マット・リドレーが予測する2050年の未来とは?


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人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化する
著者:マット・リドレー
出版社:ニュースピックス

本書の要約

2050年のイノベーションが世界を劇的に変えるとマット・リドレーは予測します。イノベーションは自由から生まれ、繁栄を生み出すなら、ロビイングや規制をやめ、実験と失敗を許容すべきです。イノベーションを起こりやすくすることで、私たちの未来をよりよくできるのです。

マット・リドレーが予測する2050年の未来

将来のテクノロジーや慣習については悲観しすぎになりがちだが、ほぼ同じくらい楽観しすぎにもなりやすい。それでも、これから数十年でイノベーションが世界を劇的に変えられることに、疑いの余地はほとんどない。(マット・リドレー)

マット・リドレーの新刊人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化する書評ブログを続けます。著者は本書の最終章で、今から30年後の2050年後の未来を大胆に予測しています。今日は彼が考える未来のイノベーションを紹介します。

①2050年の介護・医療
リドレーはテクノロジーの進化が介護ビジネスの可能性を広げ、シルバー世代を楽しませてくれると言います。高齢者介護のコストは大幅に下がり、介護士の賃金が上がる可能性もあります。

2050年には、私はもし生きていれば92歳で、おそらく介護を必要としているが、そのころ私たちが住んでいる世界では、人工知能のおかげで高齢者の介護はいまよりはるかに安く、血の通った、それでいて効率的なものになっているだろう。すでにいまでも子どもや介護士が 高齢者をモニターし、本人が無事で、活動していて、食べていることを、電話をかけずに確認できる遠隔介護装置がある。こうした装置のほうが、非常ボタンより評判がよくて効果もあり、たえまない訪問や電話よりわずらわしくないことがわかっている。結果的に介護士1人あたりの生産性が高くなれば、より多くの人びとが介護を受けられ、介護士の賃金も上がる。

医療のテクノロジーは長生きというギフトを多くの人に与えます。2050年までに、健康寿命を謳歌する人が増えるはずです。老化細胞除去薬、ロボットキーホール手術、幹細胞治療、遺伝子編集がん治療、その他さまざまな医療イノベーションによって、より快適な老後を生きられます。

アレルギーと自己免疫疾患の発生も食い止められている可能性が高いと著者は言います。場合によっては、自閉症その他の精神疾患も含めて、多くの自己免疫疾患を根絶しているかもしれません。

②2050年の輸送
宇宙への定期便はないかもしれませんが、すでにナビゲーションを助けている人工知能が、路上と空中での安全を確保しています。輸送で出る汚染物質ははるかに少なくなり、都市の大気の質は向上し続ける一方、相乗りだけでなく道路や乗り物のシェアリングも、はるかに効率的になっています。

③2050年の金融
暗号通貨の使用によって、政府とお金の関係は急激なインフレがまったくなくなるように変わっています。ブロックチェーンの利用で、弁護士、会計士、コンサルタントといった、コストの高い仲介者が排除されているかもしれません。犯罪ははるかに行ないにくく、はるかに見つけやすいものになっています。税金はもっと公平になり、政府の無駄遣いは減っているかもしれません。

④2050年の遺伝子ビジネス
「遺伝子ドライブ」DNA配列によって、たとえば保因者の子孫のうち一方の性を排除する手段が、野生生物保護の活動を変えている可能性があります。私たちは人道的に、ほかの種を絶滅させるおそれがある特定外来生物を駆除したり、ある種の個体数を抑えることによって別の希少な種を助けたりすることができるようになっています。

また、遺伝子編集によって、ドードーやマンモスを生き返らすこともできるかもしれません。遺伝子編集作物によって農業の生産性が大幅に上がり、必要な土地がはるかに少なくなり、そのおかげでドードーやマンモスなどの種に、生息できる新たな大規模国立公園を与えることもできます。

⑤2050年の環境
革新的な機械だけでなく革新的な政策によっても、環境問題も解決に向かいます。海の生態系を元どおりにし、雨林を修復している可能性があります。経済の脱物質化が実証するように、成長とは、よ り少ない資源からより多くの利益を得ることを意味するようになっています。

2050年までに、イノベーションによって、さらなる「ありえなさ」と繁栄に十分な燃料を供給しながら、二酸化炭素の正味排出量は大幅に減り、ひょっとするとマイナスにさえなるようなエネルギーを生み出すことが可能になる。おそらくそれは、天然ガス使用量の増加と石炭使用量の減少、海洋における広範なプランクトン多産化、そして大陸のさらなる森林再生とあいまって、核融合を含めた効率的な新しいモジュラー式の原子力が組み合わされ、さらに北海のような場所で精力的に炭素回収が行なわれるということだろう。

2050年は間違いなく、今より地球環境もよくなり、私たちも豊かになっています。自由な時間が増えることで、私たちはよりクリエイティブに生きられます。著者は、次世代の起業家たちがイノベーションを起こすことで、これらの予測を現実にできると言います。

イノベーションは自由から生まれ、繁栄を生み出す!

たくさん儲ける最善の方法は、すばらしいアイデアを思いついて、その実現に取り組むことではなく、政府の支持を取りつけることだ(ルイジ・ジンガレス)

最近では逆風が吹いていて、イノベーションが起こりづらくなっていると著者は指摘します。レントシーキングによって、大企業と大きな政府のなれ合いが起こり、企業の管理主義がしだいに起業家精神の活力を奪っています。上司は不確かさを敬遠し、代わりに会社をどんどん官僚主義的にしています。イノベーションが人類をより豊かにしてきたなら、私たちは政治家に対するロビイングや官僚主義を許してはいけません。

アメリカにおける新規開業率は、1980年代末の年12パーセントから、2010年には8パーセントに落ちました。1996年から2014年までに、20代の人たちによって始められたスタートアップの割合は半分になっています。OECDの調査によると、スタートアップの割合は18の経済圏のうち16で下がっています。

ヨーロッパの時価総額の高い企業100社のうち、この40年に設立された会社は1社もありません。ドイツのDAX指数30銘柄のうち、1970年よりあとに設立されたのはたった2社、フランスのCAC指数40銘柄で1社、スウェーデンのトップ50社ではゼロでした。グーグルやフェイスブック、アマゾンと戦えるデジタル巨大企業が、ヨーロッパでは1社も生まれていないのです。

この考え方が正しいなら、西側経済のイノベーションを生み出す能力は衰えてきている。所得が伸び悩み、社会的流動性に有利な条件が枯渇しているように見えるかぎり、原因はイノベーションが多すぎることではなく、少なすぎることにある

イノベーションは過剰ではなく、欠乏していて、そこを中国が狙い撃ちしています。

シリコンヴァレーは、やがて将来的に有能な人材を引き寄せるのに苦労します。仕事をするにはますますコストが高く、窮屈で、規制が厳しく、税金が高い場所になっていいます。一方、中国の起業家は「9-9-6」で必死に働いています。彼らは午前9時から午後9時まで週6日働き、新しいビジネスを次々と生み出しています。

中国が政治的独裁主義によって抑制することで、やがてイノベーションは起こりづらくなるかもしれません。中国政府があれほど関係のよかったアリババを締め付けていることを見れば、中国の未来はあまり明るくないことがわかります。

エジソンやフォードの例を見るまでもなく、イノベーションには実験と失敗を許容することが求められます。「イノベーションは自由から生まれ、繁栄を生み出す」とマット・リドレーは言いますが、これを自ら規制することは、未来を暗くしてしまいます。なんとしても自由で失敗を繰り返せる環境を持続させ、私たちは今後も繁栄を維持すべきです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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