藻谷ゆかり氏の六方よし経営 日本を元気にする新しいビジネスのかたちの書評


六方よし経営 日本を元気にする新しいビジネスのかたち

著者:藻谷ゆかり
出版社:日経BP

本書の要約

売り手よし、買い手よし、世間よし、作り手よし、地球よし、未来よし。の「六方よし」経営は、SDGs時代に求められる経営であり、地域再生や事業承継にも使えます。越境学習→価値の発見→フェアトレードor地産地消に気づいた経営者たちは、結果として、「六方よし」経営を実現していたのです。

六方よし経営とは何か?

売り手よし、買い手よし、世間よし、作り手よし、地球よし、未来よし。(田勢和夫)

近江商人は「売り手よし、買い手よし、世間よし」の三方よしを実践していましたが、経済がグローバル化し、サプライチェーンが複雑になる中、売り手の範囲は大きく広がっています。大量生産・大量消費が地球環境を悪化させている中で、世間の範囲も見直しが必要になっています。

元国連職員の田勢和夫氏は「三方よし」に、さらに3つのよしを加えた「六方よし」の経営を提案します。
■サプライチェーン上の『作り手』が守られ、真価を発揮すること
■私たちの活動の舞台である『地球』が健康な状態にあること
■私たちの次の世代、それに続く将来の世代に負の遺産を遺さないような行動を私たちが取ることです。

売り手よし、買い手よし、世間よし、作り手よし、地球よし、未来よし。この「六方よし」こそ、SDGs時代に求められる経営であり、これからの企業は「六方よし」の経営を実践すべきだと本書の著者の藻谷ゆかり氏は述べています。

今や企業はすべての「作り手よし」を考慮し、「地球よし」という空間の広がりと、「未来よし」という時間軸も加えた「六方よし経営」をすることが必要とされているのである。(藻谷ゆかり)

特に若い世代が積極的にこの六方よし経営を取り入れています。彼らは越境学習によって、今までとは異なる新しい視座を得ています。

六方よしを実践する経営者は、越境学習→価値の発見→フェアトレードor地産地消に気づき、自らの経営を変えていくと藻谷氏は指摘します。コンフォートゾーンを飛び出し、越境学習を重ねること、常に自分をアップデートすることで、社会に価値を提供できるようになるのです。

越境学習で自社の強みを生み出したブーランジェリー・ドリアン

広島県広島市ブーランジェリー・ドリアンの店主の田村陽至氏は、大量生産・大量廃棄というパン屋経営に疑問を持ちます。「店を1年間休業して、欧州各地のパン屋で修業する」という越境学習によって、欧州のパン屋が実践している手法を日本で実践することにしました。

田村氏は、オーストリア・ウィーンにあるパン屋、「グラッガー」で越境学習を行います。グラッガーのパン職人は朝8時から働き始め、正午過ぎには仕事を終えて帰ってしまいます。彼らの労働時間が短いことに、田村氏は衝撃を受けます。

パンづくりの姿勢も異なりました。パンの種類はそう多くはありませんが、最高級の小麦粉を使い、天然酵母で醸して薪窯で焼くというシンプルな製造方法でつくられたグラッガーのパンはとてもおいしく、パンが持つ力を実感しました。

欧州から帰国後、田村氏はパンの製造方法と販売体制を変えていきます。田村氏1人が作り手となり、午前4時から正午までパンを焼き、奥さんが正午から午後6時までパンを販売することにしました。パンの種類は、定番のカンパーニュとブロンに絞り他に季節によって2種類の合計4種類にしました。

焼き方は欧州の伝統的なパンの製法で、材料は有機栽培の国産小麦粉と塩と水のみ、酵母菌と乳酸菌が入ったルヴァン種で発酵させ、薪窯で焼くことにしました。こうして焼いたパンは、乳酸菌が働いてしっかり発酵しているので、防腐剤を入れなくても2週間持ちます。

有機栽培の国産小麦粉を使った無添加のおいしいパンは、お客も喜ぶパンになり、価格が通常よりも高いにもかかわらず、地元で人気になりました。もしパンが売れ残った場合には、翌日に2割引にして売り切るので、パンを捨てることはなくなったのです。結果、「売り手よし、買い手よし、作り手よし、地球よし」のパン屋経営が実現しました。

2018年に手作りで奥行き4mの石窯を新たに作りました。新しい石窯では、以前の窯の3倍の約100個のパンを一度に焼くことができるようになりました。田村氏は水曜日から金曜日にパンを仕込み、木曜日から土曜日の3日間にまとめてパンを焼くことで、週休3日を実現しました。

現在コロナ禍の中、パンの種類を4種類に限定し、定期購入を中心としたインターネット通販だけにし、黒字を実現しています。 田村氏はパン屋の労働環境を改善し、パンの廃棄を減らすために、自らのパン経営のノウハウを全国に広めています。これが、未来よしにつながり、日本全国の個人経営のパン屋の未来を明るくします。田村氏の「非常識な」パン屋の経営メソッドが、「六方よし経営」として全国に広がっていくことで、つらいと言われるパン屋の成り手が増えるかもしれません。

広島で前掛けを売る有限会社エニシングは人と人のご縁をつなげることで、ビジネスを成長させています。代表の西村氏の情報発信と行動力が、前掛けをグローバル商品に変えていったご縁の紡ぎ方を多くの経営者は真似すべきです。

本書には、この2社以外にも六方よし経営で成功している経営者のストーリーがいくつも紹介されています。彼らはさまざまな体験を積んだり、顧客や従業員の声を聞くことで、自社のパーパスを見つけます。世の中をよくしたいという強い思いが、彼らの思考と行動を変えていったのです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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