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5000日後の世界 すべてがAIと接続された「ミラーワールド」が訪れる
ケヴィン・ケリー
PHP研究所
本書の要約
「これからの5000日」は、AIがテクノロジーの中心になり、オートメーション化や産業革命に匹敵する大きなトレンドになります。「ユビキタス・コンピューティング」が当たり前になり、私たちはコンピューターと共に生きるようになり、ARやVRが創り出す世界に没入します。
未来を変える技術「ミラーワールド」とは何か?
これからの5000日は、いままでの5000日よりもっと大きな変化が起こる。(ケヴィン・ケリー)
『WIRED』の創刊編集長を務めたケヴィン・ケリーは、ビジョナリーとして有名ですが、彼はどのように未来を予測するのでしょうか?
彼は過去の歴史を学び、テクノロジーとの対話を重ね、楽観的に考えることで、未来を予測できるようになると述べています。
この30年で世の中は激変しました。インターネットが商用化されてから5000日後(約13年後)にソーシャルメディア(SNS)が勃興を始めました。そして現在は、SNSの始まりからさらに5000日が経過し、いまやインターネットやSNSは、われわれの暮らしに欠かせないものとなっています。
「これからの5000日」は、AIがテクノロジーの中心になり、オートメーション化や産業革命に匹敵する大きなトレンドになるとケヴィンは言います。「ユビキタス・コンピューティング」が当たり前になり、私たちはコンピューターと共に生きるようになり、ARやVRが創り出す世界に没入します。
ARによって、私たちの働き方も変わり、100万人単位のプロジエクトで同時に一緒に働くことも可能になります。ARの機能がついたスマートグラスを装着して、離れたところにいる人同士がテレプレゼンス状態(遠隔地にいる人とその場で対面しているような状態)で、デザインやサイズなどを共有しながら、共同作業を行なうことが可能になります。
すでに、マイクロソフト「HoloLens(ホロレンズ)」を装着し、倉庫や工場で作業やトレーニングを受けることが可能になっています。
また、リアルタイム自動翻訳の大幅な進化によって、英語を話せずに除外されていた人たちが意義ある形でプロジェクトや仕事に参加できるようになります。 スマートグラスと自動翻訳機が普及することで、多くの人が参加し、リモートで共同作業ができるようになります。世界中の優秀な人が場所や言語を気にせず、働けるようになるのです。
ミラーワールドというテクノロジーが、今後の世の中を変えていく技術になります。ミラーワールドでは、現実の世界の上にバーチャルな世界が覆いかぶさることになります。
人々は現実世界ではそれぞれの住んでいる地域にいますが、同時に、他の場所にいる人と地球サイズのバーチャルな世界を一緒に紡ぐのです。ミラーワールドの最も基本的な説明は、「現実世界の上に重なった、その場所に関する情報のレイヤーを通して世界を見る方法」というものです。VR(仮想現実)は外界が見えないゴーグルの中でのバーチャルな世界ですが、ARは、スマートグラスなどを通して現実世界を見ます。すると現実の風景に重なる形で、バーチャルの映像や文字が出現します。
例えば、スマートグラスをつけて、と古い家が建っている場所を訪れたとします。スマートグラスを通してその古い家を見ると、そこがかつてどんな様子だったのかがわかるイメージ画像が、仮想的に重なって見えるようになります。
また、スマートグラスをつけながら歩くと、ある場所で、目の前にどちらに行けばいいかを示す青い矢印などが出てきたり、キャラクターが出てきて、街をガイドしてくれるようになります。私も取材先でこのミラーワールドを体験したことがありますが、この技術によって、私たちの生活は確実に便利になります。
テクノロジーの進化を楽観視しよう!
ミラーワールドの世界では、歴史は「動詞化」します。
例えば、空間に手をかざしてさっと振るようにスワイプするだけで、時間をさかのぼってその場所に以前にあったものを呼び出せるようになります。東京の街を歩いている際に、スマートグラスに搭載されたAIに「ここは100年前にどんな感じだったか」と尋ねるだけで、100年、200年前の東京の街角の姿を選んで重ねて見ることができるようになるのです。
スマートグラスを身につけ、バーチャルな友人や会社の同僚を映し出して、彼らと「会う」ことも可能になります。近い将来、現実の世界にある道路や部屋、建物などすべてのもののデジタルツインがミラーワールドに出現するようになることで、移動を伴わずに世界中の人たちと仕事ができるようになるのです。
第一のプラットフォームであるインターネットは、世界中の情報をデジタル化し、検索可能にして答えを出せるようにしました。それこそが、われわれがいまも使っているウェブというものです。その次の世代の大きなプラットフォームは、人間の行動や関係性を捉えて、人間同士の関係 をデジタル化するというものでした。それは「ソーシャルグラフ」と呼ばれ、機械が人間関係リーダブルを認識できるようにしたもので、人間関係や行動に対してAIやアルゴリズムを適用できるようになりました。第二の大きなプラットフォーム(ソーシャルメディア、SNS)の出現です。そして、それに続く第三の大きなプラットフォームが、物理的な全世界をデジタル化したもの(ミラーワールド)です。現実の世界や関係性を検索し、それを利用して新しいものを生み出せるよう、AIやアルゴリズムを適用するものです。
著者は、IBM、マイクロソフト、グーグル、フェイスブックがARの世界のリーダーを目指していますが、別のベンチャーがその地位につくと指摘します。GAFAMは自分の成功に囚われてしまっていて、ARの世界ではイノベーションを起こせないと言うのです。新たなリーダーは、いままで聞いたこともない、ソーシャルメディアの外にいる小さな会社だとケヴィンは考えています。
ARやVRによる共同作業が進むことで、やがて今の会社とは異なる組織が現れたり、フリーランスが増加していくはずです。テクノロジーが進化することで、リモートで共同作業する人も増え、働く人の選択肢も広がっていきます。
私が楽観的なのは歴史を学んだからです。ここ200年ほどの歴史の進歩を振り返ってみると、進歩は段階的に起き、毎年の変化はわずかで、長寿化、安全性の向上、暴力の低減などがちょっとずつ進んでいます。過去200年の歴史における改善や進歩は、毎年ほんの少しずつの増加の積み重ねで生じたものなのです。
平均的に見て毎年1%ほどのほんのわずかな増加、つまり良い方向への進歩が過去200年間続いています。テクノロジーのこうした1%の進歩がずっと続いていけば、未来を明るくできるのです。
著者はユートピアとプログレスを掛け合わせた「プロトピア」という造語を紹介しています。「テクノロジーに耳を傾ければ未来がわかる」と著者は述べていますが、1%づつの進化を信じることで、未来を楽観視できます。テクノロジーがもたらす「ほんの少しのよい傾向」を見つけられれば、未来をユートピアに変えられるのです。
実際、iPhoneやソーシャルメディアがもたらしたこの数十年の変化で、私の幸福度は確実にアップしています。今後もテクノロジーの進化を楽しもうと思います。未来を悲観せずに、楽観的に捉えてよいことを本書から学べました。
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