会社の問題の9割は「4つの武器」で解決できる
高松康平
朝日新聞出版
本書の要約
「業務ミス」「売上目標の未達」「収益性の悪化」「新事業開発」の4つの問題を解決すれば、ビジネス上の問題の9割は解決できます。それを実現するためには、正しい視点を持ち、なぜなぜ分析や構造化、仮説思考、ストーリーといった4つの武器を活用することが必要です。
問題解決の4つのステップとは?
問題解決は、「どんな問題に取り組むか」を定義することから始まります。これを「ステップ0(現状分析ごと呼んでいます。つまり、「取り組むべき問題が4つの問題のうちのどれか」を認識します。ここでいう「問題」とは、あるべき姿(目標)と現状との差のことです。ですから、取り組むべき問題を定義するには、「現状はどうなのか」を分析し、その現状に対して「目標は何か」を明確にする必要があります。(高松康平)
今年もiU大ビジネスフィールドリサーチという授業を行っていますが、この授業の最初の授業では、問題解決の手法について学びます。この本では、わかりやすく問題解決の方法が解説されており、とても参考になりました。
問題解決の第一歩は、現在の状況と望ましい状態を明確に把握し、その差異を埋めることです。ただし、企業現場には多種多様な問題が発生するため、それぞれの問題に対して適切なアプローチが必要です。問題解決には、問題の原因を正確に特定し、必要な情報を収集することが欠かせません。そして、実行可能な解決策を策定し、実行するためのプランを立てる必要があります。
ただし、異なる問題に対しては、解決のために異なる観点が求められます。問題解決には、問題の特性を正確に理解し、対処方法を選択する必要があります。がむしゃらに解決に取り組むことは、望ましい結果を得ることができない場合があります。企業経営者には、問題解決の際には現状を把握し、優先すべき課題を明確にする必要があります。
ミスを減らすための問題解決と売上アップを目的とした問題解決は、表面的には似ているように見えますが、実際には異なるアプローチが必要です。問題の種類を正しく認識し、最適な対処方法を選択することが重要です。
問題を高い確率で解決するためには、目の前にある問題の種類に合わせて対応していく必要があります。しかし、問題への取り組み方の選択方法がわかっていないために、とりあえず問題を解き始めてしまうことが多いのです。
人間は自然と直感に頼りがちです。しかしながら、直感だけで問題を解決しようとすると、それが未解決の難しい問題であった場合、うまくいく確率は低いでしょう。また、自分の認識に基づいて問題の原因を判断するだけでは、同様の結果が生じる可能性が高くなります。したがって、未解決の問題に対処する場合は、直感だけでなく、適切な手法を用いて問題解決に取り組むことが重要です。
問題を分解し、ここで問題が起きているのだと丁寧に確認し(ステップ1)、その問題が起きている原因を幅広く洗い出します(ステップ2)。そして、集めた事実をもとに直すべきことを明らかにします(ステップ3)。そして、ようやく解決策を考えます(ステップ4)。
問題を解決したければ、問題分解👉原因分析👉課題抽出👉解決策立案のステップで考えることが求められます。
また、ビジネスの現場ではさまざまな問題が発生します。著者はその9割は以下の4つに分類されると指摘します。
❶業務ミスやスケジュール遅れ
❷営業の売上目標達成
❸事業の成長や収益性
❹新規事業の立ち上げ
問題解決の4つの武器とは?
①〝問題の種類〟に合わせて正しい「視点」を持つ。 ②問題解決の地図に沿って前に進むための「武器」を持つ。 正しい「視点」を持つことで、重要な点を見逃すことがなくなります。さらに、正しい「武器」を持つことで、問題解決の途中でつまずくことなく、前に進むことができます。
著者は正しい視点と4つの武器を身につけると問題をスムーズに解決できるようになると言います。
■なぜなぜ分析
■構造化
■仮説思考
■ストーリー
❶業務ミスやスケジュール遅れ👉業務改善担当の視点となぜなぜ分析
まずは、原因の分析を行います。業務ミスやスケジュール遅れが起きた際に、問題(ミス)が起きた原因を探るための視点は、「なぜなぜ分析」です。この分析を行うことで、問題を起こした原因を正しく探ることができます。
もし問題が複数の場所で起きている場合は、それぞれの場所で悪いところを特定し、別々になぜなぜ分析を行う必要があります。この場所ごとの分析が完了したら、次に実施するのが「原因分析」です。
問題が起きた原因を正しく深堀りするには、近い原因から探り、次に遠い原因を探る必要があります。そして、問題の原因には「行動の原因」、「スキル・知識・マインド・ルール」の4つがあります。
最も近い原因は「行動の原因」であり、問題のあった行動が特定できたら、次に遠い原因を探ります。 問題を根本的に解決するには、行動を起こしてしまった背景の原因も特定する必要があります。
「その行動の背景にはどんな原因があるのだろうか」と考えを進め、問題を起こした原因の中で、「スキル・知識・マインド・ルール」の4つの原因についても探る必要があります。次に「体調・人間関係・環境・制度」の4つを考えます。
原因分析の次は、課題抽出を行います。課題とは「一番悪いところ」であり、課題抽出とは「ここを直せば問題が解決できる」という場所を特定することです。
●「インパクト」……その解決策がどれくらいミスをなくす効果があるか
●「コスト」……その解決策に必要となる費用や投資額
●「時間」……効果が出るまでの期間
で5段階評価などを行い、解決策を決定します。
❷売上の問題を解決する👉営業の視点と構造化
構造化とは、問題と原因の関係性を整理し、全体像を把握することです。売上を顧客数、単価、リピート率などに分解し、それぞれの要因に着目して原因を探り、適切な解決策を見つけていきます。例えば、営業進捗をアポ取り、商談数や質、クロージングなどに分解し、打ち手を考えていくのです。このように構造化して考えることで、「営業活動を改善するためにどのようなアクションを取るべきか」が明確になってきます。
❸事業の成長や収益性👉事業部長の視点と仮説思考
事業部長の視点とは、あるビジネスの全体像を1枚の俯瞰図にまとめたものです。企業や業界によって異なる部分はあるものの、ビジネスの流れには共通する要素が存在します。これらの共通項を把握することで、問題が発生した際にも、「この状況に至る背景は何か?」という視点で考えることができます。これが「仮説思考」と呼ばれる思考スキルの一つであり、非常に有用な武器となります。
仮説思考を習得することで、自分が経験していない業界やビジネスに対しても、合理的で妥当な仮説を立てることができるようになります。つまり、経験やセンスがなくても、筋の良い仮説を立てることができるのです。
❹新規事業の立ち上げ(価値創造型の問題解決)👉新規部長の視点とストーリー
新規事業を創り出す際には、検討すべき要素をバランスよく考えるための視点が必要です。「誰に、どのような価値を提供し、どのようにマネタイズ(収益化)をするのか」という新規事業プランをバランスよく考えます。その際に、必要となる武器が【ストーリー】です。
新規事業の成功の理由を明確にするために、ストーリーという武器が必要となります。ここで言うストーリーとは、その新規事業が成功する理由があらかじめ考えられている状態を指します。新しいビジネスのプランを網羅的に検討することも重要ですが、プランを考える段階で、そのプランが成功する理由が用意されていることが必要です。そうでなければ、それは単なるアイデアに過ぎず、実現性が低い可能性が高いでしょう。
まずはステップ0で、「ビジネスの現状はどうなのか」を分析し、「どれくらいの規模の新規事業をいつまでに立ち上げたいのか(目標ごと「それは何のためか(目的ごを確認します。そのうえで以下のステップ1からステップ4までのプロセスを進んでいきます。
ステップ1・・・新規事業のヒントになる「気づき」を獲得します。
ステップ2・・・「売れるストーリー」づくり
「誰に、何を、いくらで、提供するか」を考えます。
ステップ3・・・「できるストーリー」づくり
事業を実現するために必要な要素を記載した計画(ビジネスプラン)を完成させます。
実際に新しいビジネスを成功させるためには、そのビジネスが成功する理由を事前に確認する必要があります。その際には、「自社には何ができて他社にはできないのか」「競合他社に負けない強みは何か」といった点を検討し、成功のために必要な要素を整理する必要があります。 成功の理由は、自社の強みに基づいて考えることが重要です。
自社のバリューチェーン、人材、資産、資金など、自社にしかない強みを活かすことで、新しいビジネスを成功させることができます。また、自社ならではの独自性を確認することも重要です。 新しいビジネスを始める際には、「とりあえず試してみよう」という考えではなく、自社が持つ強みを活かすことができるストーリーを事前に作り上げることが重要です。それによって、ビジネスの成功への道筋を明確にすることができます。
ステップ4・・・「検証」では、事業の可能性を確認します。
ビジネス上の問題を解決するには、様々な種類の問題がありますが、「業務ミス」「売上目標の未達」「収益性の悪化」「新事業開発」の4つの問題を解決すれば、ビジネス上の問題の9割は解決できます。それを実現するためには、正しい視点を持ち、なぜなぜ分析や構造化、仮説思考、ストーリーといった4つの武器を活用することが必要です。これらの武器を駆使して、問題を解決することができるようになるでしょう。
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