創発を生み出すエマージェンス思考が重要な理由。平井孝志氏の人生は図で考える 後半生の時間を最大化する思考法の書評

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人生は図で考える 後半生の時間を最大化する思考法
平井孝志
朝日新聞出版

人生は図で考える 後半生の時間を最大化する思考法 (平井孝志)の要約

計画的な思考とエマージェンス思考を組み合わせることで、常に変化する現実に柔軟に適応し、人生を有利に進めることができます。このアプローチにより、新しいアイデアや視点を見つけ出す能力が高まり、変化に応じて自分を調整する力を強化します。これによって、よいチャンスに巡り会えるようになります。

人生後半戦にエマージェンス思考が必要な理由

計画を信じすぎるな。平たく言えば、そうなります。計画に偶然の入り込む余地を十分に与え、新しい何かを感知する姿勢も大切にしていれば、偶然が必然となる可能性が高まるということです。偶然という語を「創発」に置き換えてもいいでしょう。結局のところ、計画と創発はフィフティフィフティぐらいがちょうど良いのです。(平井孝志)

計画を立てることは大切ですが、あまりにも計画に固執しすぎると、柔軟性が失われる可能性があります。計画には偶然の要素も含めることが重要です。偶然とは、予期せぬ出来事や偶発的なチャンスのことです。計画には常に偶然が介在することを認識し、その余地を与えることで、新たな可能性や展望を見いだすことができるのです。

創発を生み出す「エマージェンス思考」は、新しい発想や現象の出現に注目する考え方であり、偶然の出来事を価値ある機会に変えることを重んじます。このアプローチでは、予期せぬ出来事を楽しむことが奨励され、それを自らの利益に変換することができます。

計画的な思考とエマージェンス思考を融合させることにより、変わりゆく現実に柔軟に対応し、人生の流れを有利に進めることが可能になります。ビジネスの世界では、多くの人がPDCAサイクルに慣れ親しんでいますが、エマージェンス思考はそれとは異なり、特定の手法がないことが挑戦となることもあります。

その解決策として、著者の平井孝志氏は創発のための「SSTプロセス」を提案します。
・S(Sensing)=状況を感知する
・S(Seizing)=機会を捉える
・T(Transforming)=状況を変革する

エマージェンス思考を採用することで、常に変化する環境に対応する柔軟性を身につけ、新たなアイデアや視点を発見することができるようになります。自分を臨機応変に変える力を持つことで、チャンスと出会う確率を高めます。

エマージェンス思考により、予測不能な状況にも対応できる能力が身につきます。例えば、ビジネスの世界では競争が激化し、市場環境も急速に変化しています。このような状況下では、常に新しいアイデアやアプローチが求められます。

その際、既存の枠組みにとらわれず、柔軟に対応できる力によって、解決策が見つかるようになります。さらに、自らの視点や思考を変化させることで、イノベーションのタネを見つけることができます。

私はスタンフォードのジョン,D.クランボルツの計画的偶発性理論によって、人生がよりよくなったので、平井氏のエマージェンス思考に共感を覚えました。

新しい試みに挑戦し、積極的に行動することから、私は予期せぬ結果が得られることを学びました。人生では予測不可能な出来事がしばしばあり、これを受け入れることが大切です。 そういった不確実性がある中でも、行動によって新たな機会を発見することが可能です。

私自身の経験からも、積極的な行動が成功に結びつくことがあります。人生での偶然は避けがたく、それらを活かすことに躊躇する必要はありません。実際、偶然によって思いもよらないチャンスがもたらされることもあります。

21の思考法を取り入れ、人生後半戦を楽しもう!

本質的な課題解決のためには、二項対立であるトレード・オフを一旦見直し、トレード・オンを創ろうとするトレード・オン思考が有効になるのです。

トレードオフの一般的な認識を超えて、課題解決にアプローチする際には、トレードオン思考が極めて効果的です。この思考法は、従来の二項対立を超える解決策を模索する際に、逆算の発想を用いることを重視します。例えば、

コンビニ業界では、生産者中心ではなく消費者中心からの逆算を実践しています。これは、商品を単なる在庫としてではなく、消費者にとっての必需品として捉えることで、新たな解決策を見出すことができるというアイデアに基づいています。つまり、何が売れるかを考えて在庫を確保するという方法です。

同様に、トヨタでは製造工程を見直し、後工程で求められるものを前工程で生産するという逆算の思考を採用しています。 これらの事例からわかるように、トレードオン思考は、単に問題を解決する以上の価値を生み出します。

これは、現状の枠組みにとらわれず、将来に向けてより良い選択肢を創出するための発想の転換を促します。消費者のニーズを深く理解し、それに応えることで、ビジネスや日常生活においても新たな可能性を開くことができるのです。

トレードオン思考は日常生活で非常に有益であり、選択の質を向上させ、結果的に人生の後半を豊かにします。この思考法を鍛えるための3つの主要な手段は以下の通りです。
①アウトプット先行化
日々の生活で忙しくとも、未来の自身の価値を高めるだけに焦点を当てず、アウトプットを重視することが重要です。これは、インプットした情報をアウトプットによって実践的に活用し、生活の質を向上させるべきであるという考えに基づいています。

私が毎日更新しているこの書評ブログは、このアウトプット中心の姿勢の一例です。読書という日常のインプットをアウトプットの機会に変えることで、知識の幅と深さが増し、結果としてクライアントへの貢献度も高まりました。このアウトプット先行の習慣は、ビジネスにも肯定的な影響をもたらしています。

②課題の抽象化
問題やテーマの抽象度を高めることで、その本質を捉え、Win-Winの関係を生み出す習慣を身につけること。これにより、より大きな視野で問題解決を図り、トレードオンの関係を築くことができます。

③視野の拡大化
問題に対する視野を広げ、様々な角度からのアプローチを試みることで、新たな解決策を見出し、より豊かな人生を実現することが目指されます。 これらの手段を通じて、自己の目標を宣言する習慣を含め、日常生活において意味のあるアウトプットを増やし、それによって質の高いインプットを促すことができます。

その結果、仕事を含めた日々の生活において、より有益な成果を生み出す「トレードオン」の状況を実現することができるようになります。

ナウ・アンド・ゼン思考を取り入れ、今ここに集中すること=フロー体験により、効果的に結果を出すとともに、幸福感を増大させることもできるようになります。人生の後半では、これまでに蓄積した知識や経験を活かしながら、自分が本当にやりたいことに情熱を注ぐことが特に重要です。このホロニック思考は、過去と現在の経験を統合し、将来に向けて意味のある行動を取ることを促してくれます。

人生後半戦の時間を幸せにするために、本書の以下の21の思考を取り入れ、自分の人生の棚卸しをしてみましょう。

1 ホロ二ック思考
これまで蓄積した土台(部分)を統合し、人生を味わう

2 バックキャスティング思考
今の延長線上ではなく、人生の終点から振り返って考える

3 オンリー・ワン思考
自分自身の「判断軸」を持ち、無限競争を避ける

4 コミュ二ティー思考
「周り」との関係性の中にこそ自分があることを理解する

5 フェーズ思考
人生の「相転移」を受け入れ、その素晴らしさを感じ取る

6 センスメイキング思考
能動的に人生の意味付けを行い、「考動」する

7 ストラテジー思考
希少資源の「時間」を本当にやりたいことに配分する

8 パーソナル・アンカー思考
自分の強み・興味の根幹の上に人生を創っていく

9 ビッグ・ピクチャー思考
相転移に向け、ありたい姿を含む「おでん図」を描く

10 プランニング思考
ありたい姿へのボトルネックを把握し、PDCAを廻す

11 エマージェンス思考
思考新たな行動によって出会う偶然を必然に変えていく

12 セルフ・エフィカシー思考
自分が役立っているという感覚を大事にする

13 モデレイト思考
ちょうど好い加減で良しとする気持ちを持つ

14 トレード・オン思考
本当に「したい」ことと大切な「べき」の両立を目指す

15 ナラティブ思考
「明らめる」ことから出発し「自分らしく」へとつなげていく

16 ヒストリー思考
これまでの蓄積や経験を大切にし、そこから出発する

17 サブジェクティブ思考
客観性を包み込んだ主観性を大切にする姿勢を持つ

18 ヒア・アンド・ナウ思考
「今、ここ」に集中し、一所懸命に生きる

19 ライク・ディスライク思考
好き・嫌いで判断し、心から好きなことを選ぶ

20 シンプル・ルール思考
あくまでも単純な行動原理に従う

21 ディシペイティブ思考
「散逸系」としての生命をまっとうする

人生後半の戦略をつくり、これまでに積み重ねてきた知識や経験、そして偶然の力を上手く活用することで、より良い人生を送れるようになります。著者の21の思考法を取り入れ、実践しましょう。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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