未来実現マーケティング 人生と社会の変革を加速する35の技術(神田昌典)の書評

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未来実現マーケティング 人生と社会の変革を加速する35の技術
神田昌典

本書の要約

子供を起点にマーケティングを考え、女性をそのプロジェクトに取り組むことで、組織のDXやマーケティングが進化します。今後は女性の力を積極的に取り入れた企業が勝ち組になりそうです。まずは、子供起点でビジネスを設計することから始めてみましょう。

子供をセンターピンにマーケティングを行おう!

顧客対象が子供でない会社でも、自社のリソース(ノウハウ・技術・人脈・空間など)を発掘して、今の子供にウケる商品・サービスを、全社を挙げて企画・開発してみるのである。実際にやってみると、予想外にも、業績アップにつながることが多い。(神田昌典)

神田昌典氏の新刊は、SDGsの17の目標を「35のマーケティング技術」で解決する方法を紹介しています。今日は、その中から、SDGs5のジェンダー平等を実現する方法について考えてみます。

著者はジェンダー平等の入り口は、子供を起点に考えるとよいと指摘します。東京・調布市の原歯科医院では、患者数が伸び悩む中、子供の予防治療に力を入れようと考え、医院の一角に、キッズスペースを設けました。それと同時にスタッフ教育にも力を入れたところ、業績が急上昇したと言います。

戦略を変更することで、子供の患者が増えるだけでなく、お母さんたちの患者が急増したのです。出産後、歯が悪くなった母親たちも、子供を預かってもらえるこの病院に通うようになり、その後、家族も通うという連鎖が起こり、原歯科医院が家族全員のファミリードクターになったのです。ドクターは「センターピン集中戦略」によって、結果を出しました。

ボーリングでは、センターにある1本のピンに集中しそれを倒すことで、10本すべてが倒れますが、これをマーケティングでは、センターピン集中戦略と言います。忙しいお母さんを動かすには、子供のニーズに配慮することがセンターピンだと気づいた原医師は子供を起点に病院をデザインし、やがては母親や家族を巻き込むことに成功します。

トヨタユナイテッド静岡も子供を起点にマーケティングを行なっています。同社はユナイテッドキッズクラブという子供向けの組織をつくっています。多くの地域住民の子供がこのキッズクラブに加入し、同社が発行する「キッズ免許証」を持っています。

子供が自動車を買ってくれるわけではありませんが、子供が味方になってくれれば、家族を動かし、次の車種がトヨタになる可能性が高まります。また子供を持つ世帯のニーズがわかれば、新しいサービス開発につなげることができます。

女性の力を活用することが企業にとって重要な理由

「子供商品開発プロジェクト」をきっかけに、働きながら子育てをする女性への理解が深まるのであるが、実は、それが、ジェンダー平等を最速で実現する突破口になると、私は考えている。なぜなら、ジェンダー平等は想像以上に手強い問題で、正面から立ち向かったところで、そう簡単には解消できないからだ。

管理職に登用された女性は、仕事においても家庭においても、孤軍奮闘しているのが実態です。彼女たちはやがて心折れて、退職を余儀なくされてしまいます。

この問題を解決するために、全社横断の子供商品開発プロジェクトをつくるべきだというのが神田氏の主張になります。子供と女性を味方にすることで、より大きなマーケットがつくれますが、その際、男性視点ではなく、女性視点でプロジェクトを動かすとよいと言うのです。

このプロジェクトが効果的なのは、子供を対象とすることで、成果をあげるためには、男性社員がより家庭と仕事を両立させなければならなくなり、その結果、当事者として現在、女性が担っている負担を経験することになるからだ。そうして理解を深めると、プロジェクトを進めるに従って、社内横断的に、女性社員を支える協力者ネットワークがつくられていく。すると、今までの女性の活躍を阻んでいた問題の根が取り除かれ始める。それは、主として男性にとって仕事がしやすい、縦割りの組織である。

男性中心の組織は、「縦のラインの組織」をつくる傾向があります。一方、女性は「横のラインの連携」を重視します。女性たちは上下関係はあまりつくらず、同じ立場の仲間とネットワークを築き、物事を進めていきます。

実は、今後主流になるデジタル的な組織では、横のライン連携が重要になります。全部門が連携し、すべての部署から生じるデータを統合し、見込み客を育成し、一生の顧客にしていくマーケティング思考が欠かせないからです。ヒット商品を生み出すためには、顧客に寄り添ったカスタマージャーニーを設計する必要があるため、横のライン連携を組織はもっと意識すべきです。

「子供商品開発プロジェクト」をきっかけに、男性側が、女性が働くことの負担を当事者として理解・協力し、女性側は、組織横断的に連携するという自然な力を発揮して、協力ネットワークをつくります。結果、会社にとっては、なかなか結果が出ないデジタル変革やマーケティング分野で、実績を出しやすい環境を整えられるようになります。

ペンシルベニァ大学ウォートン・スクールの元国際経営学教授で、現在はケンブリッジ大学の学部長を務めるマウロ・ギレン氏は、世界の富を持つ人のうち、女性が占める割合は2000年に15%でしたが、2030年には55%に上がると予測します。

女性のほうが男性よりも寿命が長く、男性からの相続を受ける機会が多く、やがて女性が大きな富を握るようになります。あと10年もしないうちに、あらゆる分野で、女性ニーズを中心に、企業戦略や商品戦略の変更が行われるようになり、女性を理解するが企業成長には欠かせなくなります。

今後、日本でも家族と仕事の距離を縮めることで、新しい価値や仕事を生み出すフェーズに入っていきます。コロナ禍によるリモートワークによって、女性も男性も家で仕事ができるようになります。子育てを夫婦ともに行うことで、新たなビジネスチャンスが見つかります。

子供を起点にマーケティングを考え、女性をそのプロジェクトに取り組むことで、組織のDXやマーケティングが進化します。今後は女性の力を積極的に取り入れた企業が勝ち組になりそうです。まずは、子供起点でビジネスを設計することから始めてみましょう。


 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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