鬼時短―電通で「残業60%減、成果はアップ」を実現した8鉄則(小柳はじめ)の書評

brown analog clock

鬼時短―電通で「残業60%減、成果はアップ」を実現した8鉄則
小柳はじめ
東洋経済新報社

鬼時短―電通で「残業60%減、成果はアップ」を実現した8鉄則の要約

時短を徹底することは、企業の成功に不可欠な方針です。時間を短縮することができれば、企業の未来に好影響を与えます。この「鬼時短」の方法を採用し、効率と生産性を高め、職場の環境を改善することで、顧客や従業員から選ばれる企業としての位置を築くことができます。

時短が経営者と現場で働く人にとって重要な理由

長時間労働をいとわない人の中には、その働き方自体が「プライド」になり、成長が喜びとなっている人も、驚くほどたくさんいるのです。(小柳はじめ)

時短は、現代のビジネス環境において非常に重要な要素です。時短を実現できない企業は、競争力を失い、人材や顧客、資本、そして社会からの信頼を損なうリスクがあります。

時短の実施は、企業の運営や成長に重大な影響を与えます。適切な時短策を採用することで、効率性と生産性が向上し、従業員のワークライフバランスが改善されます。これは、従業員のモチベーションの向上と企業全体のパフォーマンスの向上につながると期待されます。

しかし、多くの企業が時短勤務をうまく導入できていない現状があります。特に、リーダーから現場への責任の押し付けや、従業員自身が過剰な残業をプライドの問題と捉えてしまっていることが大きな原因です。

かつて私が広告業界での深夜勤務を誇りに思っていた時期がありましたが、今振り返ると、その習慣は健康にも生産性にも悪影響を与えていたと気づきます。このような状況は、業界特有の文化によるものですが、各業界の負の文化を変えなければ、人の採用や定着が難しくなります。

時短勤務を実現するには、企業の上層部と従業員の思考を大きく変える必要があり、これは容易ではありません。電通は残業が多いことで有名な企業でしたが、経営陣と著者の取り組みが現場を動かし、残業時間がなんと60%も減少することに成功したと言います。

著者は以下の3つのアドバイスによって、時短ができると述べています。
①時短は「社員のムダな動きをやめさせる」ことではない。
②時短は「会社が社員に強いているムダをなくす」ことである。 
③時短は「会社から社員への最高のもてなし(リスペクト)」である。
この3つの原則を徹底することで、企業文化も変わり始めます。

「鬼時短」という用語は、時短を積極的に、かつ徹底的に実践する姿勢を指します。鬼時短の実施は、企業が持続可能な競争力を維持し、好まれる企業であり続けるための鍵です。これは単に業務の効率化に留まらず、社会的信頼と評価を獲得するための重要なステップでもあります。

電通はブラックな環境を放置し、自殺者を出すことで、社会から批判されましたが、この取り組みによって、徐々に信頼を取り戻しています。

時短には社長のリーダーシップが欠かせぬ理由

電通を人が集まらないような会社、人が逃げていくような会社にするわけにいかない。(山本敏博)

電通の山本敏博社長は、働き方改革(雇う側に立てば、働き方改革)をすべての業務に優先すると宣言し、本気度を社員に現したと言います。繰り返し繰り返し、メッセージを発信し、会社を変える努力を行なったと言います。
このパッションがあったからこそ、電通の改革は軌道に乗ったのです。

著者は時短をするための8つの鉄則を明らかにしています。
鉄則1 社長は「私欲」を訴えなければ伝わらない
鉄則2 現場が抵抗する「本当の理由」を理解しよう
鉄則3 「現場の主」は社長が自分で口説かなくてはいけない
鉄則4 現場の「すべて」を肯定しよう
鉄則5 トラブル処理は「すべて」「自分で」引き受ける覚悟をもつ
鉄則6 改革の「本質的価値」を語ってはいけない
鉄則7 「結果」で納得を得るしかない
鉄則8 「内部統制」という言い訳を封じよう

時短にもっとも重要なことはリーダーシップであると著者は言います。社長は以下の3つのメッセージを繰り返し、発信すべきです。
①具体的な施策を、現場に丸投げせず、トップダウンで指示することを約束する
②その施策は現場が「少しだけがんばればできること」に限定することも約束する
③トップダウンの期間には期限があることを明示する

時短の成果は「業務にかかる時間が何分短縮できたか」と数字で明確に計ることができます。そのため、改革の進捗状況も、停滞状況も、目に見える形で提示できます。KPIを設定しやすいということです。

時間削減の成果を明確に示すことで、現場の理解と納得を得ます。組織や個人には、困難すぎず、適切な努力で達成できる目標を設定します。達成した際には、その成功を継続的に体験させ、これにより「チャレンジすれば実現可能」というポジティブな雰囲気を醸成します。

最終目標に向けて、複数の段階的なKPIを設定し、それぞれのKPIを達成することで連続した成功体験を積み重ねていきます。小さな成功体験を積み上げることで、組織の働き方は変わっていくのです。最近の若者は大きな目標には恐怖を感じるので、目標設定を細くするという著者のアドバイスには共感を覚えました。

従業員にとって魅力的な労働環境を提供することにより、企業は人材の定着を図り、優れた才能を引きつけることが可能になります。 社員が働きやすい環境をつくることで、イノベーションを起こせるようになります。

そのため、時短の徹底は、企業にとって重要な戦略と言えます。企業が時短を実現できるか否かは、その将来に大きな影響を及ぼします。

いま産業界で始まったのは、たんなる人材不足ではない。空前の「反・ブラック社会」「ホワイトネス至上社会」が到来したということです。そんないまだからこそ、トップのあなたが、ご自身の「正直でホワイトな私欲」として、いままでの伝統的経営を自己批判する最大の好機でもある。そしてもしかしたら、最後のチャンスかもしれません。 ただし、いくらなんでも突然に過去を否定するのは唐突すぎる。そこで、最良の「方便」が、《鬼時短》なのです!

鬼時短の考え方を取り入れることで、職場の効率と生産性を高めることは、顧客と従業員に選ばれる企業になるための重要なステップです。ホワイトな環境を実現できなければ、企業の未来は危うくなります。

電通の「鬼十則」はよく知られていますが、その鬼の角の部分をホワイトにした表紙のセンスに脱帽しました『トップであるあなたがやるべきことは、「改革の鬼」と化した自分の姿をメンバーに見せること』という著者のメッセージをすべてのリーダーが取り入れれば、間違いなく日本の生産性は高まるはずです。「社員が採用できない、すぐにやめる」という悩みを抱えている社長におすすめの一冊です。

 

 

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