PLG プロダクト・レッド・グロース「セールスがプロダクトを売る時代」から「プロダクトでプロダクトを売る時代」へ( ウェス・ブッシュ)の書評


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PLG プロダクト・レッド・グロース「セールスがプロダクトを売る時代」から「プロダクトでプロダクトを売る時代」へ
ウェス・ブッシュ
ディスカヴァー・トゥエンティワン

本書の要約

商品の購入を決める際、企業にとって事前にそれを試すことが、当たり前のプロセスになってきました。プロダクトをいち早くエンドユーザーに届け、その価値をできるだけ早く感じてもらうPLG戦略を採用することで、事業を一気に成長できるようになります。

新しい成長戦略のPLGとは何か?

PLGとは、米ベンチャーキャピタルのオープンビューが名付けたGTM(ゴー・トゥ・マーケット)戦略の1つで、ユーザー獲得、アクティベーション、リテンションを、プロダクトそのものが担うという手法だ。(ウェス・ブッシュ)

商品の購入を決める際、企業にとって事前にそれを試すことは、とって当たり前のプロセスになってきました。本書が提案するPLG(プロダクト・レッド・グロース/製品主導型成長戦略)を採用することで、企業の成長は加速します。

消費者トレンドが変わる中、ソフトウェアビジネスにおいても。プロダクトをいち早くエンドユーザーに届け、その価値をできるだけ早く感じてもらうことが重要になってきました。PLGは「プロダクトでプロダクトを売る状態」を目指す戦略なのです。

サブスクリプションサービスやアプリなど、試したい時にすぐに試せる環境に、ユーザーは慣れ親しんでいます。
「いかに早く、プロダクトの価値を感じることができるか?」当たり前になる中、セールスがプロダクトからプロダクトでプロダクトを売る時代へと一気にパラダイムシフトが起きています。

今後、SaaS市場が進化するにつれ、企業はセールス主導型力ンパニーとプロダクト主導型力ンパ一ニーの2つのタイプに分かれていきます。
1、セールス主導型力ンパニー
売る商品は複雑で、必ずしも必要とは限らず、高価な商品になります。購入してもらえるかどうかは、消費者をいかに説得できるかにかかっています。このタイプに当てはまる企業は、消費者を独自のセールスサイクルに乗せようとする。

2、プロダクト主導型力ンパ一ニー
プロダクト主導型力ンパニーはこの旧来の営業モデルを逆にしたものです。見込み顧客を長く決まったセールスサイクルに乗せようとするのではなく、かわりにプロダクトを自分で試せる「鍵」を与えます。購入してもらう前に、プロダクトを試せる権限を与えることで、セールス活動にそれほど力を注がずにすみます。

PLGはSaasビジネスを成長させるまったく新しい戦略です。Klipfolio(クリップフォリオ)創業者兼CEOのアラン・ホワイト、PLGを次のように説明しています。

PLGを取り入れるということは、事業に関わるすべてのチームがプロダクトに影響を与えるということだ。 マーケティングチームは、どうすればこのプロダクトの需要を伸ばせるかを問う。セールスチームは、このプロダクトをどう使えば見込み顧客に買ってもらえるかを問う。カスタマーサクセスチームは、どんなプロダクトならユーザーに今以上に活用してもらえるかを問う。各チームがプロダクトにフォーカスした活動をすることで、カスタマーエクスペリエンスの強化を中心とした企業文化が形成されるようになる。( アラン・ホワイト)

プロダクトを中心に組織全体をリードすることで、より短いセールスサイクル、より低い顧客獲得コスト(CAC)、そしてより高い従業員1人あたり売上(RPE)を実現できるようになります。

PLG導入のメリット

市場の状況と消費者行動は変化していました──ソフトウェアも、購入する前に試してみて、プロダクトの価値を体験できることを期待する消費者が急激に増えていたのです。長期に渡って成功し続けるためには、このトレンドに適応するよう選択を迫られていました。さもなければ、〝見込み顧客を奪われる〟リスクがあったのです。(キーラン・フラナガン)

新しいユーザーをプロダクトの購入まで導く役割は、プロダクトが担ったほうがよいとハブスポットのマーケティングVPのキーラン・フラナガンは指摘します。PLGによって、成功するためには、プロダクト開発、カスタマーサクセス、セールス、マーケティングなど全てのやり方を考え直す必要があります。プロダクト主導の企業の各チームの役割は、以下のように変わります。

■セールスチーム
見込み顧客に合ったプロダクトを売るために、プロダクトをどう活用できるか?を考えます。自社のプロダクトの価値を既に理解している顧客に確認しましょう。

■マーケティングチーム
リード獲得でナンバー・ワンになるために、プロダクトを全面にコミュニケーションをデザインします。

■カスタマーサクセスチーム
カスタマーサクセスのサポートなしでも、顧客の成功を支援できるプロダクトをつくることを考えます。

■開発チーム
顧客がより早く価値を実感できるようにプロダクトを開発します。

プロダクト主導のビジネスによって、企業は優位な成長エンジンと、格段に低いCACへのアクセスという競争優位性を確保できるようになります。

●優位な成長エンジン
プロダクト主導型ビジネスは、次の2つの強力な方法で、競合他社よりも早くビジネスをスケールさせることができます。
1、広いトップ・オブ・ファネル
フリートトライアルとフリーミアムモデルは、カスタマージャーニーの早いタイミングからユーザーを取り込むことができます。競合他社がデモ申し込みフォームに必要事項を記入させている間に、見込み顧客は、あなたのプロダクトをさっさと検証できます。

2、迅速なグローバル展開
競合他社が、各リージョンの営業担当者の採用活動で忙しくしている間に、あなたの会社ではオンボーディング体験の改善に注力し、わずかな時間で世界中の顧客にサービスを届けることができます。

●格段に低いCAC
1、短いセールスサイクル
見込み顧客自らオンボーディングできることで、ユーザーがそのプロダクトに価値を感じるまでの時間(タイム・トゥ・バリュー)とセールスサイクルを大幅に短縮できます。ユーザーがプロダクトの価値をひとたび体験したら、次にとるアクションはプランのアップグレードになります。プロダクトからメリットを得られるのが早ければ早いほど、無料ユーザーから有料ユーザーへと切り替わるまでの期間も短くなります。

2、高い従業員1人あたりの売上(RPE)
プロダクト主導型アプローチなら、より少ない人員で売上を作れます。導入サポートコストが低いということは、顧客あたりの利益率も高くなるということです。

3、より良いユーザーエクスペリエンス
ユーザー自らオンボーディングできるようプロダクトが設計されているため、導入サポートなしで、ユーザーはプロダクトの価値を体験できます。 オープンビューによると、プロダクト主導型企業の企業価値は、上場市場のSaaSインデックス・ファンドよりも30%以上高く評価されています。

以下の「MOATフレームワーク」を使うと自社のビジネスがPLGに向いているかどうかを判断できます。
M:マーケット戦略(Market Strategy) 
気軽に製品を試せるかどうか?

O:オーシャン状況 (Ocean Conditions) 
■ブルーオーシャン プロダクトがブルー・オーシャンにあって、ユーザーがプロダクトの価値を体験するのに時間がかからない場合は、PLGモデルを取り入れるべきです。一方、プロダクトが複雑なものなら、まずはセールス主導型のGTM戦略で、ユーザーを啓蒙しながらニーズを生み出していくべきです。

■レッド・オーシャンでは、見込み顧客はプロダクトの活用方法・価値を理解しているためPLGモデルが優位性を発揮します。PLGモデルが、ファネルを広げ、CACを引き下げ、スピード感のあるグローバル展開を可能にしてくれます。

A:オーディエンス(Audience) 
現場に導入権限があれば、スムーズにトライアルができ、短期間で購入してくれます。

T:タイム トゥ バリュー(Time To Value) 
いち早くプロダクトの価値を提供できれば、導入が加速します。余計な手間を減らして、スムーズに商品を体験してもらいましょう。

プロダクト主導型のビジネスを構築するためには、UCDのフレームワークを採用することが効果的です。
U:(Understood)プロダクトの価値を理解する
C:(Communicate)その価値を伝える
D:(Deliver)約束した価値を提供する

Zoomやセールスフォースが成功した理由もこのMOATやUDCのフレームワークで説明可能です。PLGによって、自社が勝ち組になれるかどうかをまずはこのフレームワークを使って、検討しましょう。時代が変化する中、プロダクトの価値を伝え、それを実感してもらうことが重要になってきました。PLGが今後の企業の勝敗を左右しそうです。

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