2025年日本経済再生戦略 国にも組織にも頼らない力が日本を救う
成毛眞, 冨山和彦
SBクリエイティブ
本書の要約
国全体の所得が減っている現状では、所得の再分配は「国家の老衰」につながります。そのためには、イノベーションを起こし、そこに投資を行い、産業構造を変換させるべきです。イノベーション主導型の政策によって、経済は成長し、結果、国民の所得も増加します。
昭和的経営が日本の成長を止めている?
国や組織に寄りかからず、個人として、したたかに自分の身を守りながら、自分なりに楽しく幸せな人生をつくっていくことはできる。「自分勝手」に生きることが、弱体化した日本企業を蘇らせ、日本経済、ひいては日本という国家自体を救う処方箋にもなるのだ。(成毛眞)
日本は構造的衰退的国家になっていると著者たちは指摘します。この30年間、日本の政治、行政、大企業は昭和のレガシーを引きずり、変化を先延ばししてきました。日本人は集団の意向(空気)に同調することで、時代の変化に適応できなくなっています。今こそ、私たちは昭和的な価値観を捨て去り、自らの価値を磨き、世の中に貢献すべきだと言うのです。
国家が企業に補助金をばら撒くことで、日本では多くのゾンビ企業が生き残り、産業構造の転換が起こらずにいます。日本の起業率や廃業率は、先進国の最低レベルを走り続けています。
付加価値をつくる能力がなければ、経済成長率が上がらない時代に日本では昭和型の経営が続き、イノベーションが生まれずらくなっています。破壊というプロセスを先送りすることで、経済が停滞し、結果国民の所得も伸びずにいます。
破壊なくして創造はない。新陳代謝なくしてイノベーションは実を結ばないのだ。イノベーション→創造的破壊→新陳代謝は循環系ともいうべきものである。新陳代謝という出口を塞げば、求められているイノベーション主導型の成長の循環は回らない。(冨山和彦)
GDPは「付加価値の総計」だと冨山氏は指摘しますが、付加価値をつくる能力がなければ、経済成長率も上がらないし、国民所得も増えないのです。付加価値創出がデジタル化とグローバル化による破壊的イノベーションによって生まれる時代に、大企業の昭和型経営者は追いついておらず、経済成長が数十年間止まっているのです。
イノベーションが成長の鍵!
今の日本の焦眉の課題は、人材の育成と投資喚起によってイノベーションが起こるような「社会的」土壌を整えることなのである。短期的な政策ではなく、まずは社会のありようを整えることが重要だ。分配によって所得を平らにならすのではなく、イノベーションを所得増につなげる。
冨山氏はイノベーションによって、所得増を実現すべきだと言います。
以下のサイクルでイノベーションを起こすことで、所得も増加します。
知(人材)のイノベーションカの向上→投資が起こる→ビジネスの付加価値生産性の向上→政策による労働分配率の向上→所得増加
国全体の所得が減っている現状では、所得の再分配を行うだけでは、日本国は衰退します。それを避けるためにはイノベーションを起こし、そこに投資を行い、産業構造を変換させるべきです。
イノベーションを起こすためには、世の中の森羅万象に好奇心をもち、顧客のペインを見つけることが重要になります。新たなマーケットを創造する起業家が増えることで、人材の流動化が起こります。そこに投資を集めることで、成長する企業が増え、国民の所得も増加するのです。
時間はかかっても、
イノベーションのできる社会へと順序を踏んで進んでいこう。 国全体の所得が減っている現状では、所得の再分配は「 国家の老衰」につながる。それを止めるのは政府ではなく、 企業自身、国民自身の意志と行動である。
大企業からベンチャーに人材をシフトさせたり、大学内起業家を養成することで、未来は確実に変わり始めます。この30年間で日本の総所得はほとんど増えていないという現実を見据え、旧来型の政策を今こそ見直すべきです。
最近では、若い世代の起業家が増えており、世の中の空気も確実に変わってきています。ベンチャー企業への投資を増やし、彼らを支援することで、成長産業が生まれてくるはずです。政治家や官僚はゾンビ型企業に資金を使うのではなく、ベンチャー企業への投資を積極的に行うべきです。
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