桁違いの成長と深化をもたらす 10X思考 (テンエックス思考)
名和高司
ディスカヴァー・トゥエンティワン
本書の要約
パーパス明確になると、人生に方向性が生まれ、道を迷うことなく進むことができます。ピボットは時代の変化に合わせて能力を変えることです。パッションがある人は、困難に直面しても諦めず、前に進む力を持っています。パーパス、ピボット、パッションの3つのPを組み合わせることで、自分らしい人生を送れるようになります。
人生100年時代をどう生き、働くか?
仕事が自分の崇高な目的につながっていく生き方が、もっとも幸せな生き方になっていくだろう。逆に言うと、仕事をしている時間が単に給料をもらっているだけでなく、自分のスキルを磨いているだけでもなく、高い志を持てるかが重要である。(名和高司)
人生100年時代を迎えると、従来の終身雇用制度はさらに適応し難くなります。たとえ1つの企業で30年間働き続けたとしても、まだ人生の半分近くが残っています。自分の人生、働き方について真剣に考え、自分らしい生きがいや働きがいを明らかにすることがポイントになります。
100年人生という長いスパンでは、少なくとも3つの世代、つまり青年期、壮年期、そして高齢期を経験することになります。それぞれの段階をどう生きるかは、人生全体の充実度に大きく影響します。 最初の30年間は、自身の可能性を模索し、広範な選択肢を探求する時期です。この期間では、様々な経験を積み、自身の興味や能力を探ることが重要となります。
次の30年間は、自分にとって最適な仕事を見つけ、その分野で力を発揮する期間となります。このステージでは、自己実現に向けて全力を尽くし、キャリアを深めることが期待されます。
そして最後の30年間は、豊富な経験と蓄積された知識を活用し、社会への貢献を重視する時期となります。この期間では、自分自身が得た知識とスキルを通じて、社会に何が提供できるかを模索します。
この3つのステージを理解し、それぞれの時期に応じたライフプランを策定することで、人生100年時代をより有意義に過ごすことが可能となります。青年期で作った一つの人生設計に固執するのではなく、各ステージごとに自分の人生を再評価し、必要な調整を行うことが重要です。
その際のキーワードは「ノマド(遊牧民)」化になります。ジル・ドゥルーズの提唱するノマドの生活スタイルは、遊牧民のような生活様式を指しています。ノマドは一時的に居住する場所を変え、一定期間が経過すると新たな場所へと移住することを特徴としています。このような流動的な生活は、定住を避け、自己を枠に閉じ込めることを否定するものです。
ノマドのライフスタイルは、固定された自己像を避け、多様な自己表現を追求する「分人」型の生活を具現化しています。環境を変え、絶えず変化することで、私たちは時代にフィットした働き方ができるようになります。現代のテクノロジーの進化や社会の変化に合わせて、一つの場所に留まり働くだけでは、スキルの向上が難しくなります。自分自身を時代遅れの存在にしないためにも、私たちはノマドの生き方を選択するべきです。
現代社会ではパラレルキャリア、つまり、副業や兼業、さらには頻繁な転職が当たり前になっています。これは逆に、変化を楽しみ、自身で新たな選択を積極的に行うという主体的な姿勢が求められる時代とも言えます。働きがいと生きがいを追求し、絶えず新たな学びを積むことで、自分自身を価値ある資産に変えることが可能です。 今日の可能性に全力で挑戦し、そして明日の可能性を拓く。これがノマド的な生き方の本質です。
未知のジャーニーを豊かなものにするためには、パーパス、ピボット、パッションの3つのPを、生活と仕事に実装していきたい。
パーパスを自分自身に具体化させるためにOKRが利用されます。OKR(Objectives and Key Results)とは、目標管理の手法の一つであり、企業や組織の目標とその実現に必要な成果を明確に設定、測定するためのフレームワークです。
これは1970年代にIntelで開発され、Googleなどのテクノロジー企業によって広く採用されて注目を浴びました。OKRは2つの主要な部分からなります。
1、Objectives(目標):これは何を達成したいか、あるいはどんな状態を目指すかを明確にするものです。目標は具体的、時限付き、かつ挑戦的であるべきです。
2、Key Results(主要結果):これはその目標をどのように達成するかを示す具体的な指標です。主要結果は測定可能であるべきで、その達成度は定量的に評価できるように設定します。
オブジェクティブはパーパス(目的)であり、キーリザルトは達成したい結果(What)です。しかし、具体的な手段(How)はOKRには明示されていません。それでは、Howを動かす要素は何なのでしょうか。それがプリンシプル、すなわち行動原理です。
パーパスはまるで頭上に輝く北極星のようなものであり、私たちの日々の行動を制律するのはプリンシプルです。自社の根底にあるプリンシプルを、どのように未来志向に再解釈できるかが、パーパスを実現するための鍵となります。
自分の生きがい・働きがいを見つける4つの質問
意義のあるライフには、意義のあるワークが不可欠なのである。
以下の4つの質問は、自己理解を深めるための素晴らしい手段です。これらは、自己の強みや好みを明確に理解するとともに、あなたが社会に提供できる価値と、それに対する適切な報酬を得るための途を見つけるのに役立ちます。
・あなたが得意なことは何ですか?:これは、あなたが自然に行えるか、磨き上げたスキルを示します。これは自己の強みや能力を理解し、それを活用するための重要な一歩です。
・あなたの好きなことは何ですか?:これは、あなたが情熱を持って取り組むことができる活動を見つけることを助けます。この情熱は、あなたが働き続ける動力となります。
・社会から必要とされているものは何ですか?:これは、あなたが提供できる価値が、社会にどのように受け入れられ、価値を見いだされるかを理解するのに役立ちます。これはあなたの働きがいと直接関係しています。
・あなたが報酬・収入を得られるものは何ですか?:これは、あなたが提供できる価値に対する報酬を考えるための質問です。これは、あなたが提供できるスキルや情熱が経済的に持続可能であることを確認するために重要です。
これら4つの質問を通じて、あなた自身の能力、情熱、価値、そして報酬をバランスよく理解し、あなた自身の生きがいと働きがいを見つけることができるでしょう。
人生のステージごとにこの質問を繰り返すことで、自分のやるべきことが明らかになります。
人生もゼロクリアして、出発点に戻るだけでは答えにならない。これまで蓄積してきた知恵を踏まえつつ、学習の場をずらす(脱学習”アンラーン)ことで新たに獲得する知恵と新結合させることが必要となる。その本質は、イノベーションというより「リノベーション」であり、破壊というより「脱構築」である。言い換えれば、「リノベーション・オブ・ライフ」こそが、ライフ・シフトの本質なのである。
志、すなわちパーパスを中心に据え、未知の可能性に向けて自身を「ピボット」、つまり自己転換していくことは、新たな価値を生み出す鍵となります。その際には、タイミング感覚や適切なバランス、方向性という要素が求められます。しかしここで重要なのは、小さな変更ではなく、大胆に新たな方向に進むことになります。
それを可能にするのが「パッション」、つまり心から湧き出る情熱です。 このパーパス、ピボット、パッションという3つのPは、それぞれ「考え方」、「未来進行形の能力」、「熱意」を言い換えています。これら3つの要素を組み合わせることで、人生の成功を掴むことができるのです。
特に重要なのは「未来進行形の能力」、つまり「ピボット」の部分です。能力は、熱意次第で無限に伸ばすことが可能で、一見固定されたように思える自分自身を、新たな方向に進化させることが可能です。 しかし、これらすべての前提となるのが「考え方」、すなわちパーパスです。考え方がポジティブでなければ、熱意を持って進んでも、間違った方向に進む可能性があります。
人生100年時代において、パーパス、ピボット、パッションの3つの要素は、ますます重要になっていきます。自分の人生の北極星であるパーパスを明確にし、人生100年時代をエンジョイしましょう。
コメント