチネリ」を愛用する起業家も多く、スティーブ・ジョブズがこのブランドの黒のハイネックセーターを着ていたのは有名です。マーク・ザッカーバーグもグレーのTシャツなどを愛用しています。

人間を重視した経営を行っているブルネロクチネリ社は、経済的な成功も手に入れます。なんと2012年には、はミラノ証券取引所に上場します。上場によって、クチネリは以下の果実を得ようとします。
●強固で国際的な会社にする
●多数の株主の声を謙虚に聴く
●見えない株主たちが良きアドバイザーとする
●将来、会社は自分の子どもたちより優れた経営能力を持つ人々によって経営される可能性を見出す。
ブルネロ・クチネリ社の経営姿勢は、投資家からも評価され、株価は上場後も堅調に推移しています。

消費者と生産者の双方にとって価値のある手作りの製品、美しい労働環境、リラックスできる快適な休息時間、手仕事の価値が隅々まで行き渡った会社の文化をミラノ証券取引所に上場することで、世界に広めることができました。様々な記事を通じて、ブルネロ・クチネリの人間と自然が調和した経営が世の中に広まっていったのです。

私たちの会社では、ブルーカラーとホワイトカラーの給与の差がなく、世間の平均よりも少し高く、高い技術を持つ職人はそれよりさらに少し高くあるべきだと考えていました。3か月ごとに株主が集まり、事業の全体から細部まで、どんな小さなことも分析し検討しました。

ウンブリア州の郷土料理が用意されるレストランで社員は、昼休みを楽しみます。出勤のタイムカードはなく、朝は全員8時に工場に入り、仕事は夕方5時半に終了します。17時30分以降のメールが禁止されるなど、「ブルネロクチネリ」では、休息が重視されています。祖父の時代の働き方を守ことで、同社は人間らしい暮らしを体現しています。

同社が掲げる「人間のための資本主義」を多くの経営者が学びにきていると言います。Amazonのジェフ・ベゾスやセールスフォース、ツイッターなどの創業者やCEOがソメリオ村に集まり、対話集会を行ったと言います。

ファッションの分野で、世界で最も評価の高いブランドのひとつとみなされていることに私たちは誇りを持ち、感動を覚えています。私たちの商品が世界中でかくも大きな共感を集めるとは想像していませんでしたが、その共感からもたらされた価値を私たちの土地に還元していくことは正しいことなのだと思います。 適正な成長と適正な利益という考え方によって、会社は今、財務的にも財務以外の面でもとても健全な素晴らしい状態にあり、現代の世界に「人間のための資本主義」大きな夢を少しずつ形にしつつあります。

「過去から受け継いだ遺産は重い荷物ではなく、私たちが明るい未来に飛び立つための翼だ」とクチネリ氏は言います。インターネットは未来の一部であり、人類の現在をより良い方向に変えており、これからも世の中を変えていくはずです。オンラインストアを伝統と現代をつなぐショーウィンドーだと捉え、積極的に活用するなど、過去だけでなく、未来への投資も怠りません。

同社は、従業員に高い給与を払い、売上に繋がらない村や自然の環境に投資しながら、高い収益を上げ続けています。仕事の価値を磨き、人間が暮らす土地や自然環境に投資することによって、手仕事の価値を更に高めることで、ブランドを強くしています。「ブルネロクチネリ」のブランドの強みは、贈与が収益を産み、収益を贈与に振り当てる、そのサイクルを作ることで、会社のファンを増やしていったのです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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