マット・リドレーの繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史の書評


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繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史
著者:マット・リドレー
出版社:ハヤカワ書房

本書の要約

ものやアイデアの交換によって、豊さが生まれるとマット・リドレーは言います。人との交換によって、私たちは自分のやりたいことに集中でき、それが生産性を高めたのです。イノベーションのパワーを信じ、未来を悲観的ではなく、楽観的に捉えるようにしましょう。

交換が成長と豊さを生み出す!

専門化はイノベーション(革新)を促した。道具製作用の道具を作るために時間を投資することを促したからだ。それが時間の節約につながった。そして繁栄とは端的に言うと節約された時間であり、節約される時間は分業に比例して増える。人間が消費者として多様化し、生産者として専門化し、その結果、多くを交換すればするほど、暮らし向きは良くなってきたし、これからも良くなるだろう。(マット・リドレー)

先日、マット・リドレーの新刊人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化するをこのブログで紹介しましたが、過去の作品の繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史が本書のベースになっていたため、再読することにしました。

メディアは現代人は不幸な時代を生きているといると指摘しますが、著者はその考え方に疑問を呈します。この200年の歴史を振り返れば、人類はイノベーションのおかげで確実に豊かになっています。グローバルな分業に人びとが引き込まれることで、専門化と交換が進み、私たちの生産性は高まっているのです。

現代人の多くは、どの時代の先祖と比べても栄養状態がはるかに良好で、よい住宅に住んでいます。フランスの王様たちよりもよい食事を食べ、病気にかかる確率も低く、人生をエンジョイしています。インターネットで動画を楽しみ、飛行機が低価格することで、世界中を旅する自由を得たのです。

今後もイノベーションによって、人口爆発、気候変動、テロリズム、貧困、エイズ、うつ欝病、肥満といった人類を悩ませる課題が解決されていくはずです。100年後の人類は今日よりずっと良い境遇にあるとポジティブに捉えましょう。歴史という事実を信じれば、極端な悲観論に陥るのは無意味なことなのです。

経済成長を目の敵にするのではなく、イノベーションの力を信じ、未来は明るいと考えた方が、現実的です。確かにテクノロジーによって、ネガティブなことが起こる可能性がありますが、それ以上の価値を私たちは手にするはずです。サスティブルな世界を実現したければ、自給自足を目指すより、ものを交換した方がよいのです。

自由な交易が人類に繁栄をもたらす!

1980年から2000年にかけて、開発途上国に住む貧しい人びとの消費は、世界全体の2倍の割合で増えた。中国人は50年前に比べて10倍の財産を持ち、出生率は3分の1に減り、寿命が28年延びた。ナイジェリア人でさえ、1995年当時より2倍豊かで、出生率は25パーセント減り、9年長生きになった。世界人口が倍増したのにもかかわらず、絶対的貧困の暮らしをしている人の数ですら、1950年代以来半減し、18パーセント未満まで下がった。むろん、この数字は依然として恐ろしいほど大きいが、全体的な傾向は少しも絶望的ではない。今の減少率が続けば、2035年ごろにはゼロになる(おそらく、そううまくはいかないだろうが)。

今後もものやアイデアを交換することによって、経済成長は持続します。一時的に戦争や恐慌によって、経済が停滞することなありますが、人間は過去に何度も大きな課題を解決してきました。

私たちは過去のイノベーションの蓄積によって、豊かな生活を実現しています。私たちが食べるパンに使われている小麦は新石器時代のメソポタミア人によって改良されました。パンの焼き方を最初に発明したのは中石器時代の狩猟採集民です。

ものの交換による分業が非常に広く行われることで、人類は繁栄を手に入れたのです。農業技術の進展、農作物の交換によって、人々は時間を手に入れ、様々なイノベーションを起こしてきました。

自分の必要とするサービスを買えるだけの値段で自分の時間を売れなければ貧しく、必要とするサービスだけでなく望むサービスまで手に入れる余裕があれば豊かだと言える(。これまでずっと、繁栄や成長は、自給自足から相互依存への移行と同義語だった。

都市の形成によって、様々なものやアイデアが交換されるようになりました。この200年の成長も都市の発達と人々の移動の自由によってもたらされたのです。過去2世紀から得られる教訓は、自由や幸福は、繁栄や交易と手に手を組んで進むものだということだったのです。

軍事クーデターによって自由を失い、独裁者の支配下に入る国はたいてい、その時点で、平均すると年率1.4パーセントの割合で一人あたりの所得の下落を経験していると言います。2つの世界大戦のあいだにソビエト連邦とドイツと日本が独裁国家になったときにも、 1人あたりの所得の下落がその原因でした。

自由のない中で、中国は成長を続けていますが、やがて中国も大きな問題を抱えるはずです。中国の成長率がゼロになれば、中国でさらなる革命あるいは弾圧が起きるとリドレーは指摘します。

繁栄のためには自由な交易が必要だと捉え、テクノロジーの進化を楽観視するべきです。歴史を学び、繁栄の理由を理解すれば、過度の悲観論に陥らずにすみます。

マット・リドレー人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化する書評

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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