ピボットが成功をもたらす理由。QUITTING やめる力 最良の人生戦略(ジュリア・ケラー)の書評

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QUITTING やめる力 最良の人生戦略
ジュリア・ケラー
日本経済新聞出版

本書の要約

キャリアのリセットは確かに大きな勇気を必要とします。しかし、その一方で、ピボット、つまり意図的な方向転換を行うことで、意外な成功を手に入れるチャンスが広がります。キャリアのパスは直線的であると考えるのをやめ、新たな道を模索し、試行錯誤を繰り返すことで、真に満足のいくキャリアと人生を築くことができます。

キャリアパスを直線的なものと捉えるのをやめよう!

キャリアの初期に転職回数が多い人ほど、働き盛りになって高い収入を得られる傾 向にある。転職を繰り返すのは、落ち着きのない気まぐれな人間のすることのように見えるかもしれないが、実際には専門的技能とやりがいと十分な報酬を兼ね備えた仕事に出合える確率を高める。(デレク・トンプソン)

QUITTING やめる力 最良の人生戦略(ジュリア・ケラー)書評を続けます。現代社会では、「一つの仕事に一生懸命」が奨励され、それが一種の道徳的価値とされることが多いです。しかし、人生100年時代の到来とともに、この考え方は見直されるべき時期に来ています。

キャリアの中で、自身の道を見つめ直し、方向転換をすることがますます重要になってきています。これは単に「やめる」だけではなく、「新たな可能性に目を向ける」という意味も含んでいます。キャリアを定期的に見直し、微調整することで、人生の道筋を自分で描き直すことができます。

数々の研究結果がこれを裏付けています。職業と収入に関する調査では、「キャリア初期の転職回数が多い人ほど、働き盛りになってから高い収入を得る可能性がある」との結果が示されています。何度も転職することは、一見すると安定性や一貫性に欠ける行動と解釈されがちですが、事実は異なります。

「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」の記事でアリアン・コーエンが指摘しているように、「自分にとって本当に相応しい職業は何か」を再評価し、「別の仕事に転じることを考える」ことは、キャリアを長年積み重ね、やる気を失いつつあるか、不安を感じている人々にとって、非常に有用な戦略となりそうです。

コーエンが話を聞いた雇用の専門家たちは、自分の現在の仕事に対する疲労感や飽きが来るのは、その仕事を完全に理解し、成長の余地がなくなったからだと語っています。一つの場所でこれ以上学べることがなくなった時、それは次のステップに進むべきときかもしれません。

重要なのは、自分が何者で、何を求めているのかを深く理解し直すことです。その日の仕事を早く終えて1日を終えるのではなく、自己省察と向き合う時間を持つようにしましょう。これまでの希望や夢をすべて放棄する必要はありません。代わりに、自分のやり方を修正したり、違う道を試してみたりすることで、新たな可能性が開けます。

部分的に「やめる」ことで、新たな方向に進むことが容易になり、人生の選択肢が広がるでしょう。これは自分自身に「リセット」をプレゼントする方法で、誰の許可も必要としません。 ハーバード大学の「マインド・ブレイン&エデュケーション・プログラム」の調査では、予想外の結果が明らかになりました。ほとんどの成功者は、一般的に「通常」とされる人生のルートから大きく逸脱していました。

フロリダ州立大学のエドワード・グレイも同様の視点を共有しています。「学生たちは、創造性を引き出すさまざまな手法を試したり、回り道を試みたり、一度立ち止まってみるといった、直線的でないアプローチがもたらすメリットを見逃しています。これらはビジネスとアートの両方で強みとなり得る要素なのです。」

こうした視点から見れば、キャリアのパスは直線的である必要はないことがわかります。むしろ、新たな道を模索し、試行錯誤を繰り返すことで、自分自身をより深く理解し、真に満足のいくキャリアと人生を築くことができるのです。 「やめる」という選択は、新たな可能性を開くための一つの道具であり、それ自体が失敗や後退を意味するわけではありません。それは、自己成長のための戦略的なステップとなり得ます。

ピボットとやめるは同義だと考えよう!

何かをやめたことがもたらす結末がすべて悲劇であるわけではない。それは時として、どこか別の場所今よりも良い場所、あるいは悪い場所へ向かうための途中駅にすぎない。なぜなら、すべてのものは、絶え間なく変化しているから。しかし、これだけははっきり言える。それは、今とは違う場所である。(ジュリア・ケラー)

「やめる」という言葉は失敗、挫折、後退といった否定的な意味合いを感じさせるかもしれません。しかし、「やめる」ことは、あくまで選択肢の一つであり、それを適切に活用することで、個人やビジネスの成長に大いに寄与します。

私たちは、やめることを避ける傾向があります。その原因は多くの場合、他者から失敗とみなされるからです。しかし、この見方は変えていかなければなりません。なぜなら、「やめること」を戦略的に取り入れ、創造的に活用すれば、滞ってしまったキャリアを再び軌道に戻したり、新たなビジネスを発展させることが可能になるからです。

「クイット」と「ピボット」は、表面上は違うように見えますが、実は同じ意味を持つことがあります。クイットは一つの道をやめること、ピボットは新しい方向へと舵を切ることを意味します。これらを戦略的に組み合わせて利用することで、新たな可能性が開かれることでしょう。

多くの人々が辞めることが最善だと知りつつも、なかなかその一歩を踏み出せずに現状に固執してしまいます。この固執が彼らを不幸へと導いてしまうのです。そんな無益な苦痛を続けて過ごすよりも、新たな方向へと進むことが、本当の幸せへの鍵なのかもしれません。

「やめる」ことは最終手段ではなく、新たなスタートの一歩です。それを戦略的に行うことで、人生はより良い方向へと進むことができます。次の選択が何であれ、その背後には、ピボット(方向転換)の可能性があります。これを思い出し、適切に行動すれば、新たなステージが待っていることでしょう。

私も何度もピボットすることで、自分の働き方の幅を広げることができました。今までのキャリアに少しづつ新たなことをチャレンジすることで、広告会社をやめ著者、社外取締役、大学の特任教授になれました。著者が指摘するように新たなステージはピボットから始まるのです。


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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