古びた未来をどう壊す?~世界を書き換える「ストーリー」のつくり方とつかい方~ (宮本道人)の書評

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古びた未来をどう壊す?~世界を書き換える「ストーリー」のつくり方とつかい方~
宮本道人
光文社

本書の要約

多くの人の脳ミソは「古びた未来」にとらわれています。 フィクションや妄想をテコにして、いったん「今」のくびきから離れて未来にジャンプすることが必要になります。SFプロトタイピングとSFバックキャスティングを組み合わせることで、SF思考が身に付き、イノベーションを起こせるようになります。

古びた未来を打破する方法

未来はいつもあなたの目の前にあって、自由にさわったり、いじくって変形させたりできます。でも「未来がいじくれる」「未来はどんどん変えられる」なんて思ってない人がほとんどで、みんなそのチャンスに気づかずに平々凡々とした日々を送っています。すぐそばにあるのに見えないのはなぜか? それは、目の前に「古びた未来」が立ちはだかって視界をふさいでいるからです。(宮本道人)

多くの日本人は古びた未来感に支配されることで、イノベーションを起こせずにいます。古びた未来から考えるのをやめ、子供のころのように妄想することで、私たちはもっと自由に考えられるようになります。

古びた未来❶――固定観念でガチガチの未来  
固定観念から生まれた未来像。知識やデータなどの「ファクト」を集めて未来を予測すると、過去に縛られた発想しか生まれません。知識やデータに頼れば頼るほど、未来予想が過去からの影響を強く受けることになります。

古びた未来❷――いったんレールが敷かれた未来
一度決めたことを貫き通すのにこだわりすぎると、無難な姿勢になり、思い切ったチャレンジができなくなります。

古びた未来❸――一部の人が決めた未来

多くの人の脳ミソはこれらの「古びた未来」にとらわれています。 フィクションや妄想をテコにして、いったん「今」のくびきから離れて未来にジャンプすることが必要になります。

古びた未来に対抗する方法は以下の3つになります。
❶固定観念からハズレる
❷いったん敷いたレールからハズレる
❸一部の人の思惑からハズレる

SF的思考を行うことで、私たちは古びた未来感を打破できます。

SFプロトタイピングで「ハズレる未来像」を作るとイノベーションが起こせる。そして、SFバックキャスティングで「ハズレる未来像」を使うことでもイノベーションが起こせる。

私は未来のあるべき姿からバックキャスティングをすることで、人生がうまくいくようになりました。未来を妄想し、頭の中の情報と情報を組み合わせることで、思いがけないアイデアが浮かぶことがあります。それを実現しようと行動するうちに、よいことが起こるようになったのです。

著者の宮本道人(応用文学者、科学文化作家)氏は、SFプロトタイピングとSFバックキャスティングを組み合わせることで、イノベーションを起こせるようになると言います。
・SFプロトタイピング・・・科学と未来の可能性との間における対話、未来像をフィクションの形式で作成
・SFバックキャスティング・・・SF的な未来像を起点に「今」を変えるメソッド

イノベーションを起こすために、SF思考を身に付けよう!

フィクションを作ることでビジネスが生まれ、フィクションを作ることで権力が拡大し、フィクションを作ることで知識が広がり、フィクションを作ることで社会は変わる。

現実とかけ離れた空想や妄想には、予期せぬパワーがあります。それを実現したいという人間の欲望と結びつくことで、大きなエネルギーが生み出されます。

ヒューゴー・ガーンズバックは、「SF」という言葉の生みの親であり、「SFの父」とも呼ばれていますが、彼は作家であると同時に優れたエンジニアであり、起業家でもありました。このSF的発想(妄想)によって、イノベーションが生まれてくるのです。

ペイパルを創業したピーター・ティールは、ニール・スティーヴンスンの『クリプトノミコン』が創業当時のペイパル・チームの必読書だったと述べています。

イーロン・マスクはアイザック・アシモフやダグラス・アダムスなどのSF作品に影響を受けていることを公言しています。彼はSFの力を活用することで、テスラを短期間に成長させることに成功します。トヨタとの時価総額の差が大きくなっている理由のひとつが、SF格差なのです。

メタバースもアバターもSFから生まれています。今後のビジネスでイノベーションを起こす人は、SF的に考え、それを実現しようとしてきた人なのです。

今後、成長する可能性が高い事業を見きわめようとする投資家側も、SF的なビジョンを重視するようになっています。先見の明のあるベンチャーキャピタリストとして名を馳せるピーター・ティールも、ピーター・ディアマンディスも、マーク・アンドリーセンも、SFを読んできたのです。ブッ飛んだ未来像をクリアに描ける事業は投資家を引きつけ、実際に巨額の資金を調達しています。

フィクションには「古びた未来」を壊し、「新しい未来」を生み出していく力がある。 人類の進化は、フィクションとともにあるといっても過言ではない。 世界を書き換えるためにSFを使いこなしている人と、そうでない人の「SF格差」が広がっている。

SF的に考え、まずは行動しましょう。つくる→あらわす→つかう→なるというサイクルをぐるぐる回すこと、現実とフィクション、現在と未来を行き来し続けるダイナミックな運動の全体が 「SF思考」だと著者は指摘します。

未来像をフィクションの形式で作成するSFプロトタイピングで思考したあとは、 SFバックキャスティングを行いましょう。その際、未来ストーリーを「つかう」ことと「なる」ことを意識します。

・未来ストーリーを「つかう」―― フィクションを要素分解し、現実とのリンクを探します。フィクションの中にいる自分を想定してみたり、 フィクションには描かれていない部分をイメージし、 フィクションと現実を繋げられるようになります。

・未来ストーリーに「なる」―― フィクションから生まれたアイデアを現実化します。実際に行動することで、新たなことが生まれます。

プロダクトやサービスがイメージできたら、SF損益計算書やプロトタイプをデザインするとビジネスとしてのリアリティが増します。

人類はSF的に空想し、実際に空想したものを作り出してきました。現在は過去のSF思考から成り立っているのです。私たちはこのサイクルを繰り返し、「SFになる」ことで進化してきたのです。SF的に発想し、活動することで明るい未来を実現できるようになります。


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