THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す
アダム・グラント
三笠書房
本書の要約
変化が激しい時代には、知識や体験がすぐに古くなり、学び続けることが求められています。再考が最も頻繁に行なわれるのは、学ぼうとする文化、つまり成長こそがコア・バリューだと考える環境を作ることです。再考サイクルが回る学びの文化を持つ組織では、イノベーションがより多く生まれ、失敗を減らせます。
アクティブ・ラーニングが効果がある理由
正しい答えを見つけることよりも、むしろそれらの問題について多角的な視点で考え、建設的に論じるスキルを身につけることだ。(アダム・グラント)
現在のような複雑な社会では、日々新しい問題が起こります。その問題をしっかりと定義し、その問題点の真因を見つける必要があります。その際、私たちは多角的な視点が求められています。ペンシルベニア大学ウォートン校教授のアダム・グラントは、再考すること、周囲の人からより多くのことを学ぶことで、後悔のない人生を歩めるようになると述べています。
自分の仮説を検証するためには、情報やデータを集め、そこから分析すべきです。疑問視する機会を与えることで、再考する能力を養えるようになります。
授業態度においても学びの質が変わることが明らかになっています。講義形式の授業とアクティブ・ラーニングの授業をメタ分析したところ、生徒の学習内容の習熟度がより上がるのは、アクティブ・ラーニングであることがわかりました。STEM(科学、技術、工学、数学の分野)を専攻する 4万6千人以上を対象にした225の研究を比較した結果、通常の講義を受けた学生は平均して、アクティブ・ラーニングを行なった学生よりも、ハーフ・レター・グレード分(ABCDF評価で半評点分。AとAマイナス の差など)成績が低かったと言います。
通常の講義を受けた学生は、落第点を取る確率が1.55倍高かったそうです。講義コースで落第した学生がアクティブ・ラーニングを受講していたならば、およそ355万ドルの授業費が節約できたと言います。多くの講義は、対話や反論を促すようには設計されていません。講義では、学生は受動的な情報の受信者になりますが、それだけでは能動的・積極的な思考者にはなれないのです。
再考サイクルがイノベーションを起こす理由
完璧主義者は、学校の試験では同級生よりも高得点を上げることが多いのですが、彼らが実際に社会に出て仕事を始めると、パフォーマンスは同僚よりも優れているとは限りません。学校の成績はキャリアの成功を予測する判断材料にならないのです。
学校で優秀な成績を収めるには、古い思考方法をマスターする必要があります。一方、すばらしいキャリアを築くには、常に新しい考え方をすることが不可欠になります。
偉業を成し遂げた建築家たちを調査したところ、最も独創的な建築家は平均してB評価の成績で学校を卒業していました。逆に、全教科でAを取った建築家たちの多くが、正しさにこだわり、保守的な考えや慣行を維持しました。
大学を首席で卒業した学生を対象とした調査によると。「卒業生総代が将来、先見の明がある人物になる可能性は低い」と教育学研究者のカレン・アーノルドは指摘します。彼らは既成システムの一部になり、それを改革しないのです。
教師から得た知識があれば、その日の課題を解決できるかもしれない。だが、教師の思考法を理解すれば、人生の苦難を乗り切るための知恵が備わる。つまるところ、知識を頭の中に詰め込むだけが、教育ではない。教育というのは、私たちが生涯にわたり草案を何度も描き直す習慣を築くこと、そして生涯にわたり学び続ける能力を培うことなのだ。
再考が最も頻繁に行なわれるのは、学ぼうとする文化、つまり成長こそがコア・バリュー(中核となる価値観)だと考える環境を作ることです。再考サイクルを回すことが日常になっていれば、人は絶えず再考を行い、学び続けます。
学びの文化があるところでは、人々は自分が知らないことを探り、慣習を疑問視し、探究心を持って新しい手順を試してみようとします。研究によると、学びの文化を持つ組織では、イノベーションがより多く生まれ、失敗がより少ないことがわかっています。
再考することが当たり前の組織を作ることで、イノベーションを起せるようになり、持続的な成長をはかれます。
リーダーは再考サイクルを回すことを意識すべきです。
コメント