センスのよい考えには、「型」がある
佐藤真木, 阿佐見綾香
サンマーク出版
センスのよい考えには、「型」がある (佐藤真木, 阿佐見綾香)の要約
インサイトとは、人々の心の奥に隠れた本音や欲望を見つけ出し、それを的確な言葉で表現することです。日常の中で感じる違和感に目を向け、それがどんな常識から生まれているのかを深掘りすることで、共感を生む新たな発見が得られます。さらに、その発見に自分自身が腑に落ちる納得感を持ち、人間らしい視点を加えることで、初めて価値あるインサイトが完成します。
人々の心を動かす「インサイト」とはなにか?
相手自身も、自分では気づいていない「人を動かす隠れたホンネ」 それを、私たちは「インサイト」と呼んでいます。(佐藤真木, 阿佐見綾香)
私たちの身の回りには、数え切れないほどの商品やサービスが存在します。そのような環境の中で、人々の心を動かし、行動を促すためには、表面的なニーズを理解するだけでは不十分です。むしろ、人々の深層心理に潜む「言葉にできない想い」、すなわちインサイトを見出すことが重要だと電通の佐藤真木氏と阿佐見綾香氏は指摘します。
本書の冒頭のコカ・コーラの2001年の事例は、このインサイト思考の本質を見事に表しています。コカ・コーラは、他の飲み物とは違い、「理由もなく、急に無性に飲みたくなる」という特別な魅力を持っています。これをテーマに作られたのが、「No Reason(理由はない)」という広告で、商品の売上を大きく伸ばしました。
マーケターが注目したのは、データには表れないものの、多くの人が感じていた「コカ・コーラを無性に飲みたくなる」という感覚です。このような感覚こそが「インサイト」と呼ばれるもので、商品やサービスの本質的な魅力を引き出すヒントになります。
インサイトを見出すためには、時として従来の発想から離れ、問題の「裏側」から考えてみることが有効です。これは単なる視点の転換ではなく、相手の立場に深く入り込み、表現されていない願望や感情を理解しようとする試みです。 現代のビジネスにおいて「顧客目線」や「顧客起点」という言葉をよく耳にしますが、インサイト思考はそれらをさらに一歩進めた概念です。
表面的なニーズや要望を超えて、顧客自身も明確に意識していない「隠れたホンネ」を探り当てることを目指します。 このアプローチは、ビジネスの文脈に限らず、人生のあらゆる場面で活用できます。なぜなら、人間関係の根幹にあるのは常に「相手の気持ち」だからです。
相手が明確に表現できていない想いをマーケターが理解し、それに応えることができれば、より深い信頼関係を築くことができます。 インサイト思考の真価は、少ないリソースで大きな成果を生み出せる点にあります。人々の心の奥底にある本当の願いを理解し、それに応えるアイデアを提供できれば、自然と共感が生まれ、行動につながっていきます。これは、押し付けがましい宣伝や過度な説得とは異なる、より自然で効果的なアプローチと言えます。
結局のところ、ビジネスも人生も、すべては人と人との関係性の上に成り立っています。表面的な言葉や数字だけでなく、その背後にある感情や想いを理解することが、真の成功への鍵となるのです。インサイト思考は、そのための重要なツールとして、私たちの仕事や人生をより豊かなものにしてくれます。
機能するインサイトの作り方!
機能するインサイトには「5つの条件」がある。 ①聞き手の内面に気づかせ、ハッとさせる新たな発見や驚きがあるか? ②人の発想を拡げるインスピレーションを感じさせるか? ③自分が心から腑に落ちているか? ④1行で言い表せ、誰もが理解できる明確な言葉にできているか? ⑤人間らしさ・人間の本質があるか?
「インサイト」とは、データや表面的な情報では見えない「人々の心の奥底にある本音」を捉えることを意味します。このインサイトを活用することで、他にはない魅力や共感を引き出し、人々の心を動かすメッセージや製品を生み出すことができます。しかし、機能するインサイトには、いくつかの条件があると著者たちは言います。
まず第一に、インサイトは人の心を揺さぶる発見である必要があります。それは、相手に「ハッ」とさせる驚きや新たな気づきを与えるものです。
さらに、それが単なる発見にとどまらず、次のアイデアを引き出すインスピレーションとなり、発想を広げる力を持っていなければなりません。
そして何よりも大切なのは、自分自身がそのインサイトを心から納得し、腑に落ちていることです。そうでなければ、他の人に伝える説得力を持つことはできません。
また、複雑で曖昧な表現ではなく、誰もが理解できる簡潔で明確な言葉にする必要があります。最後に、インサイトには人間らしさが欠かせません。人間の本質に触れる深い共感を含むことで、初めて人々の心に届くのです。
インサイトを見つけるためのプロセスは、日常生活で感じる違和感に目を向けることから始まります。たとえば、「どうしてこれが気になるのだろう?」という感覚は、小さなサインです。その違和感の背後には、多くの場合、無意識に受け入れている「常識」が隠れています。
そして、その常識の裏には、人々の本音が潜んでいることが多いのです。この本音を見つけ出し、それを自分の言葉で表現することで、真に心に響くインサイトが生まれます。そして最後に、その言葉が多くの人に信じてもらえる形になれば、インサイトとして機能するのです。
インサイトを表現する方法の一つに「逆説モデル」というアプローチがあります。これは、世の中の常識や定説に対して、「実はそうではないのではないか?」という視点を投げかけるものです。
たとえば、「コカ・コーラを飲みたくなるのは暑いときやハンバーガーを食べているときだ」という常識に対し、「実は、理由もなく急に無性に飲みたくなる衝動を感じるのがコカ・コーラだ」という新しい仮説を提示することで、人々の心に新たな発見を与えます。
「インサイト」の探索は、あなたという人間にしか生み出せない「価値」を生み出せるのです。「合理的」であるよりも、ロジックやフレーム、AIにはできない、あなたという人間らしい「ひねり」を加えていくことが大事になる時代。「正しさ」を超える「真の正解」は、AIではなく、あなたの中にあり、それを引き出すのが「インサイト思考」です。
インサイトの探索は、単なる分析作業ではありません。それは、目の前の人の心の動きや、自分自身の感覚に向き合う、人間らしいアプローチです。合理性だけでは見つからない「真の正解」を探し出すためには、データだけに頼らず、自分自身の経験や視点を大切にすることが必要です。好きな場所を訪れたり、小説や映画に触れたり、友人や家族と語り合ったりする中で得られる小さな気づきこそ、インサイトの種となるのです。
日々の暮らしの中で感じる違和感や驚きを見逃さず、それを深掘りしていくことで、あなたにしか見つけられない「価値」を生み出せるでしょう。その価値が、人々の心を動かし、新たな可能性を切り開く鍵となるのです。
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