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良い戦略、悪い戦略
著者:リチャード・P・ルメルト
出版社:日本経済新聞出版
本書の要約
良い戦略に必要なのは、さまざまな要求にノーと言えるリーダーです。戦略を立てるときには、「何をするか」と同じぐらい「何をしないか」を決めることが重要になります。リーダーは的を絞った方針を示し、そこにリソースを投入し、行動を促進すべきです。良い戦略が、良い結果をもたらしてくれます。
良い戦略と悪い戦略の違いは何か?
戦略を立てるとは、組織にとって良いこと、好ましいことをどうやって実現するかを考えることである。(リチャード・P・ルメルト)
多くの企業の戦略立案は間違っていて、世の中には悪い戦略が溢れていると経営学者のリチャード・P・ルメルトは指摘します。彼は経営学の研究者を表彰するThinkers50にも選ばれた才人で、戦略論のプロフェッショナルとして活躍しています。
ビジョンやミッションも重要ですが、あるべき姿をポジティブ・シンキングだけで実現するのは無理があると言い、「念ずれば夢が叶う」という姿勢を否定しています。希望的観測だけでは、企業の未来は明るくなりません。
悪い戦略策定では、現実に目を瞑り、困難な状況の分析を意図的に避けています。戦略策定をただの目標設定と取り違えてしまうと、問題解決に注意が向けられず、正しい答えを導けません。経営陣がステークホルダーや経営陣に配慮すると、困難な選択が先送りされてしまいます。
本当は選択と集中を行うべきなのに、様々な分野にリソースや行動を配分するために、中途半端な状況で経営を続けることで、業績を悪化させてしまうのです。リーダーが中途半端な決断をし、悪い戦略を継続すると、多くの人が悪影響を被ります。
悪い戦略を見分ける目を養うと、戦略の策定や評価分析の能力を飛躍的に高めることができます。悪い戦略には、次の4つの特徴があります。
①空疎である
戦略構想を語っているように見えますが、中身がありません。わかりきったことを必要以上に複雑に見せかけます。
②重大な問題に取り組まない
戦略とは、本来困難な課題を克服し、障害物を乗り越えるためのものであるにも関わらず。重要な問題を無視するなら、それは意味をなしません。
③目標を戦略と取り違えている
悪い戦略の多くは、困難な問題を乗り越える道筋を示さずに、単に願望や希望的観測を語ります。
④まちがった戦略目標を掲げている
悪い戦略では、目標が多すぎる一方で、行動に結びつく方針が少なすぎるか、まったくありません。矛盾する目標や、どうかすると実行不可能な目標を発表すると、社内は混乱し、ゴールにたどり着けなくなります。
良い戦略を築くための3つのステップ
企業にとって大切なのは、やみくもに業績目標を掲げるのではなく、状況を診断して課題の本質をみきわめることである。この診断がついたら、どうすれば最も効率的かつ効果的に対処できるか、方針を決める。そして一連の行動とリソース配分をデザインし、方針を実行に移す。
一方、良い戦略には、しっかりした論理構造があります。著者はこれを「カーネル(核)」と呼び、次の3つのステップが欠かせません。
①診断
状況を診断し、取り組むべき課題を見極めます。良い診断は死活的に重要な問題点を選り分け、複雑に絡み合った状況を明快に解きほぐします。 企業経営では、重大な戦略転換が診断によってもたらされます。
②基本方針
診断によって、分かったことから、方向性と総合的な方針を示します。 良い基本方針は、埋もれていた強みを引き出し、あるいは新たな優位性の源泉を開発して難局を打開します。戦略的優位があれば、そこにレバレッジをかけることで、リソースや行動の効果を何倍にも大きくすることができます。より広い視野から自社の戦略的優位性を探すことで、私たちは勝ち筋を見つけられるようになるのです。
③行動(基本方針を実行するために設計された一貫性のある一連の行動)
すべての行動をコーディネートして、方針を実行します。 最も優先すべきことを決めるのは、戦略を立てる中で最も困難な作業で、強力なリーダーシップが必要になります。この作業を完了して初めて、戦略を行動に移すことが可能になります。
良い戦略に必要なのは、さまざまな要求にノーと言えるリーダーです。戦略を立てるときには、「何をするか」と同じぐらい「何をしないか」を決めることが重要になります。
良い戦略とは、1つか2つの決定的な目標にエネルギーとリソースを集中投下し、それを達成することによって次々と新しい展開へとつなげていくことなのです。
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