FUTURE READY デジタル変革成功への4つの道筋(ピーター・ウェイル, ステファニー・L・ウォーナー他)の書評

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FUTURE READY デジタル変革成功への4つの道筋
ピーター・ウェイル, ステファニー・L・ウォーナー他
日経BP 日本経済新聞出版

本書の要約

フューチャーレディ企業は、顧客との強固な関係を築き、高い満足度とコスト削減を同時に実現するイノベーションを実現できます。商品を売り込むのではなく、顧客ニーズに応えることを目的にすることで、顧客体験をアップできます。パーパスを浸透させ、4つの変革経路をとることで企業は飛躍的に成長できます。

デジタル変革で成功するフューチャーレディ企業とは何か?

フューチャーレディ企業は全体の22%を占める。フューチャーレディ企業はトップパフォーマーであり、売上高成長率は業界平均を17.3ポイント、純利益率は14ポイント上回る。(ピーター・ウェイル, ステファニー・L・ウォーナー他)

近年、デジタル技術の発展により、ビジネスの世界でも様々な変革が起こっています。顧客体験の向上や業務効率化など、これらの施策を推進することが、企業の将来的な成長にとって非常に重要となっています。そして、そのような取り組みを行っている企業をフューチャーレディ企業と著者らは呼んでいます。

フューチャーレディ企業になることは、会社全体の持続可能な成長に向けた取り組みであり、顧客、従業員、パートナー、そして社会全体のためになります。顧客にとっては、よりスムーズで素早いサービスを提供できるようになり、顧客体験が向上します。

従業員にとっては、業務効率化によって、より生産的な作業ができるようになります。これにより、時間やエネルギーを節約し、より創造的な仕事に取り組むことができるようになります。

著者らはデジタルによってビジネス変革を実行する企業を、次の2つの目標を同時に掲げる企業だと定義します。 ・スピードアップのためにデジタル技術やその実践的活用手法を用いる。  
・プロセスの標準化・自動化によってコストを削減し、データや業務プロセス、テクノロジーを再利用し、生産性向上が見込める領域を見極める。  

デジタルによってビジネス変革を実行するフューチャーレディ企業は、デジタル技術やその実践的活用法を取り入れて、新サービスや新商品の開発、顧客との関係を深める方法の発見、新たなビジネスモデルや収入源の創出といったイノベーションを実現します。彼らは最初からデジタルツールとデジタルアプローチの活用を前提としています。

フューチャーレディ企業は顧客体験をアップしながら、同時に業務効率も高めることで、組織を強くできます。

フューチャーレディ企業は顧客と強固な関係を築き、高い満足度の提供とコスト削減を同時に達成するイノベーションを実現できる。こうした企業の多くは、商品を売り込むことよりも顧客のニーズに応えることを目的にしており、顧客はどのサービス提供チャネルを選んでも優れた体験を期待できる。業務オペレーションの観点では組織的な強みとしてモジュール化された業務プロセスと俊敏な実行力を持ち、データは戦略的資産として共有され、社内で必要とする者が誰でもアクセスできる状態にある。

●イノベーションとコスト削減を同時に実現
●素晴らしい顧客体験
●モジュール化とアジャイル
●柔軟なパートナリング
●データは戦略的資産

また、フューチャーレディ企業は、社会全体にとってもプラスの影響を与えることができます。例えば、デジタル技術を活用することで、エネルギーや資源の効率的な使用が可能になり、環境に優しい取り組みが進むことが期待されます。

リーダーたちは、フューチャーレディ企業を目指す際に、顧客や従業員の声を聞くことが重要です。顧客が何を求めているか、従業員がどのような業務改善を望んでいるか、これらのフィードバックを取り入れることで、より効果的な施策が生まれることがあります。

さらに、フューチャーレディ企業になるためには、リスクを取りながら新しい取り組みを行うことも必要です。デジタル技術は急速に進化しているため、リーダーはこれまでのやり方にとらわれず、柔軟な発想が求められます。

経営者にとって、フューチャーレディ企業になることは、競争力を維持するためにも必要不可欠なことと言えます。著者らはフューチャーレディ企業になるためのジャーニーを明らかにしています。

フューチャーレディ企業へのジャーニー

●力強い組織の「パーパス(存在意義ごを掲げ意識を高める”自社のパーパスを従業員、管理職、取締役、パートナーに明確に伝え、フューチャーレディへの変革の方向を示します。デジタルビジネス変革を会社全体に行き渡らせることは容易ではなく、強力なパーパスを示すことでジャーニーに参加する意義を全員に理解してもらうことが可能になります。

●変革経路にコミットする以下の”4つの変革経路のうちーつを選びます。戦略によっては複数の経路を選ぶ場合もあります。どの経路を選んだのかを社内に周知し、すべての従業員が同じように理解して、同じ言葉で変革経路を語れる共通言語を作るようにします。
①産業化先行アプローチ
自社の強みを生かしてプラットフォームを構築するには時間がかかるため、デジタル化を進めることが重要です。クラウドコンピューティングやAPIなど、最新のテクノロジーを採用し、より優れたソリューションアーキテクチャーを導入することで、組織の生産性を向上させることができます。

②顧客志向先行アプローチ
顧客体験が競合に比べ劣っているなら、このアプローチを最優先すべきです。顧客を感動させることを最大の目標とし、新サービスを開発したり、UI/UXの改善をはかります。イノベーションを起こし、顧客体験を改善することで、売上アップにつながります。

③段階的アプローチ
変革の焦点を顧客体験の向上から業務オペレーション改善へ、そして再び顧客体験の向上へと交互に切り替えながら、フューチャーレディに向けて着実に前進します。

④新組織創設アプローチ  
変革経路4が選ばれるのは、既存の企業を変革することが困難な場合、あるいは、成功するにはフューチャーレディな組織であることが必須な場合になります。この経路は、顧客基盤、人材、文化、プロセス、システムを最初からフューチャーレディになるように作れることがメリットになります。

●爆発的変化に備える”デジタルビジネス変革の際に、必ず発生する課題を見越して事前に準備します。
・意思決定権限の変更
・プラットフォーム思考の確立
・新たな働き方
・組織体制の外科手術

●以下の3種類の価値を継続的に創出、獲得、測定します。
・価値を積み上げる”業務オペレーション価値・・・コスト削減、効率化、スピードの向上
・顧客からの価値・・・顧客からの収入の増加、顧客の定着化、ロイヤリティの向上)
・エコシステムからの価値・・・参加するエコシステムの売り上げ向上、パートナー連携からの新たな価値の獲得)

この3つの中では、顧客からの価値が最も重要であり、エコシステムからの価値が次に重要であるとされています。しかし、業務オペレーションからの価値も重要であり、デジタルビジネスの基盤となっているため、長期的な成長に向けて不可欠なものであることが強調されています。

3つの価値をすべて獲得し、相乗効果を生かすことができれば、企業はブランド、信頼、時価総額といった総合的な長期的企業価値を生み出すことができるとされています。つまり、顧客やエコシステムからの価値を創出し、同時に業務オペレーションを最適化することで、企業の成長を促進し、競争優位性を高めることができると考えられています。

●組織能力を構築する”フューチャーレディ企業が共通して持つ、価値創出につながる以下の能力を構築します。
□業務オペレーションからの価値を創出するためのフューチャーレディ組織能力
・モジュール志向、オープン、アジャイルになる。
・両利きになることを追求する。

□顧客から価値を創出するためのフューチャーレディ能力
・複数商品・サービスをまたいで素晴らしい顧客体験を提供する。
・パーパス志向になる。(フューチャーレディの旅路を照らす北極星)

□エコシステムから価値を創出するためのフューチャーレディ能力
・エコシステムのリーダーまたは参加者になる。
・ダイナミックかつデジタルのパートナーシップを推進する。

□価値を創出するための基礎的なフューチャーレディ能力
・データを戦略的資産として扱う
・適切な人材を育成し、定着させる。
・個人とチームの行動を会社のパーパスにリンクさせる。
・スピーディな学習を企業全体で促進する。

フューチャーレディ企業になるためには、単にデジタル技術を導入するだけでは不十分です。デジタル技術を活用することで得られるメリットは多岐にわたりますが、それを最大限に生かすためには、組織全体での意識改革や文化の変革が必要となります。

そのためには、経営者が率先して取り組むことが重要です。経営者がデジタル技術の活用に積極的であれば、組織内の他のメンバーもその重要性を理解し、共に取り組むことができます。また、リスクを取りながら新しい取り組みに挑戦することも、経営者の重要な役割の一になります。フューチャーレディ企業になるためには、強力なリーダーシップが不可欠なのです。



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