伝説のファンドマネージャー・ピーター・リンチの投資法とは?伝説の7大投資家の書評

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伝説の7大投資家 リバモア・ソロス・ロジャーズ・フィッシャー・リンチ・バフェット・グレアム
桑原晃弥
角川新書

本書の要約

伝説のファンドマネージャーの成功の秘訣は素人の視点を忘れなかったことです。リンチは自ら率先して企業の業績や市場の動向などを注意深く観察し、その情報を駆使して投資判断を行っていました。「自分で調べ、自分で理解し、自分で納得する」スタイルで、マゼラン・ファンドは大きな成長を遂げたのです。

伝説のファンドマネージャー、ピーター・リンチの強みとは?

株のことを知りたいなら、大きな証券取引所の次に良いのはゴルフ場である。(ピーター・リンチ)

伝説のファンドマネージャーのピーター・リンチは、キャディをしながら多くの投資家と接する機会がありました。若かったリンチは彼らからさまざまな投資の秘訣を聞き、経験を積み重ねました。自ら思考し、投資を続けの結果、リンチは成功した株式投資家になれたのです。

株式投資において成功するためには、情報収集と分析が重要です。リンチはキャディをしながら、投資家たちがどのように情報を収集し、分析しているのかを見聞きしました。彼らは企業の業績や市場の動向などを注意深く観察し、その情報を駆使して投資判断を行っていったのです。彼はこの投資スタイルを実践することで、1977年に1800万ドルに過ぎなかったフィデリティ・マゼラン・ファンドの運用資産を彼が退職する1990年までに140億ドルにまで育て上げたのです。

ピーター・リンチは、株式投資においてアマチュアがプロと同等、あるいはそれ以上に成功する可能性があると確信していました。その理由の一つが、「アマチュアの視点」です。彼によれば、アマチュア投資家は専門家のような先入観や制約に縛られていないため、新しい視点や洞察に到達する可能性が高いと指摘しています。

たとえば、一般の消費者として生活している中で、「この商品がすごく売れている」「このサービスは人気がある」といった直感的な観察をすることができます。これが、実は貴重な市場情報になることも多いのです。

一方で、専門家やアナリストはしばしば数値やデータに囚われ、大事な”人の感触”を見落としてしまう場合があります。 リンチは、自分自身のライフスタイルや観察からヒントを得る「地道な足跡調査」を重視していました。これは、企業の業績や市場動向、経済指標だけでなく、自分の日常や専門外の情報からも投資のヒントを見つけ出すという考え方です。

また、リンチは企業の「成長ストーリー」を重視しました。その企業が今後どのように成長していくのか、そのビジョンが明確であれば、株価もそれに続く可能性が高いと考えていました。 このように、リンチの投資スタイルは、単に数字やデータを解析するだけではなく、多角的に企業を評価し、その上で賢明な投資判断を下すというものでした。これはアマチュア投資家にも十分に応用可能な方法であり、リンチ自身が示したように、成功への一つの道と言えるでしょう。

本書で取り上げられている天才投資家のウォーレン・バフェットも「ウォール街は誤った投資判断と愚かな横並び意識の巣窟だ」と述べています。ある企業が株価を上げると、投資家たちはそれに追随し、株価が下がり始めると、誰もが慌てて売ろうとする傾向があります。このような集団心理の中では、独自の判断を貫くことは難しいでしょう。

しかし、株式投資の成功には、独自の視点と判断力が重要です。バフェットは、そのような状況から抜け出すために、ニューヨークを離れて遠いオマハを選択し、自身の投資活動に集中しました。彼は目の前の銘柄にのみ注力し、自分自身で考えることで大きな成功を収めました。

ピーター・リンチは、株式投資においても地道なフィールドワークが非常に重要だと強調していました。彼自身が実践していたように、関心のある企業に直接足を運び、情報を収集する方法は、単に報告書やデータに頼るよりも、より深い洞察を得られる可能性が高いです。

彼がフィデリティの本社で昼食会を開き、訪ねてくる企業関係者から直接情報を聞くスタイルは、その調査方法の一環でした。リンチは、これを通じて「見逃していることは何か」という観点で情報を収集していました。これは、リンチが広い視野で投資を考え、自分自身で情報を調査し、評価する重要性を強調している証拠です。

また、リンチがミーティングの最後によく投げかけていた質問、「ライバル社の中ではどこが最も脅威となるか?」は非常に示唆に富んでいます。この質問から、業界内で認識されている「脅威」となる企業を知ることで、その企業もまた投資対象として注目すべきかもしれないという洞察が得られるわけです。

このように、リンチの成功の秘訣は、彼自身が率先して多角的に情報を集め、その上で独自の判断を下す点にありました。その結果、マゼラン・ファンドは急成長を遂げ、多くの投資家に利益をもたらしました。

投資に必要なことは人間力!

株を実際に買う前には、その会社の魅力、成長性、弱点などを、もう一度2分間だけ自問自答してみるとよい。子どもにも理解してもらえるまでに理解がこなれていれば、その会社の株に対する投資準備は万全と言えるだろう。

ピーター・リンチの投資手法の一つに「分かりやすさ」と「簡潔さ」があります。彼のアプローチでは、投資対象となる企業を選ぶ際、まず自分自身でその会社を深く理解する努力を重ねました。この考え方は、私たちが普段、例えば家電を買う際に行うようなリサーチに近いものがあります。製品を購入する前に色々と調べ、自分がその製品に納得したら購入する、というシンプルなステップです。

リンチによれば、投資をする際に「新聞に載っていたから」「知人が勧めてくれたから」といった単純な理由でアクションを起こしてはいけません。そういった情報も参考の一つとはなりますが、最終的には自分自身がその企業や業界について理解し、納得した上で投資するべきです。

そして、その理解を元に「ストーリー」を作ります。リンチが言う「ストーリー」とは、その企業がどういったビジネスをしているのか、将来どうなる可能性があるのかといった、自分なりの簡潔で分かりやすい説明です。

このストーリー作りは、投資の成功において非常に重要なステップとされています。 短く言えば、リンチの投資の原則は「自分で調べ、自分で理解し、自分で納得する」です。それができたら、その企業に投資する決断を下す。この手法はプロでなくても簡単に実践できるもので、リンチ自身が常に強調している「アマチュアの視点」を大切にする方法とも言えるでしょう。

リンチの「成功するための第一のルール」は、「プロの言うことに惑わされないこと」です。彼の見解によれば、多くのアマチュア投資家は自らの頭をちょっとでも働かせれば、ウォール街のプロと同等またはそれ以上にうまく投資できると考えています。

プロのアドバイスに耳を傾けるのは一つの方法かもしれませんが、アマチュアが単純にプロの後を追うだけで成功するわけではないとリンチは指摘しています。なぜなら、プロが推奨するタイミングで株を買ったとしても、そのブームはすでに後半に差し掛かっている可能性が高いからです。プロはプロで儲けられるかもしれませんが、アマチュアにとってはリスクが高く、大きな利益を上げる可能性は低いです。

そのため、リンチはアマチュア投資家に、自分自身の強みと視点を活かすことを強く推奨しています。アマチュアは、日々の生活や仕事を通じて、プロよりも早く新しい投資チャンスに気づくことができると言います。医者ならば新薬、トラックドライバーならば輸送業界、主婦ならば小売業に対する独自の洞察を持っている可能性があります。

要するに、アマチュアとしての強みは、身の回りの情報から投資のヒントを得られる点にあります。これはプロにはない視点であり、しっかりと活用すれば非常に有用な投資判断が可能です。

株を買うときに、雑貨を買うときと同じくらいの努力をすればよいのである。

アマチュア投資家にとって、身近なところに意外と「将来の宝の山」が眠っていることも少なくありません。ウォール街が推奨する「宝」を追いかけるよりも、身近な場所での情報収集が結果的には大きなリターンを生む可能性があります。

私が投資をスタートした時にピーター・リンチの言葉に影響を受けました。当時上場したばかりのサイゼリヤを徹底的に研究し、ビジネスモデルの強さに惹かれ投資することで、リターンを得ることができました。何度もお店に通い、経営者のインタビューや財務諸表を読み、自ら考え投資を決めたのが成功の秘訣であることを思い出しました。

株式投資は買い物と同じで、調査が非常に重要です。誰もが大切にしているお金を使うわけですから、投資する企業については最低限、家電製品を買う際と同様の労力で調査するべきです。会社に直接行って話を聞いたり、詳細を調べたりすることで、その企業が本当に投資する価値があるのかを確かめることができます。

慢性的に損をする者と成功者との分かれ目は、知識や下調べとともに性格的な心構えにある場合が多い。

株式投資においては、高度な数学のスキルや天才的なIQよりも、特定の性格や資質がより重要とされています。リンチは「小学校4年生くらいの算数の知識で十分」とまで言います。

求められるのは、冷静さ、忍耐、独自の調査をする意欲、失敗を受け入れる勇気、そしてパニックを無視する力などです。 例えば、株の価格が急落した際、冷静に対処できない人は、長期投資の計画を短期的な決断に置き換えてしまいがちです。頭で「持ち続けるべきだ」と理解していても、感情が揺れ動き、結果として売ってしまう。このようなふらつきや信念のなさが、最終的に大損を招く原因となるのです。

リンチは言います。「株式市場では、あやふやな意志の者はいけにえになり、強固な信念がないと生き残れない」と。だからこそ、投資を行う前に、自分自身の性格や資質をしっかりと理解し、それに基づいて行動することが非常に重要です。 投資はただの数字ゲームではなく、自分自身の心理や感情管理も大きな要素となるのです。だからこそ、自分を知り、自分をコントロールする能力が求められるのです。

確かに、ビジネスの世界は常に変化しています。環境、競争、技術、顧客のニーズなど、多くの要素が絶えず変わるため、企業自体も変わり続けています。このため、ピーター・リンチが指摘するように、一度「良い企業」と判断したからといって、その評価が永遠に変わらないわけではありません。

リンチは「数カ月おきに会社に関するストーリーを再点検してみるとよい」とアドバイスしています。具体的には、四半期ごとの財務報告を見たり、お店や商品の現状を実際に確かめたりすることが重要です。このように時折、投資先企業の状況を確認し、何らかの新しい変化が起きていないか注意深く観察することで、投資家は長期的に成功する可能性が高まるのです。

株価を毎日チェックする必要はありませんが、投資している企業がどのように進化しているのか、周期的に確認する習慣は非常に大切です。理解できないままに投資を続けるのはリスキーです。企業がどのように動いているのか把握することで、その企業に対する信念を維持、または必要な調整を行うことができます。この姿勢は投資家だけでなく、すべてのビジネスパーソンに欠かせぬスキルなのです。

本書で紹介されている偉大な投資家は最初から成功しているわけではありません。ウォーレン・バフェットジム・ロジャースなどは非常に幼い時期に小さなビジネスをスタートし、お金を稼ぎながら投資に目覚めます。ビジネスを学び、投資の経験を積み重ねることで成功者となっています。 


 

 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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