ガーバー流 社長が会社にいなくても回る「仕組み」経営(堀越吉太郎)の書評

three men sitting on chair beside tables

ガーバー流 社長が会社にいなくても回る「仕組み」経営
堀越吉太郎
KADOKAWA 

本書の要約

経営者が自分の時間を生み出すためには、「人材志向」から「仕組み志向」に考えを転換することが重要になります。仕組み化によって、空いた時間を活用し、経営者は新しい事業を生み出すことに集中すべきです。また、経営理念やパーパスなど経営者の考えを積極的に従業員に共有するようにしましょう。

なぜ、仕組み志向が重要なのか?

社長の唯一の仕事は、「仕事を手放すこと」だ。社長が会社にいなくても、しっかりと仕事が回るような仕組みをつくることこそが、経営者の真の仕事なのである。(マイケル・E・ガーバー)

スモールビジネスアドバイザーのマイケル・E・ガーバーは日本でも人気がありますが、そのガーバーの教えを堀越吉太郎氏がわかりやすくコンパクトにまとめてくれたのが、本書ガーバー流 社長が会社にいなくても回る「仕組み」経営になります。

経営者の本当の仕事は、新しい事業を生み出すことですが、多くの経営者は日々、忙しい時間を過ごし、新規事業創造のための時間をつくり出せずにいます。

経営者が自分の時間を生み出すためには、「人材志向」から「仕組み志向」に転換することが重要になります。

自社のビジョンやパーパスに共感した人を採用することが、組織を強くしてくれます。経験が少ない、または経験が無い人たちでも、最高の成果を生み出せるような仕組み(システム)をつくることで、ビジョンやパーパスに共感した社員が成長し、経営者は戦略や新規ビジネスに集中できるようになります。

優れた仕組みは、「そこそこの人材」を「優れた人材」に転換することができますから、採用時にビジョンやパーパスを実現したい人を選ぶべきです。

仕組み志向の会社は、会社にやってきた人材を「失う」可能性が絶えずあるということを肝に銘じている。 しかし同時に、いったん構築した「仕組み」は、よほどのことがない限り失われることがないとわかっている。 言い換えれば、「人材は会社の資産ではないが、仕組みは会社の資産だ」と考えているのである。

ガーバーは仕組み経営に必要な8つの条件を明らかにしています。
①ビジネスモデル・・・誰がやってもお金が生み出される仕組み
②組織図・・・会社のなかでの役割を明確にする仕組み
③職務契約書・・・仕事の意味と目的を明確にする仕組み
④人事評価制度・・・・働く人の夢を叶える仕組み
⑤理念・・・経営者の想いを伝える仕組み
⑥数値化・・・現状の把握を可能にする仕組み
⑦マニュアル化・・・平凡な人材を非凡に変える仕組み
⑧イノベーション・・・社長がいなくても成長できる仕組み

経営理念やパーパスが重要な理由

組織図がない限り、優秀な人材に依存せず、マニュアルだけで回り続ける組織をつくることは不可能なのである。

ビジネスモデルをつくることも重要ですが、中小企業は組織図をつくることにもっと注力すべきです。中小規模のビジネスにおいては、1人の人材が複数の仕事を兼務していることが多いため、個々の業務範囲や責任が不明確にになりがちです。それぞれの仕事の境界が曖昧だからこそ、特定の仕事を別の人に引き継くことが難しくなります。

組織図の作成とはまず第一に、「人」を度外視したうえで、それぞれの「仕事」をくっきりと分けていく作業になります。 それぞれの仕事の位置づけが明確になると、マニュアル化が容易になります。

それぞれのポジション(職位)を書き終えたら、今度はそれぞれに求められる「結果と責任」を明確にします。職務契約書を通じて上司と部下が、が自分の役割を自覚するようになれば、経営者がいなくても会社が回る基盤が強固になります。

職務契約書に記入すべき内容
・会社のなかの各ポジションが達成すべき結果
・そのポジションが責任を持って行うべき仕事
・評価の基準 
適切なマニュアルづくりのためには、 責任を明確にした職務契約書を社員と回すべきです。

経営理念やパーパスを明らかにすることで、従業員が自走してくれます。

「企業が大きくなったとき」を想定しておくということだ。つまり、社長1人では自分のマインドを伝えられないくらい大きな会社になっても、確実に従業員が会社の精神を理解できるような「仕組み」をつくる必要があるのである。

真の経営者=起業家は「4つの役割」を担うことになるとガーバーは述べています。
①ドリーマー(Dreamer)
ドリーマー(WHAT:何を?) 一般的な願望や欲望ではなく、顧客のための夢(インパーソナルドリーム)をつくることで顧客からの共感を得られます。

②シンカー(Thinker)
シンカー(HOW:どうやって?) シンカーは、ドリーマーが気付いた夢をビジネスモデルにします。どのような経路、どのような手段で実現するかを考えます。

③ストーリーテラー(Storyteller)
ストーリーテラー(WHY:なぜ?) ストーリーテラーは、夢とビジネスモデルを他の人にわかりやすく伝えます。

ガーバーはまず自分自身にそのストーリーを語るべきだと言います。

最も重要なことは、あなた自身にストーリーを語り、洗練させること、変形させること、それであなた自身を酔わせることだ。(マイケル・E・バーガー)

人々を巻き込み、夢を現実化していくためには、まずはくり返し自分自身にストーリーを語り、それを洗練させた上で、他者に伝え、そのストーリーを広めるべきです。

 ④リーダー(Leader)
リーダー(DO:実行) リーダーはその名の通り、リーダーシップを発揮して、ビジネスを前に進めていく人です。夢を実現させるためには、「行動のための戦略と計画(ミッション)」をつくりあげ、実践する必要があります。

経営者は、経営理念(経営者の想い)と社是社訓(会社で正しいとされていること)をしっかりとまとめておく必要があります。その上で、クレドを作成し、朝礼を通じて従業員に経営理念や社是社訓を日々伝え、根づかせるようにすべきです。経営理念には、自社のパーパスとWhy(なぜやるのか?)を書く必要があります。

マニュアルを作成するには、次の4項目が欠かせません。
①目標・・・その仕事を通じて実現したいこと
②役割・・・その仕事の責任者
③必要なもの・・・その仕事に必要な道具
④ステップ・・・実際の業務で必要となる手順

数値化やマニュアル化が、社長不在のまま既存の仕事を回していくためのものなのだとすれば、イノベーションのほうは、社長抜きで仕事や会社そのものを「発展させていく」ために欠かせない仕組みだ。

日常業務は従業員、イノベーションは経営者がやるべきものだと考えるのをやめ、従業員にも担当してもらいましょう。イノベーションは業務改善だと捉えることで、社員の働き方が変わります。マニュアルや数値化の仕組みを現場が改善することで、企業は経営者がいなくとも成長できるようになります。


 

 

 

 

 

 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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