バイナリー・バイアスに対処する方法。

person sitting in a chair in front of a man

THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す
アダム・グラント
三笠書房

本書の要約

仮説・実験・結果・検証するというサイクルで思考することで、知っていることを疑い、知らないことを深掘りできるようになります。バイナリー・バイアスに陥らずに新たな知性を獲得し、成長し続けるためには、科学者的思考法を身につける必要があるのです。

バイナリー・バイアスとは何か?

私たちの信念は、私たちの動機によって形成されており、それが望ましさバイアスを生むことがある。アダム・グラント

アダム・グラントTHINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放すの書評を続けます。私たちは強い信念を持つことで、バイアスが生まれ、他者とのコミュニケーションに問題を起こすことがあります。自分が信じたいことを信じるうちに、他者の相反する意見を取り入れられなくなるのです。好きか嫌いかの二元論に陥ると相手との対立が深まります。

「バイナリー・バイアス」(二元バイアス)をご存知でしょうか?バイナリー・バイアスとは、複雑に連関した事象を2つのカテゴリーに分けることで単純化し、明確性、認知的閉鎖(問題に対して確固たる答えを求め、曖昧さを嫌う欲求)を手に入れようとする人間の基本的な傾向になります。

人は黒か白かという決断を迫るかのように2手に分かれ、相手を攻撃しがちですが、これへの対処法は、物事を「複雑化」することです。何かのテーマについて検討する際には、二元論を避け、多種多様な観点を提示すると正しい答えが見つかるようになります。

人は、強い関心を集める論争点について、黒か白かの両極端の議論をしている時に、話し合いは進歩していると思い込みがちだ。しかし実際のところ、人はさまざまなプリズムを通してそうした論題を検討する時に、もう少し再考してみようという気になるものだ。

人は多くの見解から学ぶことによって、自分の内の多面性に気づけるようになります。物事をほんの少し複雑化することで、過信サイクルを破壊し、再考サイクルを稼動させることができるようになります。

結果、人はより謙虚になって自分の知識の浅さを認め、自身の主張を疑問視し、好奇心のアンテナを張って新しい情報を集めるようになります。

再考を促し、正しい答えを得る方法とは?

建設的な討論を行ない、理に適った解決法を見出すカギは、単純化や分極化する傾向を抑えることである。

討論において、単純化や分極化を回避すれば、正しい解決法が見つかるようになります。ソーシャルメディアにおいても二元論を避けることで、前向きなツイートや投稿ができるようになり、相手との関係を改善できるようになるにです。

バイナリー・バイアスを克服するためのはじめのステップは、その問題についての考え方の幅を知ることです。アメリカ人が温暖化の議論を二元論で片付けようとしましすが、世論調査によれば、温暖化問題では少なくとも6通りの考え方があります。
・「危機感」を抱く人
・「心配する」程度の人
・「決めかねている」
・「無関心」
・「懐疑的」
・「信じない」

議論をする際、「懐疑的な人」と「信じない人」をはっきり区別することが大事だと著者は指摘します。懐疑的な人は、健全な科学的スタンスを取ります。彼らは見たこと、聞いたこと、読んだことすべてを信じるわけではないく、批判的な問いを投げかけ、新しい情報に応じて見解を改めています。

その一方で、信じない人は拒否軍の思考モードにとらわれています。自分の味方以外から来る情報を、彼らはいっさい信じません。事実を無視したり、あるいは自分たちにとって都合のいい結論になるように事実を曲げてしまうのです。

懐疑的な態度とは「科学的思考の本質、基盤」であり、事実の否定は「客観的な観点を持たない、機械的な拒否反応」になります。

マスメディアの報道姿勢にも問題があります。気候変動に関して人々の考え方の範囲や幅が複雑であることについては、たいてい報道では取り上げられません。地球温暖化を否定するのはアメリカ国民のせいぜい1割ですが、マスコミに最も多く取り上げられているのは、実のところ、この1割の人たちであることがわかっています。

2000年から2016年にかけての温暖化に関する数十万件もの報道記事を分析したところ、報道される頻度に大きな偏りがあったのです。地球温暖化の著名な否定論者たちは、科学者よりも49パーセント頻繁に報道機関に取り上げられていたと言います。

結果、人々は否定的な見解が大多数であるかのように誤認し、環境保護のための政策を支持することにいっそう消極的になったのです。スペクトラムの中間あたりの意見にスポットライトが当たらない場合に、大多数の人たちの行動する意欲は失せてしまいます。

実際にどれほど多くの人が環境破壊を問題視しているかを正しく知るようになれば、人々は行動を起こそうとより積極的になるはずです。

情報を読み、耳にし、目にする時、複雑性こそが、その情報が信頼するに足るものであるかどうかを判断する一つのあらわれであると気づくはずだ。そして、コンテンツや情報源が、単眼的ではなく、多彩な論点から紹介されているとわかれば、それらを信頼に足るものとして好意的に受け取ることもできるだろう。問題を単純化している見出しに出くわしたら、両極端の意見の間に他の見方があるのではないかと疑えば、バイナリー・バイアスに陥ることもなくなるだろう。

複雑な意見の交換は、建設的な対話を生みます。

二元論に陥った時には、問題が複雑になることを嫌がらず、そこにチャンスがあると考えてみましょう。仮説・実験・結果・検証するというサイクルで思考すること、科学者のように振る舞うことで、知っていることを疑い、知らないことを深掘りできるようになります。バイナリー・バイアスを避けることで、新たな知性を獲得し、成長を続けられます。そのためには、科学者的思考法を身につける必要があるのです。


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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