永守流 経営とお金の原則(永守重信)の書評

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永守流 経営とお金の原則

永守重信
日経BP

本書の要約

企業を成長させるためには、お金まわりの戦略、財務戦略が不可欠だと日本電産の創業者の永守氏は指摘します。他にはない技術や高い志、それを実現するためのハードワークはもちろん必要ですが、会社を潰さないという覚悟のもと、経営者はリスクに備えた資金調達を自ら行うべきです。

会社を絶対に潰さないための財務戦略を身につけよう!

創業まもないベンチャー企業は日々、生き残るか、つぶれるかの瀬戸際での戦いを迫られる。その中で実際に成長し、飛躍できるのはごくわずかである。生き残って成長の花を咲かせるにはどうすればよいか。他にはない技術や高い志、それを実現するためのハードワークなどが必要なのはもちろんだが、何よりお金まわりの戦略、財務の戦略が不可欠である、と私は考えている。(永守重信)

日本電産の代表取締役会長の永守重信氏は、創業時にお金で痛い目に逢いながら、独自の財務戦略をつくってきました。永守流の財務戦略は、スタートアップやベンチャーの現代の経営者にも活用できます。

企業経営にはリスクがつきもので、大胆な人間が経営者に適しているというわけではないと永守氏は指摘します。経営者に必要なのはむしろ「繊細さ」や「緻密さ」だと言うのです。ベンチャー経営者にとっての重要な資質の第一は「大胆にして繊細であれ」だと述べています。

その上で、会社を絶対に潰さないと決め、経営者はそのためにはなんでもする覚悟が必要です。時に経営者は泥を被らねばなりません。金を借りなければ、会社が潰れそうな場合には、銀行との交渉にも気合を入れ、死ぬ気でやる必要があります。

会社が軌道に乗るまで、経営者は資金調達で苦労するものです。創業時は銀行融資も受けにくく、何度も門前払いを受け、プライドはズタズタになります。借りにくいところからお金を借りるためには、きちんと相手を説得する材料が不可欠です。事業計画で金融機関を説得できる経営者が、ベンチャー企業を飛躍させるのです。

会社はまず伸ばそうと考える以前に、絶対につぶしてはならないと考えるべきである。そのために経営者は絶えずワーストケースを想定し、それに備えることだ。これが創業して最初の5年間の財務戦略の基本である。利息が損だとか得だとかは成長してから考えればよい。ムダと思っても流動性の高い資金を常に用意しておく。こうした基本を徹底しておこう。

絶えず、最悪の事態を念頭におき、資金繰りで先手を打つことが経営者の役割になります。

経理・財務のスタッフはもちろん、エンジニアにも数字的センスを植え付けることで、経営的な感覚を持った社員が増えていきます。コスト意識、原価意識を鍛え、常に数字で考え、数字で語れるような社員を増やすことで、組織が強なります。経営者は絶対に会社を潰さないというベンチャー企業の財務戦略の基本を身につけた社員を増やすべきです。社員全員が利益とキャッシュの重要性を認識してれば、会社の赤字や倒産は避けられます。

M&AではPMIが重要な理由

我が社はこれまで60社以上の企業をM&Aで傘下に収めてきたが、とりわけ国内の場合、その多くは経営が悪化した赤字企業だった。こうした企業に共通しているのがコスト意識の低さである。

日本電産のM&Aの勝率は高く、67勝0敗と言う驚異的な数字を弾き出しています。難しいとされるM&Aで、失敗はゼロで、全て成功させているのです。買ったすべての案件で、日本電産グループの企業価値の向上につなげたのです。

著者の永守氏は「M&A成功の3条件」をあげています。
①価格
絶対に高い価格で買ってはいけない。

②会社のポリシー
自社のポリシーに合わない会社を買ってもうまくいかない。

③シナジー
技術や顧客網などが相乗効果を示して収益を高められるかどうか?

この3つの条件がそろわないとM&Aでの成功は難しく、逆に永守氏はこの3つの条件が揃わなければ、会社を買わなかったのです。企業文化があい、シナジーが生まれると考えられれば、時間をかけて会社を口説くこともあったと言います。

M&Aにおいて、とりわけ重要なのは買収後の統合作業、つまりPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)になります。統合効果を最大限にするために、経営トップには全力で取り組む覚悟が求められます。相手先の経営陣と社員の意識改革を行うことで、買った会社は必ず結果を出すと言うのです。

「赤字は罪悪である」との意識を植え付け、日本電産流の「3Q6S」を徹底することで、赤字会社が短期間で黒字化します。
3Q・・・「良い社員」「良い会社」「良い製品」
6S・・・「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「作法」「しつけ」

6Sによって工具や物品がきちんと整理されると、ムダな作業がなくなります。社員が6Sを常に意識することで、作業が効率化されコスト削減につながり、社員の士気も高まり、おのずと収益も上がっていきます。

「事務所や工場の整理整頓」と「出勤率のアップ」が徹底できれば、効果はすぐに出てきます。その上で、経費を減らしたり、購買力を強化したり、営業担当者の訪問回数を増やしたりして、基本的な改革を進めていきます。

当たり前のことを当たり前にやれば利益が出る。しかしそこへ向けて経営陣や社員の意識改革をするためには、当たり前ではない努力が必要だ。だからM&Aを実施したらPMIに心血を注ぐ覚悟が欠かせない。買収先の企業を再建する力がないと、下手をすれば共倒れになる。それだけM&Aはリスクが高いものなのである。

PMIをスムーズに進めるためには、「ポリシーが同じ会社」「シナジーが得やすい会社」を選ぶことも重要です。 買収先の企業の経営陣、社員への敬意を持つこと、自社のパーパスを伝えることで、経営改善が行われ、赤字を脱却できるのです。

永守氏は経営陣の入れ替えはせず、人員の整理にも手をつけません。各社の個性と独立意識を大事にし、会社のブランドを残すことで、プライドを持って働いてくれるようになります。「3Q6S」を徹底し、ダメな部分を改善すること、相手を尊重することで、企業は短期間で再生します。


 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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