ピーター・ティールの成功する投資法とは?ピーター・ティール 世界を手にした「反逆の起業家」の野望の書評

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ピーター・ティール 世界を手にした「反逆の起業家」の野望
トーマス・ラッポルト
飛鳥新社

本書の要約

投資家は長期視点で未来の独占企業を見つける必要があります。デジタル・プラットフォームのビジネスは「勝者ひとり勝ち」になります。プロプライエタリ・テクノロジー、ネットワーク効果、規模の経済、ブランディングという4つの要素をみたしそうなベンチャー企業を探しましょう。

ピーター・ティールの投資法とは何か?

誰も相手にしていない価値ある企業はどれだろう?(ピーター・ティール)

ピーター・ティール 世界を手にした「反逆の起業家」の野望書評を続けます。ティールは起業したペイパルをイーベイに売却後フェイスブックやリンクトインをなどのベンチャーに投資し、成功を手に入れます。その後、いくつかの投資ファンドを立ち上げ、現在は投資家として活動しています。

ティールはスタートアップやベンチャーから「特別な企業」を見つけるために、以下の質問を繰り返します。
1、何に価値があるのか?
2、自分には何ができるか?
3、他の誰もしないことは何だろう? 

ティールによれば、すぐれた企業には3つの段階があると言います。
①価値を創造する。
②長く市場にとどまり、必要とされている。
③創造する剰余価値の一部を資本に転化できる状態にある。  

ティールは企業価値を正しく評価するために、「PEGレシオ」を用います。PERを利益率で割るこの指標を使うことで、株式を成長値で評価できます。PEGレシオが1倍以下だと、その企業は実際の価値よりも過小評価されていることになり、1倍を超えると過大評価されています。ティールはPEGレシオが1以下の企業に注目すべきだと述べています。  

時間の経過とともに成長率は低下しますが、アマゾンのような例外があります。巨大な売上を上げているにも関わらず、アマゾンはいまだに平均を上回る割合で成長しています。アマゾンはキャッシュフローを画期的な新事業に投資し、絶えず新たな成長源を開拓しています。

多くのテクノロジー企業は当初は損失を出します。ベンチャー企業の最初の数年は成長率が割引率よりも高いので、本質的な企業価値はかなり後から現れてきます。一般的には企業価値の3分の2は10年から15年後にようやく生じるようになります。この事実を認識しているティールは、短期ではなく超長期投資を行なっています。

超長期的な投資家のティールは、多くの人はスタートアップをあまりに短期的に考えすぎていると指摘します。 はるか先の企業収益を読むには、時間という要因が重要になります。重要なのは事業の長期性と恒常性なのです。企業に投資する際には、その企業の継続性を意識する必要があります。

実際、上場企業の生存競争は熾烈で、データ調査会社のCBインサイツによれば、この15年間で、米国の代表的な株価指数S&P500を構成する500銘柄のうち、52パーセントがインデックスから消えています。1955年には500社の平均寿命が61年だったのに対し、2015年にはわずか17年まで下がっています。大企業といえどもイノベーションがなければ、マーケットから支持されなくなり、その姿を消してしまうのです

ティールが重視する4つの要素

完全競争においてはどの企業も利益を出せない。利益が発生すると、新しい企業が市場に参入し、その利益をさらっていく。独占はその逆だ。独占者は市場そのものを「所有」する。(トーマス・ラッポルト)

世界企業価値ランキングの上位6社のうち、アップル、アルファベット(グーグル)、マイクロソフト、フェイスブックブック、アマゾンの5社がテクノロジー企業です。この5社に共通しているのは、いずれも独占企業だということです。

すぐれたテクノロジー企業は、ティールによれば、3段階のプロセスで成立します。
①まず新しい市場を創造、あるいは発見する。
②この市場を独占する。
③独占を強化する。

まず大切なのは、出発点となる市場の適正サイズを見つけ出すことです。小さすぎる市場では、顧客を獲得できませんし、大きな市場には巨大なライバルが存在します。

成功する企業は。市場のすき間を探し、マーケット・リーダーとしての地位を確立し、少しずつ影響圏を拡大します。ある一定の大きさに達すると、ネットワーク効果とスケールメリットが生じ、やがてブランドを構築できます。

オンライン書店としてスタートしたアマゾンは、自社のプラットフォームで徐々に別の小売分野を開拓していきました。いまでは世界中のすべての納入可能な商品を揃えるところまできています。

あるプラットフォームがマーケット・リーダーにのし上がると、大半のユーザーはそのプラットフォームに集中し、ネットワーク効果が生じます。多くの人がそのプラットフォームを使うことで、他者もそれを使うようになりますし、関連する企業も集まってきます。

デジタル・プラットフォームのビジネスは「勝者ひとり勝ち」になります。一企業が市場を支配するためには、プロプライエタリ・テクノロジー、ネットワーク効果、規模の経済、ブランディングという4つの要素を少なくとも部分的にみたす必要があります。

■プロプライエタリ・テクノロジー
プロプライエタリ・テクノロジーとは、独自開発した専有テクノロジーのこと。そのテクノロジーは競合テクノロジーと比べて圧倒的に強い立場にあり、市場に広く深く根づいています。マイクロソフトのOS、アップルのiOS、グーグルのアンドロイドなどがこれに当たります。

■ネットワーク効果
アマゾン、フェイスブック、 リンクトイン、ペイパルのようなすぐれたデジタル・プラットフォーム事業者は、そのプラットフォームの魅力によってさらに多くのユーザーを獲得します。ユーザーが増えることによってプラットフォームはいっそう魅力を増し、よりよいものを提供できるようになります。新しいユーザーが増えるごとにネットワークの付加価値はアップします。

■規模の経済
規模の経済は、固定費が高く、限界費用が低い場合に作用しはじめます。アマゾンはより大きな成長によってさらに利益率が上がり、それを再投資することで、成長が加速します。アマゾンはプライス・リーダーであり、強力な価格決定力も持っていることで、競合への優位性を発揮しています。

■ブランディング
本物のブランドを構築することで、独占はより強まります。

アップルはティールにとって現在、最大のテクノロジー独占企業です。ハードウェアとソフトウェアからなるテクノロジーを幅広く組み合わせ、顧客を獲得しています。アップルは完全なバリューチェーンを形成しています。アップルではロイヤルティの高い顧客と、自社プラットフォームのために新しいアプリとソフトウェアを開発する開発者が強く結びついています。同社はアップルというブランドに高いお金を支払う顧客を多く抱えています。

ティールは独占企業を好みますが、ニッチ市場でマーケットを開拓している第2のペイパルやリンクトインを探すことも可能です。彼の投資スタイルを真似ることで、新たな偉大な企業を見つけることも可能になります。まだ、誰も見つけていない未来の成長企業を見つけるためのヒントが随所に紹介されています。


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