組織の壁を越える――「バウンダリー・スパニング」6つの実践 (クリス・アーンスト, ドナ・クロボット=メイソン)の書評

man jumping on rock beside lake

組織の壁を越える――「バウンダリー・スパニング」6つの実践
クリス・アーンスト, ドナ・クロボット=メイソン
英治出版

本書の要約

世の中の課題が複雑になる中で、課題を定義したり、解決するためには境界を越えた能力を持った人をつなぐことが重要になっています。組織や個人をつなぐバウンダリー・スパニング・リーダーがいることで、変化に対応でき、イノベーションを起こせるようになるのです。

バウンダリー・スパニング・リーダーが重要な理由

われわれがいま直面する重要課題は相互依存の関係にあり、各集団が一致協力することでしか解決できない。企業や政府、組織、コミュニティが現状の問題を解決し、新たな機会を実現するためには、リーダーは集団の境界やアイデンティティを越えて、考え行動しなければならない。(クリス・アーンスト, ドナ・クロボット=メイソン)

テクノロジーの進歩、世界の人口属性の変化、グローバル化の拡大によって、世界中の組織の「境界線」が急速に取り払われています。しかし、その境界の壁は厚く、制約や制限を生み、無駄な対立や非生産的な分裂につながる要因になっています。

バウンダリー(boundary)という語にはふたつの意味があります。
① 境界や限界を示すもの。国境線、境界線。
② フロンティア。最も先進的な、または新しい活動領域。

バウンダリーは人間の可能性を限定し、創造性や革新性を制限し、ビジネスや社会にとって必要な変化を抑え込む障壁になります。その一方、最も先進的な思考やブレークスルーの可能性が存在するフロンティアバウンダリー(boundary)にもなります。

境界を超えてイノベーションを起こすためには、リーダーシップが欠かせません。CCL(Center for Creative Leadership)では、リーダーシップを以下の3つの成果を出すものとして定義しています。
・ディレクション(方向性)……目標や戦略に対する共通の理解  
・アラインメント(団結力)……リソースや活動の組織的動員  
・コミットメント(責任感)……ひとつの集団ではなく組織全体の成功に責任を負う姿勢

最近、バウンダリースパナー(越境人材)という存在が注目されています。世の中の課題が複雑になる中で、課題を定義したり、解決するためには境界を越えた能力を持った人をつなぐことが重要になっています。組織や個人をつなぐバウンダリー・スパニング・リーダーシップがいることで、イノベーションを起こせるようになるのです。

ビル&メリンダ・ゲイツ財団のディレクターのクリス・アーンストとシンシナティ大学准教授のドナ・クロボット=メイソンの2人は境界を越えて、個人として外と信頼関係を築くことが重要だと指摘します。リーダーが自らがこのバウンダリー・スパナーになることで組織に変革を起こせます。

自らがバウンダリー・スパニング・リーダーになるだけでなく、部下を育成することでより大きな効果を得られます。バウンダリー・スパニング・リーダーを増やすことが組織の成長につながります。

組織には以下の5つの境界が存在します。
(1)垂直・・・階層、地位、年功、権限、権力
(2)水平・・・部門、専門性
(3)ステークホルダー・・・組織や外部パートナー
(4)人口属性・・・性別、人種、学歴、思想
(5)地理・・・距離、場所、文化、地域、市場
組織においては、特に垂直と水平の境界(組織の壁)を超えることが重要になります。

境界を超えるための6つのアプローチ

「バウンダリー・スパニング・リーダーシップ」は、より高いビジョンやゴールをめざし、集団の境界を越えて方向性、団結力、責任感を築く能力である。それにはまず、垂直・水平方向の境界、ステークホルダーとの境界、人口属性の境界、地理的な境界に対する理解を新たにしなければならない。

著者は本書で境界を超えるための6つのアプローチを紹介しています。
■バッファリング(Buffering 、和らげること)
■リフレクティング(Reflecting 、相手の立場から見ること)
■コネクティング(Connecting 、つなげること)
■モビライジング(Mobilizing 、結束して一丸となること)
■ウィービング(Weaving、織り合わさること)
■トランスフォーミング(Transforming、変容すること)

異なる集団が衝突し、交わり、つながる場所には、無限の可能性や素晴らしい成果を引き出す連結点(ネクサス)が形成されやすいと著者は指摘します。集団をつなぐネクサスには、喫緊の問題を解決するための方向性、団結力、責任感が築かれます。そこでは、イノベーションを促すための新たな協業が生まれます。

境界を超えるための6つのアプローチを実践することで、いまある境界線を素晴らしい世界に変えることができます。バウンダリー・スパニング・リーダーが組織の壁を取り除くことで、革新的なソリューションが生まれ、組織の成長が加速します。

バウンダリー・スパニング・リーダーシップには覚悟と行動する勇気が求められます。
・既存の組織図の縛りを外れる
・ステークホルダーの利害を度外視する
・所属する部門や集団の壁を越えてリーダーシップを発揮する

バウンダリー・スパニング・リーダーは、対立しがちな境界を予見し、ネクサスをつくるようにすべきです。そのために事前に境界課題の存在を認識し、その課題に手を打つことが重要になります。過去の失敗を振り返り、境界の課題を事前に潰すことをリーダーは実践するようにしましょう。その際、バッファリングやリフレクティングなど境界を超えるための6つのアプローチが役立ちます。


この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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