健康が経済に良い影響を及ぼす?

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マッキンゼー ネクスト・ノーマル―アフターコロナの勝者の条件
小松原正浩,住川武人,山科拓也
東洋経済新報社

本書の要約

政府や企業も、新型コロナからの回復プランの中に、人々の「富と健康」(Wealth and Health)の双方をより意識するようになっています。健康な人を増やすことで、健康寿命を長悪でき、医療費や介護費用の削ができるだけでなく、労働力不足も解消でき、経済にも良い影響を及ぼします。

新型コロナが明らかにした健康の重要性

今回の新型コロナによるパンデミックは、改めて健康が経済活動へ与える影響を浮き彫りにした。また、大規模なロックダウン(都市封鎖)、それに伴う経済活動の低下、失業率の上昇、労働人口の低下などが、大きな禍根をもたらした。(小松原正浩,住川武人,山科拓也)

今回の新型コロナ・ウイルスは健康の重要性を明らかにしました。特に、高齢者および基礎疾患(慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患、糖尿病、高血圧、心血管疾患、BMI30以上の肥満)のある患者は、重症化するリスクが高くなり、東京都が発表した2020年11月〜12月7日の死亡者62人のうち、9割近くにあたる54人に基礎疾患があったのです。

新型コロナの感染拡大は、個々人の健康を促進し、経済活動の停滞を減少させることがいかに重要かを各国のリーダー、企業、個人に考えさせられる機会となりました。

ただ、こうした経済への影響は今回のコロナ・パンデミックに限ったことではありません。健康被害により、GDP(国内総生産)は本来のあるべき額から、毎年15%程度の減少をしていると言います。毎年、世界では1700万人が健康問題によって寿命よりも早く亡くなっており、毎年800万人が本来避けられた、もしくは治療が可能であった感染症で亡くなっています。

また、10億人が何かしらの精神疾患を抱えています。こうした健康被害は、将来の労働力の担い手を減少させ、また労働力の効率性を低下させています。健康度を上げることで労働力の確保、生産性の向上を促進し、経済成長を促すことも可能になるのです。

国や企業が健康問題に適切に対処しない場合、経済成長が鈍化します。IHMEによれば、健康被害により一人当たり平均で年間43日間は生産性を失っています。また、毎年1700万人が心血管疾患と癌を主な理由に亡くなっており、これが将来の労働力に悪影響を及ぼしています。

米国では労働者のうち6%が、鬱によって週のうち4時間は実際に生産性を発揮できていないことがわかっています。このような原因を取り除き、人々の健康を向上させることで、経済成長を大きく促すことが可能になります。

健康が経済に良い影響を及ぼす?

健康は労働力の絶対数と、その生産性の双方に大きな影響を持ち、経済に対する影響度は非常に大きい。過去50年間、衛生環境の改善、抗生物質の発見、ワクチンの接種の普及により、世界の健康度は飛躍的に向上した。近年の医療におけるイノベーションは癌、心臓病などの生存率に大きく貢献し、世界中で人々の平均寿命、労働の生産性を大きく上げてきた。

平均寿命は1800年から2017年の30年間で2.5倍にも飛躍しています。こうした寿命の長さは、一人当たりGDPの高さと深い相関関係にあります。平均寿命が延びれば延びるほど、一人当たりのGDPは高くなる傾向にあり、また、その逆も成り立ちます。一人当たりのGDPが高い国は、より積極的に食事の質の向上へ投資し、より高い衛生環境の整備を行い、正のスパイラルを生み出しているからです。

過去50年間で先進国の労働人口は年平均1.8%で成長してきましたが、今後50年ではそれが0.3%まで落ちると予測されています。米国では約14%の従業員が、健康を理由に定年退職前に労働市場からリタイヤしています。ドイツ、日本では2040年までに70歳以上の人口がそれぞれ22%、27%と高齢化します。中国、韓国でもその数字は19%、25%と深刻なものになっています。

健康促進のための施策はその投資額に対してリターンが大きいことがわかります。健康促進施策に対する投資は、GDPにおいてその2~4倍の恩恵を受けます。1ドルの投資で約2~4ドルのリターンをもたらすことがわかっているのです。

特に高齢化が進む日本においては、70歳が現在の60歳並みの健康を得ることにより、その労働市場への再参入の効果は非常に高く習います。また、介護のためにリタイヤしていた層の再参入も効果が非常に高くなります。

健康は経済成長を促すテーマとして取り組むべきであり、厚生労働省にとどまらず他の省庁でも健康をテーマに取り上げ、それに基づいた雇用政策、規制、インフラ政策などの手を打っていく必要がある。また、健康促進による効果を享受するには、雇用に関する政策や規制が非常に重要となる。特に、障害を持った人々の雇用や高齢者の雇用である。

健康を経済成長を促すテーマとして捉えることで、世の中をよりよくできます。今回のコロナ・パンデミックが政治家や経営者や個々人に健康の重要性を気づかせました。

人々はより健康を意識し、今までの習慣とは異なる行動、例えば手洗いの徹底やマスクの着用、アルコール消毒の徹底、リモートワーキングの加速など大きな行動変革を行うようになりました。

政府や企業も、新型コロナからの回復プランの中に、人々の「富と健康」(Wealth and Health)の双方をより意識するようになっています。健康な人を増やすことで、健康寿命を長悪でき、医療費や介護費用の削減ができるだけでなく、労働力不足も解消でき、経済にも良い影響を及ぼします。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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