新しい働き方の戦略書: 短時間でしか働けない主婦が組織型テレワークであっという間に企業の生産性向上を実現
田中茂樹
時事通信

30秒でわかる本書の要点
結論: 企業の生産性向上は「採用」ではなく「業務の構造設計」で決まる。短時間しか働けない人材(主婦等)を戦力化できる「組織型テレワーク」の導入することで、属人化を排除し、生産性を高められる。
原因: 多くの企業が「人がいない」と嘆く真の原因は、労働力不足ではない。業務が特定の誰かに依存する「属人化」にあり、仕事の内容が可視化・分解されていないため、外部のリソースや短時間労働者を活用できない構造になっている。
対策: 全ての業務をフローチャート化・マニュアル化し、「誰が、何を、どの順で」行うかを徹底的に可視化すること。業務を「タスク単位」に切り出すことで、時間制約のある人材が活躍できる土壌を作り、社員をコア業務に集中させる。
本書の3行要約
「人が採れない」「誰かが辞めると現場が回らない」と悩む企業は多いですが、その真の原因は労働力不足ではなく、組織の「属人化」にあります。 本書が提示するのは、単なるテレワークの推奨ではありません。業務を極限まで分解・可視化し、属人性を排除することで、短時間しか働けない主婦層を最強の戦力に変える「組織型テレワーク」の圧倒的な実践論です。
おすすめしたい人
・深刻な採用難・早期離職に悩む中小企業の経営者・マネジャー
・テレワークを導入したが、生産性が上がらず「属人化」が加速した組織
・業務可視化やフローチャートで業務を改善したい経営者・マネジャー
・BPOやBPRを検討している企業
読書が得られるメリット
・「人に依存しない」業務フローの構築ステップが具体的にわかる。
・非効率な報酬体系から脱却し、生産性を最大化する「成果報酬型」のヒントを得られる。
・労働力減少時代でも持続可能な、次世代の組織運営モデルが理解できる。
Mamasan&Companyが実証する新しい働き方とな何か?
企業にとって何よりももったいないことは、「人材不足の世の中だから」 とあきらめてしまい、「新しい働き方」に気づいていないこと、新しい働き方を実践 し、企業を救う〝働き手の存在〞に気づいていない、ということです。(田中茂樹)
国内の労働力人口は年々減少し、多くの企業が採用難に直面しています。求人を出しても応募が集まらない。採用できたとしても、定着せず早期離職に至るケースが多く、現場のマネジャーは採用対応と業務管理の両立に疲弊しています。こうした人材確保の構造的な困難は、あらゆる業種に共通する経営課題となりつつあります。
私が社外取締役を務めているMamasan&Company(MAC)も、例外ではありませんでした。人口動態の変化や労働市場の変質に直面するなかで、当社は「働き方の構造設計」を抜本的に見直し、15年以上にわたって再現性のある運用モデルを構築してきました。
その取り組みを体系化したのが、新しい働き方の戦略書: 短時間でしか働けない主婦が組織型テレワークであっという間に企業の生産性向上を実現です。
著者の田中茂樹氏はMACの代表として、「時間的制約を持つ人材」——たとえば子育て中の主婦やフルタイム勤務が難しい在宅ワーカー——を、企業の生産性を支える戦力として活用する実践を先導してきました。
本書の根底にあるのは、「人がいないから現場が回らない」のではなく、「仕事の構造が可視化されていないから回らない」という認識です。
リモートワークの普及は、本来であれば働き方の自由度を高め、生産性の向上につながると期待されていました。しかし実際には、仕事の全体像が見えづらくなり、できる人にばかり業務が集中し、結果的に属人化が進んでしまうケースが多く見受けられます。
MACではこの現象を「リモートワークの罠」と呼び、問題は働く“場所”ではなく、仕事の“構造”にあると明確に位置づけています。 一般的に「リモートワークの課題」といえば、在宅勤務者の勤怠管理の難しさや、情報セキュリティ対策の甘さといった“運用上の問題”が取り上げられます。しかし、ここで言う「罠」はもっと根本的な話です。
それは、リモートワークやBPOの進展によって、これまで当然とされてきた組織構造や職務設計の前提が揺らいでいるという点にあります。 たとえば、オフィスで管理業務や資料作成を担ってきた、いわゆるホワイトカラー層。リモート下でも「必要」とされてきた彼らの役割が、実は“業務構造が整っていれば不要になり得る”という事実が浮き彫りになってきたのです。
つまり、「いままでのやり方で、リーダーが目の前にいて管理していた仕事」が、分解・可視化・マニュアル化されることで、遠隔の在宅ワーカーに代替可能であることが明らかになりつつあるのです。
これは単に人員配置の問題ではなく、ビジネスの構造そのものに対する問いかけです。「なぜその役割は必要なのか」「その仕事は誰がどこからでも担える形に設計できないのか」——リモートワークは、こうした問いを組織に突きつけてきています。
MACでは、こうした構造の見直しに早期から取り組み、リーダーの役割や中間管理層の機能そのものを「属人的管理」から「構造化された運用」に変えてきました。これこそが、テレワークを“制度”として定着させるために必要な視点であり、「単に場所を変える働き方改革」ではなく「業務を再設計する経営戦略」としての取り組みです。
では、その構造をいかに再設計するか。私たちの答えは、徹底した業務の可視化と工程分解です。私たちはすべての業務を、まずフローチャートで細かく分解し、それに対応するマニュアルを整備しています。
「誰が、何を、どの順番で、どこまで担当するのか」を明確に定義することで、仕事の進め方を標準化し、誰でも同じ品質で業務を遂行できるようにしているのです。これにより、特定のベテラン社員の“感覚”や“経験”に頼らずとも、組織として安定的に成果を出すことが可能になります。
この仕組みを支えているのが、現在4000件を超える業務プロセスIDの蓄積と、完全出来高制による報酬体系です。企業側はBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)として高品質な業務支援を受けることができ、働く側のママさんたちは、自宅にいながら効率よく、成果に応じた報酬を得られる——そんなwin-winの関係が成立しています。
一方で、多くの企業では今もなお、業務の多くが“属人的”に運用されています。つまり、担当者の頭の中にしか業務の進め方がなく、判断や手順が暗黙のうちに進んでいる。こうした状況では、特定の人に業務が集中し、その人がいなくなると仕事が止まってしまうリスクを常に抱えることになります。
本書では、このような状態を「属人化」と明確に定義しています。属人化は、単なる働き手不足ではなく、組織構造そのものに潜む問題です。人が辞めると業務が回らなくなる。引き継ぎがうまくいかない。現場責任者に過度な負担がのしかかり、疲弊する——。こうした状況は、個々の能力の問題ではなく、仕組みが整っていないことによって引き起こされています。
だからこそ、仕事の「見える化」と「仕組み化」が不可欠なのです。組織を支える仕事は、誰がやっても同じように進められる状態になってはじめて、安定した生産性と持続可能な働き方が実現されるのです。リーダーがこの新しい働き方を取り入れることで、企業の生産性を高められるようになります。
業務可視化とフローチャート、マニュアルが生産性を高める!
業務の中の曖昧さ、ムダを徹底的に排除し、業績に結 びつく作業のみを行うことで効率をアップさせるというのが、可視化の最大の目的で す。
MACの働き方の基本は、「徹底したムダ排除」「フローチャートありきの作業」「マニュアル重視」です。仕事をできるだけ細かく定義し、誰でも再現できるようにすることで、仕事を「人に依存させない」状態をつくることです。
そしてその状態を保つために必要なのが、もう一つの要素である報酬体系です。 私たちは、一般的な「時給」ではなく、作業に対する出来高——すなわち作業単価をベースにした完全成果報酬型を採用しています。
仕事を「時間」で測るのではなく、「成果」で測る。この考え方は、働く人にとっても納得感が高く、「短い時間でも、ちゃんと働けた実感がある」「評価がわかりやすく、やりがいにつながる」と多くのママワーカーが語っています。 効率化を突き詰めていくと、「時間に縛られず、成果だけに集中できる設計」が必要になります。
そこで私たちはママさんたちが開発したシンクライアントを活用し、端末にデータを残さず、すべての処理をクラウド側で一元管理する仕組みを整えています。これにより、セキュリティを担保しながらコストを徹底的に削減し、ムダを排除して、成果に最短距離で到達する働き方が実現されました。
そして、この働き方を体現しているのが、まさに「ママさん」たちです。彼女たちは制約があるからこそ、時間を無駄にしません。短時間でも最大限のパフォーマンスを出そうとする意識が高く、その成果は数字にも現れています。ある在宅ワーカーは「子どもが昼寝している1時間が勝負。でもその1時間で誰よりも集中して仕事ができる」と語ります。
このような働き方を“孤立させずに”継続するために、私たちは「COSMOS」という独自のコミュニケーション基盤を構築しました。これは単なる業務連絡ツールではなく、まるで“長屋の井戸端会議”のような感覚で使えるデジタル空間です。
COSMOSによる常時接続型のコミュニケーション設計は、単なる情報伝達の手段を超え、組織内の信頼関係を構築・維持するインフラとして機能しています。リモート環境下でも雑談や相談、共感といった非公式なやりとりが自然に交わされることで、心理的な安心感が生まれ、それが結果としてメンバーの定着率や継続率の向上につながっている点は注目すべき成果です。
このような取り組みは、クライアント各社からも高く評価されています。「担当が交代してもアウトプットの品質が変わらない」「業務ごとに設計と標準化が行き届いており、属人化が排除されている」といった声は、業務の可視化と仕組み化が高い精度で運用されているエビデンスとなっています。
これらにより、本部長や取締役といった経営中枢の業務までが在宅ワーカーによって担われるほど、「人ではなく仕組みで動く組織」が実現されています。
属人的な仕事のスタイルとは対極にある、「人に任せる」仕組みを構築 することが、コア業務に集中して業績を挙げ、企業存続に貢献するための重要なファクターです。
属人的な仕事のスタイルとは対極にある、「人に任せる」仕組みを構築することが、企業のコア業務への集中と業績向上、そして持続的な成長にとって不可欠です。業務の可視化を進め、ブルシットジョブを排除し、雑務は在宅ワーカーに任せ、社員は戦略立案などの中核業務に集中する。その役割分担が明確になれば、生産性は確実に上がります。
「人がいないから仕方がない」と嘆く前に、今こそ「どの仕事を誰に任せるか」という視点で、業務構造を根本から見直すべきタイミングです。
効率化の最大の目的は、曖昧さとムダを排除し、業績に直結する作業のみを抽出することです。前述したようにMACでは以下を実践しています。
・4,000件を超える業務プロセスIDの蓄積(メールを書く、メールを送信するなど業務ごとにタスクを細分化)
・「フローチャートありき」の徹底した再現性
・完全出来高制(成果報酬型)による納得感とコスト最適化
・独自基盤「COSMOS」によるデジタルな信頼関係の構築
本書が繰り返し強調するのは、「新しい働き方」はスローガンではなく、仕組みの問題だということです。すべての業務が「見える」「割り振れる」「計れる」状態になってこそ、誰がやっても成果が出せる働き方が実現します。そのうえでPDCAを継続的に回していくことで、制度と運用の進化が両立され、再現性ある生産性向上が可能になるのです。
今後ますます深刻になる人材確保の難題に直面する企業にとって、本質的に問うべきは「どれだけ採用できるか」だけではなく、「いかに業務の構造を再設計できるか」という視点です。
本書は、その構造改革に必要な考え方と実践手法を具体的に示しています。持続可能な組織運営を目指す経営者や現場のリーダーにぜひ読んでいただきたい一冊です。
















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