企業価値最大化経営 (澤拓磨)の書評

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企業価値最大化経営
澤拓磨
日本経済新聞出版

企業価値最大化経営 (澤拓磨)の要約

企業価値最大化経営は、自社単独の意志やM&Aを通じて、持続的な成長と価値最大化を目指す戦略的なアプローチです。厳格なデューディリジェンス、目標設定、組織体制の構築、結果の分析とフィードバック、そして再挑戦という一連のプロセスを通じて、企業は持続的に進化し続けます。

企業価値最大化経営とは何か?

CEO視点の企業価値最大化経営は、自社単独の意志に基づく計画を策定し、企業価値最大化を実現していく。この計画内では、M&Aを行うことも想定されるため、M&A当事者視点の企業価値最大化経営はCEO視点の企業価値最大化経営に包含される。 (澤拓磨)

企業価値最大化経営は、企業が持続的に成長し、その価値を最大化するための戦略的なアプローチです。この手法は、ゴーイングコンサーン(企業が継続的に事業を行う前提)を前提とし、3~5年単位で実行されます。

企業価値最大化経営を実現するためには、企業のリーダーシップと戦略的な意思決定が不可欠です。著者は、その中でも特に重要な2つのキードライバーとして「CEO」と「M&A」を挙げています。

CEO(最高経営責任者)は、企業の最上級経営者として、企業価値最大化において中心的な役割を果たします。CEOのリーダーシップとビジョンは、企業の方向性を決定し、成長戦略を推進する上で非常に重要です。

CEOは、自社単独の意志と経営資源に基づく企業価値最大化経営を、以下のステップで実行することで、自社の企業価値を高めることができます。
①厳格なセルフデュー・ディリジェンス(DD)を実施しフルポテンシャルを算定する
CEOが主体となり、企業の現状を詳細に分析し、潜在的な成長可能性(フルポテンシャル)を評価します。これには財務状況、市場環境、競争力の評価などが含まれます。

②野心的な挑戦と信念を伴う目標企業価値を決断
CEOは、現実的でありながらも野心的な目標を設定し、中期経営計画を策定します。この計画には、具体的な目標、達成手段、タイムラインが含まれます。

③組織をつくり目標企業価値を実現する
設定された目標を達成するための組織体制を整備し、必要なリソースを配分します。リーダーシップの強化や人材育成もこの段階で重要となります。

④結果と原因から学び、責任を果たし進化する
経営活動の結果を定期的に評価し、その原因を分析します。このプロセスを通じて、戦略の見直しや改善を図り、組織全体の進化を促します。

⑤「現時点」の実力に相応しい企業価値最大化経営に再挑戦する
上記のサイクルを繰り返し、現時点での企業の実力に基づいた新たな目標を設定し、継続的に挑戦し続けます。

企業価値を迅速に拡大するための強力な手段です。適切なM&A戦略を実行することで、企業は市場シェアを拡大し、競争力を強化することができます。
①M&A戦略の決断
買手、売手、統合・分割主体の各CEOが協力して、M&A戦略を決定します。対象企業の選定や買収条件の交渉が行われます。

②ディールメイキングの実行
M&Aの成功を確信し、取引を実行します。詳細なデューディリジェンスやシナジー効果の計画が重要です。

③組織体制の構築
統合後の新しい組織を構築し、シナジー効果を最大限に引き出すための施策を実行します。文化の統合やプロセスの再編成が含まれます。

④結果と原因の学習
統合後の成果を評価し、その原因を分析します。得られた知見を基に、さらに価値を最大化するための最適なオーナーを決定します。

⑤再挑戦
新たなオーナーの下で、企業価値最大化経営に再挑戦します。これにより、企業は継続的に成長し進化します。 この一連のプロセスを繰り返すことで、企業は持続的な成長と価値最大化を実現します。

著者は、企業価値最大化経営を実現するためには、実行力の向上と「読み(分析)・描き(構想)・そろばん(計画)」の能力の底上げが不可欠だと指摘します。これらの能力を強化することで、企業は持続的な成長と競争力強化を実現し、長期的に成功を収めることができます。経営者やリーダーが率先してこれらの能力向上に取り組むことで、企業全体が一体となって企業価値最大化を目指すことができるでしょう。

他の追随を許さない基本力とコア・コンピタンスが重要な理由

基本力があればビジョンの実現力が高まりあらゆる経営に対応可能な応用力を得られるためである。基本力とは、一言で述べれば「実戦の要諦と自社が何者 であるか(実力・真価・アイデンティティ)に基づく、経営環境創出(外部環境の変遷に内部環境を最適化。広義のマーケティング「顧客創造と顧客貢献をし続ける仕組み」)とCEOアジェンダ突破(広義のイノベーション「顧客創造と顧客貢献をし続ける新しい仕組み」)により、未来の企業価値最大化経営を動的にコントロールし続ける力」のことだ。

経営とは、単に組織を運営することではなく、持続的に結果を出し続ける行動を指します。企業の優位性やブランディングによって成長は加速し、より高い目標を達成することが可能となります。しかし、経営においては計画通りに物事が進むことはほとんどありません。常に動的なリスクと対峙しながら、状況に応じた軌道修正が求められます。このような環境下で重要となるのが「基本力」です。 

基本力とは、経営の基盤となる力であり、これがあれば何度でも経営を構想しなおすことができます。想定外の事態に直面したときでも、基本力があれば冷静に対応し、過去に経験したことのない現象にも応用力を発揮して対処することが可能です。この基本力は、組織のすべてのレベルで培われるべきものであり、日常の業務やトレーニングを通じて強化されることが求められます。 

ポジショニングとは、戦略の源泉となる「差別化」された事業の位置取りを指します。これは、競争市場において企業がどのように独自性を発揮し、顧客に対してどのような価値を提供するかを明確にするものです。ポジショニングを強化するためには、以下の3つの観点からの分析が必要です。
・コア・コンピタンスと価値創造ストーリー
自社の強みや独自の技術、知識を最大限に活用し、顧客に対して価値を提供するためのストーリーを構築します。これにより、他社にはない独自の価値を提供し続けることができます。

・企業戦略(全社戦略)
全社的な視点での戦略を策定し、各事業部門が一貫性を持って行動することが重要です。これにより、全体としてのシナジー効果を最大化し、企業全体の成長を促進します。

・競争戦略
市場環境や競合他社の動向を分析し、自社がどのように競争優位性を維持し、強化するかを検討します。差別化された事業の位置取りを確立し、競争力を高めるための具体的な施策を講じます。 これらの観点からポジショニングを分析し、適合性(フィット)を確認することで、企業は持続的な成長を実現できます。

差別化された事業の位置取りがしっかりと確立されていることで、外部環境の変化にも柔軟に対応し、競争市場において強力な存在感を発揮することが可能となります。

経営においては、事業の適合性や競争戦略の見直しが欠かせません。特に競合を日本企業に限定せず、アジアや世界の企業にまで視野を広げることで、自社の事業ポートフォリオに差別化された事業が存在しないことや、コア・コンピタンスが欠けていることが判明する場合もあります。

経営資源には、有形資本(財務資本・物的資本)と無形資本(人的資本・時間資本・知的資本・情報資本・社会資本・自然資本)があります。これらの資源を同業他社やベンチマーク企業と比較することで、自社の競争優位性を検証できます。

経営資源を企業価値に変換する能力には2つの要素があります。
・ダイナミック・ケイパビリティ
環境変化に対応し、企業価値を最大化するために経営資源を活用し、自己変革を進める能力です。

・オーディナリー・ケイパビリティ
既存の資源をより効率的・効果的に運用し、利益を最大化する能力です。これはトヨタ生産方式やGEのリーン・シックスシグマなど、オペレーショナル・エクセレンスを代表とする方法論に基づいています。

企業文化とは、企業固有の意志や行動様式であり、理念・社是・社訓などを発信・体現し続けることで育まれます。この企業文化は、以下の観点から構築されます。
・ビジョン・・・未来のあるべき姿。
・パーパス・・・ビジョンを実現する目的や存在意義。
・ウェイ・・・ビジョンをどのように実現するかの解。

具体的にはミッション、バリューズ、アクションガイドラインなどが含まれます。 ブランド戦略の重要性 企業名はブランド戦略を意識して検討することが基本です。

親会社のコーポレートブランドを活かし、全グループ会社に同一のブランド名を社名として付与し、単一ブランドで事業を展開するのがマスターブランド戦略になります。  親会社とは異なるブランド名を各グループ会社に付与し、同一カテゴリー内で複数ブランドを展開するマルチブランド戦略になります。

マスターブランド戦略とマルチブランド戦略の良い点を取り入れ、各社の事業特性に応じてブランドを選択をするのがサブブランド戦略になります。 このようにして、企業は自己の強みを最大限に活用し、競争力を高めることが求められます。

企業価値創造において、各企業の状況に応じた戦略とリーダーシップが鍵となります。以下に、具体的なケースを示します。
・企業価値最大化経営の恒常化と第二創業のリーダーシップ
創業初期企業では、企業価値最大化のために、創業初期の3年間で生存可能な状態を確立し、基本力とコア・コンピタンスを構築することが重要です。

・事業ポートフォリオ戦略の重要性
時価総額100億円から1000億円を目指す企業では、事業ポートフォリオ戦略が成否を分けます。各事業が競争で勝利するための組織戦略、実行の仕組み、リーダーシップを最適化し、時価総額1000億円を目指します。

・中長期ビジョンによる新時代への突入
株価低迷・成長鈍化企業は、中長期ビジョンを策定し、その実現のための経営戦略とリーダーシップを通じて、企業の再成長を目指します。

・オーナー家のビジョンと決断
地方同族企業では、オーナー家のビジョンの構想と決断が重要です。事業のスケールとスコープを慎重に判断しながら、ビジョンを実現するためのリーダーシップを発揮します。

・集中的な成果導出
ファンド傘下企業では、CEOアジェンダの突破が鍵となります。投資前の事業計画検証、PMI仮説、企業価値最大化経営、新ベストオーナーへの譲渡プロセス全体でリーダーシップを発揮し、ファンドリターンとステークホルダーの満足を実現します。

・CEOのリーダーシップ
業界再編下にある企業では、CEOのリーダーシップが重要です。中長期ビジョンを構想し、経営戦略を準備して業界再編シナリオに対応します。

・全社共通企業理念
コングロマリット企業は、全社共通企業理念を基盤とし、経営戦略や持株会社CEOのリーダーシップを最適化します。

・CEOの世界観・人生観に基づく企業理念
グローバルトップ企業では、CEOの世界観・人生観に基づく企業理念が重要です。経営戦略とリーダーシップを通じて、企業理念を体現し続けます。

・次の100年ビジョン
創業100年企業は、次の100年ビジョンの構想と伝承が鍵です。超長期・長期の企業価値最大化経営を構想し、実践します。

・基本の確実な実践
再生企業では、基本の確実な実践が重要です。奇をてらわず、当たり前のことを確実に行います。

ハイディ日高や島津製作所、アップルなどをケースに企業価値創造の提案を行っており、読み応えがありました。 今日はこのブログのテーマであるアップルを取り上げます。

今後のアップルの企業価値創造とは?

(アップルは)時代を創るリーダーシップが鍵。そして、リーダーシップの源泉である長期ビジョンと経営戦略を構想・実行し長期ビジョンを実現するとともに、15年間で新時代の顔となるCEOを育成する。

アップルは力強い利益成長を続け、株主資本比率も改善しています。同社の競争優位な事業が成長を牽引し、時代を創るリーダーシップがCEOアジェンダとされています。

CEOアジェンダ1
・時代を創るリーダーシップ CEOメッセージ
リーダーシップの源泉はCEOが発信するキーメッセージとコミュニケーションにあります。ジョブズ氏はその本質を体現し、未来を創る力を示しました。CEOメッセージは未来の方向性や最新ニュース、過去の実績を含め、単純明快なストーリーとして伝える必要があります。

・CEOの時間配分
リーダーシップのトータルコーディネートを決めるために、CEOの時間配分が重要です。CEOはアジェンダの突破に9割、その他の業務に1割の時間を割り当てることが理想です。

・リーダーシップの分業・連携
CEOがアジェンダに集中できるよう、リーダーシップチームとの分業・連携を進めるべきです。

CEOアジェンダ2
・長期ビジョンと経営戦略 CEOの時代観
長期ビジョンと経営戦略はCEOの時代観に基づき構想されます。外部環境は「真理と本質の時代」、内部環境は「時代を創る時代」となります。外部環境には政治、経済、社会、技術の変化が含まれ、内部環境には同社の歴史的な成長過程が含まれます。

・長期ビジョン
「情報社会の最適化を通じ世界のWell-beingに貢献する」ことを目指し、既存市場のシェア拡大、未参入市場への拡張、新規プロダクト・サービスの開発を進めます。事業ビジョンを実現するための企業戦略・競争戦略を構想し、目標企業価値を設定します。

・経営戦略
長期ビジョンの実現に向けて、コア・コンピタンスを維持・強化しながら、事業ポートフォリオを最適化し、新市場開拓と新プロダクト・サービス開発に注力します。

CEOアジェンダ3
新時代の顔となるCEOの育成 育成の理由: 同社は世界トップ企業であり、新時代の顔となるCEOが必要です。ビジョンを示し、時代をリードする使命があります。
・育成要件
新時代の顔となるCEOは、同社経営の論理を理解し、経営をリードできる能力が求められます。

・育成方法15年間で以下のステップを経てCEOを育成します。
1、候補者の発掘と絞り込み(FY2024)
2、主要セグメントでの経験(FY2024-2026)
3、ファンクションヘッド経験(FY2027-2029)
4、COO経験(FY2030-2034)
5、共同CEO経験(FY2035-2038)
6、単独CEOとして独り立ち(FY2039以降)

アップルは、革新とデザイン、強力なブランド価値、エコシステムの構築を通じて企業価値を創造しています。CEOアジェンダは、時代を創るリーダーシップ、長期ビジョンと経営戦略、新時代のCEO育成の3つのポイントで構成され、同社の持続的成長を支えると著者は言います。

新刊 最強Appleフレームワーク: ジョブズを失っても、成長し続ける 最高・堅実モデル!でアップルの成長戦略をフレームワークを使って、解説しています。

新刊 最強Appleフレームワーク: ジョブズを失っても、成長し続ける 最高・堅実モデル!

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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