「消費者ニーズ」の解像度を高める(犬飼江梨子)の書評

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「消費者ニーズ」の解像度を高める
犬飼江梨子
フォレスト出版

「消費者ニーズ」の解像度を高める(犬飼江梨子)の要約

消費者が言葉にしない、あるいは言葉にできない深層のニーズを見つけ出すことで、真に求められる製品やサービスを生み出す土台が築かれます。成功する商品開発には、消費者の深い理解や感情分析、明確な価値提案、そして開発者の感性が不可欠です。これらを統合し、長く愛される商品を創出します。

ニーズ・ファインディング・メソッドで消費者の真のニーズを探ろう!

自分自身の感覚と消費者のニーズが一致したとき、商品は深みを増し、消費者の心にしっかりと響くものになるでしょう。消費者に愛される商品をつくり出すためには、「自分自身も消費者の一員である」という意識を持つことが大切です。(犬飼江梨子)

消費者の本質的なニーズを捉えることは、マーケティングにおいて極めて重要な要素です。消費者心理分析の専門家の犬飼江梨子氏は、20年以上にわたるキャリアの中で独自のメソッドを駆使し、企業の製品開発や売上向上を支援してきました。その手法と実績が、本書を通じて具体的かつ詳細に語られています。

表面的なデータや顕在化した要望だけでは、消費者の本当のニーズをつかむことはできません。そこで重要となるのが、観察調査とデプスインタビューという手法です。

観察調査では、消費者自身に日々の行動を記録してもらいます。この過程で、普段は意識されない不便や不満が浮き彫りになります。

デプスインタビューでは、消費者との対話を通じて深層心理に迫ります。単なる質問ではなく、消費者の日常生活や価値観にまで踏み込み、潜在的な欲求や期待を引き出すことを目的とします。この手法により、消費者の購買動機や製品に求める真の価値を掘り下げることが可能になります。

著者が提案する「ニーズ・ファインディング・メソッド」は、消費者の深層ニーズを見つけ、商品やサービスの成功につなげるための強力な手法です。このメソッドは、次の5つの原則で構成されています。それぞれの原則が、ニーズの発見から商品化、そして販売予測までの一連のプロセスをサポートします。

1. デプスインサイトクエスチョン
最初の原則は、消費者インタビューを通じて深層心理を引き出すための質問技法です。通常のアンケートでは、消費者が自覚している表面的な情報しか得られません。しかし、デプスインサイトクエスチョンを使えば、消費者が言葉にできない潜在的なニーズを掘り起こすことが可能です。

この手法は以下の4つの質問設計から成り立っています。
・生活文脈で聞く
消費者の日常生活を具体的に掘り下げる。

・プロセス感情を言語化する
特定の行動や選択時に感じる感情を引き出す。

・上位概念を問う
その行動の背景にある価値観や目的を探る。

・メタファーを聞く
抽象的なイメージを通して消費者の深層心理を表現させる。

これにより、競合が見逃しているインサイトを発見し、差別化された商品開発が可能になります。

2. 4セグメント・ブラッシュアップ
消費者のニーズを「変化・刺激」「安定・調和」「自己実現」「つながり」という4つのタイプに分類する手法です。この分類により、ターゲット層がどのような商品やサービスを求めているのかが明確になります。

例えば、「自己実現ニーズ」を持つ顧客には、自分の成長や成功をサポートする商品が有効です。一方、「つながりニーズ」に焦点を当てると、コミュニケーションや絆を強化するサービスが求められます。この分類に基づき、より具体的で効果的なマーケティング戦略を立案できます。

3. ニーズ・ヴィジュアライズ
発見したニーズを整理し、視覚的にわかりやすく構造化する手法です。「商品価値構造マップ」を作成することで、自社商品の独自の強み(USP)を明確にします。 このマップを用いると、消費者にとっての商品の価値を再確認でき、競合との差別化ポイントが一目でわかります。これにより、新たな商品開発やマーケティング施策を効率的に進めることが可能になります。

4. ニーズ・フォーカス・コンセプトメイク
特定のニーズに焦点を当て、それを「売れるコンセプト」に変換する技術です。消費者の未充足なニーズを具体的な商品やサービスに落とし込むことで、魅力的で競争力のある商品を生み出します。 例えば、ある食品メーカーが「忙しい朝に栄養を摂りたい」というニーズに基づいて商品開発を行った結果、ヒット商品を生み出したケースがあります。このように、ニーズを具体的な形にすることが成功への鍵となります。

5. 販売期待値シミュレート
最後の原則は、商品コンセプトの市場での成功確率をシミュレーションする手法です。「この商品は売れるのか?」をデータに基づいて予測し、リスクを最小限に抑えます。 市場ボリュームを見積もったり、コンセプトテストを実施したりして、販売の見通しを具体化します。必要に応じて商品やマーケティング戦略を調整することで、商品発売後の成功率を高めることができます。

これら5つの原則を活用することで、消費者の深層ニーズを捉え、企業が確実に成果を上げるための道筋を構築することが可能です。ニーズ・ファインディング・メソッドは、単なるマーケティングの手法にとどまらず、ビジネス全体の競争力を高める強力なツールと言えるでしょう。

顧客のWOW体験によって、ブランド価値がアップする!

情緒価値を生み出すためには、特別なことをする必要はありません。しかし、消費者が期待する一歩先の「WOW体験」を提供することが大切です。  

商品開発において最も重要なのは、消費者の心に深く響く価値を生み出すことです。単なる機能的な解決策を提供するだけではなく、消費者の感情に訴えかけ、その生活に新たな豊かさをもたらす商品が求められています。この目標を達成するためには、まずターゲットとする消費者の深い理解が欠かせません。商品が誰のために作られるのか、その消費者が抱える課題や理想とする生活像を明確に把握することが、商品開発の出発点となります。

消費者のニーズは3層の構造を持っています。最も表層にあるのが具体的な商品やサービスへの欲求、いわゆる「HAVEニーズ」です。その上には生活上の具体的な課題解決への欲求である「DOニーズ」が存在し、さらにその深層には理想の自分像や生き方への欲求、つまり「BEニーズ」が位置します。

この3層すべてを包括的に理解し、それぞれのニーズに応える価値を提供することが重要です。 特に注目すべきは、すでにその商品を活用しているヘビーユーザーの体験です。彼らの行動を分析することで、商品がもたらす本質的な価値を明らかにし、その価値を他のセグメントにも拡大するヒントを得ることができます。

このプロセスを通じて、消費者の期待を超える商品体験を提供することが可能になります。 消費者の感情は、購買行動を決定する上で非常に重要な役割を果たします。喜び、期待、驚き、信頼といったポジティブな感情は、消費者が商品を選び続ける理由になります。

一方で、不安や不満といったネガティブな感情も、商品の購入を躊躇させる要因となります。商品との出会いから購入、使用、さらには使用後に至るまで、消費者が感じる感情をトータルで追跡することで、購買行動の背景にある真のニーズを理解することができます。

強力な商品を開発するためには、消費者の課題を明確にし、それに対する具体的な解決策を提示する必要があります。さらに、その解決策を実現する独自の機能や特徴を持たせることで、商品は市場での独自性を確立します。これにより、消費者は「この商品は自分のためにある」と直感的に感じることができます。

また、単なる機能的な満足を超えた「情緒価値」の提供も重要です。消費者が商品を手にしたときに感じる驚きや感動、いわゆる「WOW体験」を創出することで、その商品は消費者の生活に欠かせない存在となり、長期的な支持を得ることができます。このような体験を提供するためには、消費者が期待している以上の価値を提供することが求められます。

さらに、長期的に成功する商品開発には、人間の本質的な欲求に対応すること、時代の変化に柔軟に適応すること、ブランドの価値観を維持しつつ進化させること、そして継続的に消費者を理解し続けることが必要です。これらの要素を総合的に考慮し、バランスを取ることで、持続的に価値を提供できる商品が生まれます。

最後に、商品開発者自身の感性も重要な役割を果たします。開発者自身も一人の消費者としての視点を持ちながら、共感される価値を追求することが、革新的な商品を生み出す原動力となります。このように、自分自身の感覚と消費者のニーズを融合させることで、真に新しい価値を提供する商品を生み出すことが可能になるのです。

成功する商品開発には、消費者の深い理解、感情の分析、明確な価値提案、そして開発者自身の感性が必要不可欠です。これらの要素を組み合わせることで、消費者の心に響き、長く愛される商品を創り出すことができます。

これらの手法を駆使することで、単なる製品の改良にとどまらず、企業が消費者に対して提供すべき価値そのものを再定義することが可能となります。消費者が言葉にしない、あるいは言葉にできない深層のニーズを見つけ出すことで、真に求められる製品やサービスを生み出す土台が築かれます。

犬飼氏の実績が示すように、このプロセスは競争の激しい市場においても他社との差別化を実現し、持続的な成長をもたらす鍵となります。

最強Appleフレームワーク

 

 

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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