弱い紐帯の理論の新たな解釈。

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80’s エイティーズ ある80年代の物語
橘玲
幻冬舎

この記事の要約

新しい情報や価値ある機会は、親しい関係よりも疎遠な関係(弱い紐帯)から得られることが多いとされています。弱いつながりを通じての紹介は、期待以上の成果をもたらすことがあり、その結果、紹介者の評価が上がることがあるのです。リスクとリターンの観点から、弱いつながりを活用することは賢明な選択と言えます。

マーク・グラノヴェッターの「弱い紐帯の強み」とは?

「弱い紐帯の強み」とは、米国の社会学者マーク・グラノヴェッターが提唱した社会的ネットワークに関する仮説です。この仮説によれば、新規性の高い価値ある情報は、親しい関係にある人々(強い紐帯)よりも、疎遠な関係にある人々(弱い紐帯)からもたらされる可能性が高いとされています。この「弱い紐帯の強み」の理論は、1973年にマーク・グラノヴェッターによって発表されました。

彼は社会的成功においてコネがどの程度有効なのかを調査しました。彼はマサチューセッツ州ニュートンのホワイトカラーのビジネスマン(男性の専門職、技術者、管理職283人)に対して、現在の仕事に就くまでの経緯を尋ねました。その結果、新聞の求人広告や民間の紹介機関を利用したり、直接履歴書を送った人を除くと、56%の人が知り合いを通じて仕事を見つけていたことが分かりました。

さらに、「知り合いの実態」についての質問を行ったところ、55.6%の人が「ときどき会うだけ」と回答し、28%の人が「めったに会わない」と回答しました。頻繁に会う「友人」から仕事を紹介してもらった人はわずか7%に過ぎませんでした。

この理論は、新しい情報やイノベーションの推進において、異なる背景や視点を持つ人々との疎遠な関係を活かすことの重要性を示しています。例えば、親しい関係にある人々は、同じような情報や価値観を共有していることが多いため、新しい情報や視点を得ることが難しい場合があります。

一方、疎遠な関係にある人々は、異なる背景や視点を持っているため、新しい情報や視点を提供してくれる可能性が高いとされています。 この「弱い紐帯の強み」の考え方は、企業の組織づくりやイノベーションの推進にも影響を与えています。組織内での多様性を活かすことで、新しい情報や視点を取り入れ、より高い創造性やイノベーションを実現することが期待されています。

実際、年齢や世代を超えた交流も非常に価値があります。若い世代は新しい技術やトレンドに敏感であり、経験豊富な年上の世代は過去の経験や知識を持っています。私は大学で教えるようになり、彼らのネットワークから新たな知見や人脈を得ています。

異なる視点や知識を組み合わせることで、新しいアイディアや解決策を生み出すことができるようになります。 異なるコミュニティとの交流は、人間関係のネットワークを広げるだけでなく、自分自身の成長や学びにも繋がります。異なる背景や価値観を持つ人々とのコミュニケーションを通じて、自分の考え方や視点を広げ、柔軟な思考を持つことができるようになります。

弱い紐帯理論の新たな解釈

グラノヴエッターの調査結果は、日本と同様にアメリカでもコネが重要視される社会であることが示され、大きな反響を呼びました。彼は強いつながりのある友人は似たような仕事をしていることが多いため、転職の相談をされても同じような仕事しか紹介できないと説明しています。

一方で、弱い紐帯しかない(疎遠な)友人は、自分とは異なる分野の仕事を持っている可能性が高く、さまざまな仕事の情報を提供できると述べています。 つまり、コネが社会的成功にどの程度有効かは、強いつながりと弱いつながりの友人の違いによっても影響を受けることが分かります。

強いつながりの友人は限られた情報しか持っていないため、同じような仕事の紹介にとどまる傾向があります。一方、弱いつながりの友人は異なる分野の情報を持っているため、多様な仕事の情報を提供できる可能性が高いのです。

著者の橘令氏はここに新たな解釈を加えます。

強いつながり(コネ)で強引な人事をすると、その結果に責任を取らなくてはならない。(橘玲)

強いつながりを利用して人事を行う場合、その結果には責任を持たなければならないと橘氏は指摘します。例えば、親しい友人や知人を推薦すると、その人が期待に応えられなかった場合、推薦者としての信用が失われるリスクがあります。

しかし、弱いつながりを通じての紹介が期待以上の結果をもたらすと、紹介者の評価は確実に上がります。このリスクとリターンの観点から、弱いつながりを活用することは、採用だけでなく、ビジネスの多くの側面での情報収集やネットワーキングにも有効です。

弱いつながりを大切にすることで、異なる視点や知識を取り入れることが可能となり、ビジネスの成長やイノベーションの源泉となります。 特定の業界や分野に限らず、異なる背景を持つ人々との交流は、新しいアイディアや機会を生む可能性があります。

特に、経験豊富な年上の世代は、若い世代とのつながりを深めるべきです。彼らにチャンスを与えることで、彼らの可能性を広げられます。同時に、若者たちの新しい視点やアイディアを受け入れることで、ビジネスやキャリアに新しい風を吹き込むことができるようになります。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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