本当のブランド理念について語ろう 「志の高さ」を成長に変えたトップ企業50 (ジム・ ステンゲル)の書評

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本当のブランド理念について語ろう 「志の高さ」を成長に変えたトップ企業50
ジム・ ステンゲル
CCCメディアハウス

本書の要約

ジム・ ステンゲルは5つのブランドのルールを明らかにしています。①ブランド理念を発見する。②企業文化を構築する。③理念を伝達し、共有する。④理念に沿った顧客体験を提供する。⑤理念に照らしてビジネスと社員を評価する。経営者やマーケターがこのルールに基づき行動することで、企業は飛躍的な成長を遂げられます。

企業を飛躍的に成長させるステンゲルの5つのブランドのルールとは?

最大限の成長を実現することと高い理念を貫くこと。この2つの要素は、相容れないものではない。むしろ、切っても切れない関係にある。 (ジム・ ステンゲル)

P&Gの元グローバル・マーケティング責任者でパンパースやオレイなどのブランドを再生させたジム・ ステンゲルは、企業理念(パーパス)がブランドにとってもっとも重要な要素だと指摘します。

著者が世界の5万以上のブランドを10年間追跡調査したデータによると、〝人々の生活をよりよいものにする〟ことを目指す高次のブランド理念をすべての活動の核に据えている企業は、同業他社を大きく上回る業績をあげてることがわかりました。彼は優れたブランドであるステンゲル50を発表していますが、50社のROIの伸び率はS&P500の平均よりも4倍高かったと言います。(※2000年1月から2011年1月の期間)

長年の研究から、ステンゲルは5つのブランドのルールを明らかにしました。
①人々の生活をよりよくするブランド理念を発見する。
②ブランド理念を軸に企業文化を構築する。
③ブランド理念を社内外に発信し、社員と顧客の両方に共有する。
④ブランド理念に沿った理想に近い顧客体験を提供する。
⑤ブランド理念に照らしてビジネスと社員を評価する。

■ブランド理念・・・その企業やブランドの根本的な存在目的であり、その企業やブランドが世界にもたらす高次の恩恵を表現したものでもああります。

〝人々の生活をよりよいものにする〟ことを目指すブランド理念をもつことは、社員に始まり顧客にいたるまで、その企業やブランドが関わるすべての人々を末永く味方につけ、連帯させ、行動の背中を押し続ける唯一の手段だ。また、社内の人々がいだく中核的信念と、その企業やブランドが奉仕する人々が重んじる基本的価値を結びつける要素でもある。その結びつきがなければ──言い換えればブランド理念がなければ、どのようなビジネスも本当の意味で抜きんでた存在にはなれない。

経営者やマーケターはこの5つのルールに従って行動すれば、企業は飛躍的な成長を遂げられるというのが本書のメッセージになります。

企業を成長させる4つの重要なこと

〝人々の生活をよりよいものにする〟ことを理念に掲げれば、企業やブランドの核をなす信念が人間にとって大切な基本的価値を反映したものになり、そのビジネスの本当の存在目的が明確になる。その結果、さまざまなビジネスモデルを次々と生み出せるようになる。

企業が高いゴールを掲げ、最も優秀な人材を獲得し、最も顧客を満足させることを目指すべきです。これらの目標を達成するために、企業理念が欠かせないのです。

理念は、21世紀にビジネスが成功を収めるうえでカギを握る要素です。理念があれば、人間にとって大切な基本的価値と人間行動に関する普遍的な真理をビジネスに活用できるようになります。

人々の生活に根差したビジネスを築き、ビジネスを通じて人々の生活に好ましい影響を及ぼせるようになるのです。 パンパースのブランド理念(パーパス)は、「世界でいちばんたくさん紙オムツを売ること」ではありません。パンパースは、わが子の健康で幸せな成長を望む母親たちの力になるために存在しています。

目先の商売に限定されない理念を掲げれば、ブランドの可能性が無限に広がります。有効なブランド理念は、そのブランドのビジネスに関わる人たちがどういう価値を重んじているかを明瞭に描き出します。

企業理念を明らかにすることで、企業は顧客を深く理解できるようになります。どういう顧客を最良の顧客と位置づけ、その顧客層と同じ価値観を共有することが可能になります。経営者やリーダーが明確な価値を発信することで、顧客やパートナーからの共感を得られます。顧客から支持される優位性(ブランド理念)を持つことで、企業は飛躍的に成長できるようになります。 

ステンゲルは企業の成長調査から、4つの重要なことを明らかにしました。
発見1 ブランド理念は、最も急速に成長を遂げているビジネスの原動力である。

発見2 最も急速に成長を遂げているビジネスは、人間にとって大切な以下の5つの基本的価値のいずれかに関わるブランド理念をもっている。
1,喜びを感じさせる──人々が幸せや驚き、無限の可能性を体験する後押しをする。  
2,結びつくことを助ける──人々がほかの人たちや世界と有意義な形で結びつく能力を高める。
3,探求心を刺激する──人々が新しい世界や新しい経験に乗り出すのを助ける。   
4,誇りをかき立てる──人々が自信や力、安心感、活力を高めることを可能にする。 
5,社会に影響を及ぼす──現状を揺さぶり、新しいビジネスの枠組みを打ち出すなどして、社会全体に好ましい影響を与える。

発見3 最も急速に成長を遂げているビジネスを動かすのは、ビジネス・アーティスト(ブランド理念を主たる表現手段として用いるリーダー)である。

発見4 ビジネス・アーティストたちには、いくつかの活動に卓越しているという共通点がある。これらの活動がコンピュータのOS(オペレーティングシステム)のように、高成長を生み出し、持続させる土台になっている。

強力なブランドは5つの基本的価値のいくつかを土台にして、企業を成長させていることが明らかになりました。リーダーはこの5つの基本的価値(カテゴリー)からヒントを得られます。複数のカテゴリーを横断するブランド理念を築ければ、競合への圧倒的な優位性を築けます。

メルセデス・ベンツは、洗練されたデザインにより人々の誇りをかき立てていると同時に自動車の輸送・移動能力により人々に喜びを感じさせてもいます。高級チョコレートのリンツは、人々に喜びを感じさせるブランドですが、持続可能なココア栽培を通じて社会に好ましい影響を及ぼしているのです。


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