
書籍:AWE 心と人生を変える力 日常の神秘を科学する
著者:ダッカー・ケルトナー
出版社:ダイヤモンド社
ISBN-10 : 4478118655

【書評】『AWE 心と人生を変える力』——AI時代にこそ求められる「日常の神秘」と幸福の科学
私たちは今、かつてないほど効率と合理性が重視される社会を生きています。「タイパ(タイムパフォーマンス)」や「コスパ(コストパフォーマンス)」という言葉が日常的に使われ、ビジネスパーソンはいかに最短距離で正解にたどり着くかを求められ、評価される時代です。
さらに、生成AIが急速に進化し、論理的な推論や業務の最適化を瞬時にこなす現代において、人間が頭の中で論理的に導き出せる「正解」の価値は相対的に下がりつつあります。
では、これからの予測不可能で不確実な時代において、私たちの仕事や人生を本当に豊かにし、凡庸な結果から抜け出すブレークスルーを生み出してくれるものは何でしょうか。
今回ご紹介する『AWE 心と人生を変える力』(原題:AWE: The New Science of Everyday Wonder and How It Can Transform Your Life/ダッカー・ケルトナー著/ダイヤモンド社)は、その問いに対する一つの明確な、そして極めて科学的な答えを提示してくれます。
著者が20年にわたる幸福と感情に関する研究の末にたどり着いたのは、「AWE(オー=畏敬の念)」という感情がもたらす驚くべき変革の力でした。
本書は単なるスピリチュアルな自己啓発本ではありません。進化心理学、神経科学、社会心理学、さらには宗教思想や個人的体験を縦横無尽に横断しながら、AWEという感情を科学的に捉え直した決定版です。今回は、この本がなぜ今こそ読まれるべきなのか、そして私たちのキャリア形成、組織マネジメント、さらには日々の意思決定にどう活かせるのかを、深く紐解いていきます。
この記事でわかること
- 「AWE(畏敬の念)」の真の定義とは何か、そしてなぜ今、世界中で注目されているのか
- AWEが「幸福・健康・倫理性・創造性」を高めるトレーニング可能な社会的感情である理由
- 「生命の八つの不思議」を通じた、日常での具体的なAWEの見つけ方と実践法
- 文化、時代、人生の文脈によって変化する「広大さ」の多様性と受け止め方
- AI時代において、AWEが人類の協力を駆動する「感情インフラ」として機能する背景
30秒でわかる本書のポイント
【結論】:真の幸福や豊かな人生、そして創造性の源泉は、日常の中にある「AWE(自分の理解を超えたものへの畏敬の念)」を意識的に見つけ、育てることにあります。
【原因】:現代社会では、効率化や合理性、競争が重視されるあまり、多くの人が常に成果や評価を気にして生きています。その結果、自分自身への執着や他者との比較、将来への不安が強まり、視野が狭くなりがちです。肥大化したエゴは孤独感やストレスを生み出し、本来持っている創造性や好奇心、他者とのつながりを感じる力を弱めてしまいます。
【対策】: AWEを体験するために、特別なお金や時間は必要ありません。自然の風景、美しい音楽やアート、人の優しさ、歴史や文化に触れた瞬間など、日常には「生命の八つの不思議」が数多く存在します。そうした出来事に意識を向け、1日数分でも心を動かされる時間を持つことで、自分中心の視点から離れ、より大きな世界とのつながりを感じられるようになります。
本書の要約
幸せについて20年にわたり研究と指導を重ねてきた心理学者ダッカー・ケルトナーは、現代人が見失いがちな幸福の鍵を「AWE(畏敬の念)」に見出しました。
著者はAWEを、自分なりの世界理解を超えていくような、広大な何かの存在と共にある時に生まれる感情として定義しています。この感情が湧き起こるには予期せぬ出来事や未知なるものとの遭遇が欠かせず、私たちを確実で容易なものから引き離し、神秘と未知へと向かわせる力を持っています。
本書の特徴は、AWEを一過性の感情としてではなく、意識的なトレーニングによって誰もが育てていける「社会的感情」として捉え直している点にあります。
生まれ持った気質や偶然の体験に左右されるものではなく、日々の小さな実践を積み重ねることで身につけられるスキルのようなものとして位置づけられており、畏敬の念を日常的に培うことで、個人の幸福度や健康状態が高まるだけでなく、倫理的な判断力や他者への思いやり、さらには創造性までもが引き出されていくと著者は説きます。
本書は、単なる個人の幸福追求にとどまらず、人類の協力・共同体・文化創造を裏側から支えてきた「感情インフラ」としてAWEを読み解こうとする、スケールの大きな試みだと言えるでしょう。
興味深いのは、AWEが文脈に応じて数え切れないほど多様な姿で立ち現れる点です。生まれたばかりの子どもが受け取る親からの深い愛、人生の終焉において感じる命の大きな拡張、ある時代における人類の暴力やそれに対する抵抗など、何を「広大さ」と感じるかは状況によって異なります。
著者はこうしたAWEの源泉を生命の「八つの不思議」として整理しており、①美徳、②集合的沸騰、③自然、④音楽、⑤視覚芸術、⑥スピリチュアルと宗教的なAWE、⑦生と死、⑧エピファニー(天啓)がそれにあたります。
これらは特別な体験ではなく、私たちが立ち止まって心を開きさえすれば日常の中に無数に存在しているものであり、1日数分の習慣として向き合うだけで、自分の人生に潜む深いパターンに気づく手助けをしてくれるのです。
こんな人におすすめ
- 効率や合理性の追求に行き詰まりを感じ、新しい視点やブレークスルーが欲しいビジネスパーソン
- AI時代における「人間らしさ」や「代替されない創造性」の源泉を探求したい人
- エゴや自己批判の執拗な声に悩まされ、日常的に強いストレスや孤独感を感じている人
- チームや組織の心理的安全性や、メンバー間の真の協力関係を高めたい経営者やリーダー
- 単なる個人主義の幸福論ではなく、社会や共同体に貢献する「つながりの心理学」を学びたい人
本書から得られるメリット
- 自己執着(エゴ)から解放され、自己境界が薄まることで、チームや組織への一体感が自然と高まる
- 日常の中に存在する「8つの不思議」に気づくことで、幸福度や倫理性を高めるトレーニング法が身につく
- 利他性や協調性が科学的なアプローチで向上し、組織マネジメントやコミュニティ運営に良い影響を与える
- 近視眼的な思い込みを排除し、大局的で柔軟な、判断の質の高い意思決定ができるようになる

「AWE(畏敬の念)」の真の定義とは?AI時代に求められる理由
AWEは、世界に対しての自分なりの理解を超越する、広大な何かの存在と共にある時の感情である。(ダッカー・ケルトナー)
毎日忙しく働いているのに、なぜか充実感がない。情報は増え続けているのに、新しいアイデアが生まれない。SNSを開けば他人の成果が目に入り、仕事では評価や数字に追われる。便利なツールを使いこなしているはずなのに、心のどこかで疲弊している。そんな感覚を抱く人は少なくないはずです。
デフォルトの自己が消えると、AWEが私たちを、やるかやられるかという競争的なマインドセットから、互いに頼り合い協力し合う個々からなるネットワークの一部だと知覚する意識へと変容させることがわかっている。
ところがAWEを感じると、この「デフォルトの自己」が一時的に静まります。自分がどう見られているか、自分がどれだけ得をするかという意識が弱まり、自分をより大きなネットワークの一部として捉えられるようになります。
AWEは、私たちを「やるか、やられるか」という競争的なマインドセットから、「互いに頼り合い、協力し合う存在なのだ」という意識へと変えてくれるのです。 これは、個人の幸福にとどまらず、組織や社会にとっても大きな意味を持ちます。
チームが機能しない原因の多くは、能力不足ではなく、過剰な自己防衛や不信感にあります。メンバーが自分の評価や立場を守ることに意識を奪われると、知識の共有も、率直な対話も、新しい挑戦も生まれにくくなります。
一方で、自分たちは大きな目的に向かってつながっているという感覚が生まれると、人は協力し、学び合い、より創造的になります。AWEは、組織における見えない協力インフラでもあるのです。
著者が示すAWEの本質は「広大さ」です。ただし、その広大さは一つではありません。ある人にとっては、そびえ立つ山や大海原がAWEかもしれません。別の人にとっては、音楽、アート、宗教、科学、歴史、あるいは人間の善意がAWEになるかもしれません。
生まれたばかりの赤ん坊にとっては、親から注がれる愛情が世界そのものであり、人生の終盤にある人にとっては、命のつながりや世代を超えた継承がAWEになることもあります。
「生命の八つの不思議」とは?
ワンダー。すなわち、開かれていて、探求しようとし、好奇心に満ち、神秘を受け止める精神状態は、AWEの経験から生じる。
AWEという言葉を聞くと、多くの人は壮大な自然や宇宙、あるいは人生を一変させるような特別な体験を思い浮かべるかもしれません。
しかし、ケルトナーは、AWEは限られた人だけが味わえる感情ではなく、誰もが日常の中で育むことのできる感情だと述べています。特別なお金も時間も必要ありません。 重要なのは、AWEは「探しに行くもの」ではなく、「気づくもの」だということです。少し立ち止まり、意識を向けるだけで、私たちの周囲にはAWEの源泉が数多く存在しています。
著者は、その源泉を「生命の八つの不思議」として整理しています。①美徳、②集合的沸騰、③自然、④音楽、⑤視覚芸術、⑥スピリチュアルと宗教的体験、⑦生と死、⑧エピファニー(天啓)です。
その筆頭に挙げられているのが「美徳」です。他者の勇気、誠実さ、思いやり、親切さに触れたとき、私たちは人間の持つ可能性の大きさに圧倒されます。それは、自分の常識や理解を超えるものと出会う瞬間であり、まさにAWEの原点です。
私たちは日々、ニュースやSNSを通じて他人の失敗や欠点に目を向けがちです。しかし実際には、困難な状況でも責任を果たそうとする同僚の姿、見返りを求めず誰かを支える人の優しさ、街角で見かけるさりげない善意の行動にも、深いAWEが宿っています。
興味深いことに、世界各国の人々を対象とした日記研究では、日常のAWEを最も多く生み出していたのは、雄大な自然や観光地ではなく「他者との関わり」だったことが明らかになっています。家族、友人、先生、同僚、あるいは偶然出会った見知らぬ人との交流の中で、私たちは何度も心を揺さぶられ、自分を超えた何かとのつながりを感じています。
つまりAWEは、遠くの絶景や非日常の体験だけに存在するものではありません。他者の中にある善意や勇気、美しさに気づく感性を取り戻したとき、私たちは日常の中に隠れていた神秘を発見し、自分がより大きな世界の一部であることを実感できるのです。そこから生まれるつながりの感覚こそが、幸福感や利他性、そして人生の豊かさを支える土台なのです。
動きを同調させ感情を収斂させることで、意識の変容が起きる。自分の目からだけ世界を見る自分本位の見方から、そこに起きていることに対しての共有意識へと移行する。
感情が周囲へ伝染し、意識が共有されます。個人としての境界が一時的に薄れ、自分がより大きな共同体や文化の一部であることを実感するのです。
AWEの源泉は、人との出会いだけに限られません。スタジアムでのスポーツ観戦、ライブ会場での一体感、祭りや儀式、合唱、ダンスのように、人々が同じリズムや感情を共有する場にも、強いAWEである集団的な高揚感を「集合的沸騰(Collective Effervescence)」が生まれます。
その最もシンプルな形は、誰かと一緒に歩くことだと著者は指摘します。人類は樹上生活から二足歩行へと進化したことで、世界の見え方を大きく変えました。立ち上がって歩き始めた私たちは、目の前の地面だけでなく、遠くに広がる景色、空、山、海、そして自然の神秘に気づくようになりました。
やがて人間は、移動する存在となりました。太陽の動き、天候、季節の変化、植物や動物のライフサイクル、他の哺乳類の移動パターンに合わせながら、移動と定住を繰り返してきました。人類は自然のリズムに身を委ねることで、自分たちが大きな生命の循環の中にいることを感じてきたのです。
人々が同じ方向へ歩き、同じ音楽に合わせて歌い、同じリズムで踊るとき、そこには不思議な同調が生まれます。動きがそろい、感情が伝染し、意識が共有されることで、個人としての境界は一時的に薄れていきます。その瞬間、私たちは自分が孤立した存在ではなく、より大きな共同体や文化の一部であることを実感します。 この自己を超える感覚こそ、AWEの重要な特徴です。
AWEは、私たちを自分中心の狭い世界から解放し、より大きな時間、自然の秩序、人類が受け継いできた文化とのつながりへと導いてくれます。 季節ごとに表情を変える木々、空の色、心を震わせる音楽、絵画や建築といった芸術作品も同じです。それらは、日常の中にありながら、私たちの視点を一段高い場所へ引き上げてくれます。
AWEとは、特別な場所だけにあるものではありません。人と共に動き、自然に目を向け、文化に触れることで、私たちは日常の中にある大きな神秘とつながることができるのです。
AWEを感じる瞬間、私たちは「個人」として存在しているだけでなく、歴史や文化、共同体、そして自然という大きなネットワークの一部であることに気づきます。その感覚が、孤立した自己意識を和らげ、人とのつながりや協力への意欲を呼び覚ますのです。
さらに著者は、生と死、誕生と別れといった人生の根源的な出来事にもAWEが宿ると指摘します。私たちが少し立ち止まり、スマートフォンや仕事に追われるマインドレスな状態から抜け出して周囲に目を向けるだけで、世界は驚きと神秘に満ちていることに気づくのです。
ビジネスの世界では、目標達成や成果競争に追われるあまり、自分自身の評価や立場ばかりを気にするようになります。その結果、「もっと評価されたい」「失敗したくない」「負けたくない」というエゴの声が大きくなり、ストレスや孤独感、人間関係の摩擦を生み出します。
しかし、AWEを経験すると状況は大きく変わります。近年の脳科学研究では、AWEが脳のデフォルト・モード・ネットワークに影響を与え、自己中心的な思考を弱めることが確認されています。自分への過剰な意識が静まることで、私たちはより大きな全体の一部として自分を認識できるようになります。
著者は、AWEによって私たちの意識が「やるか、やられるか」という競争的な世界観から、「互いに支え合うネットワークの一員である」という認識へ変化すると説明しています。これは現代社会において極めて重要な示唆です。
進化の歴史を振り返っても、人類はAWEによって結束し、協力し、未知の脅威を乗り越えてきました。AWEは単なる感動ではなく、人と人をつなぐ社会的感情なのです。
だからこそ、優れたリーダーほどAWEを必要とします。自分の小ささを知り、自然や歴史、人々の善意に敬意を抱く人は、他者を支配しようとするのではなく、共に未来を創ろうとします。その謙虚さが組織の心理的安全性を高め、協力を促進し、個人の成果を超えたコレクティブ・インパクトを生み出します。
AWEは現代の発明ではありません。数千年前の人々は、自然、物語、祭り、歌、舞踊、祈り、芸術と共に生きることで、日常の中に豊かなAWEを見出していました。
老子は自然の生命力そのものである「道(タオ)」に目を向けることを説き、松尾芭蕉は俳句を通じて自然や他者への深いまなざしを表現しました。
また、ニュートンやデカルトが虹に畏敬の念を抱いたことが、後の偉大な科学的発見につながったように、AWEは創造性や知的探究心の源泉でもあります。
近年注目されるASMR=autonomous sensory meridian response(自立感覚極点反応)も、人間が感覚を通じて日常の中に小さなAWEを見出そうとする現代的な表現と捉えることができるでしょう。
AIが瞬時に答えを提示し、あらゆる情報が手に入る時代だからこそ、私たちに必要なのは効率化だけではありません。他者の美徳に感動し、自然の変化に気づき、芸術や音楽に心を揺さぶられる感性です。
AWEとは、特別な場所へ行くことではなく、日常を新しい目で見直すことです。そして、その体験は私たちをエゴ中心の生き方から解放し、人や社会とのつながりを取り戻してくれるのです。
AWEと聞くと、宇宙の果てに思いを馳せたり、圧倒的な絶景を前に立ち尽くすような、特別な非対象の体験を思い浮かべるかもしれません。しかし著者は、AWEはお金も化石燃料も使わず、日常の至る所で「1日数分」の意識さえあれば、誰でも簡単に「トレーニング」して見つけられる社会的感情であると断言しています。。
「小さな自分(スモール・セルフ)」がもたらす構造的思考と意思決定の質
人はAWEの文脈にいるだけで「小さな自分」になる。
AWEの本質は、単なる感動ではありません。それは、自分という存在を超えた何かとつながることで生まれる「エピファニー(深い気づき)」です。 私たちは普段、自分の仕事、評価、人間関係、将来への不安といった「自分中心の世界」の中で生きています。
しかしAWEを経験すると、その視点が大きく変わります。 広大な自然を前にしたとき。心を震わせる音楽に没入したとき。誰かの勇気や利他的な行動に触れたとき。あるいは一冊の本との出会いによって世界の見え方が変わったとき。私たちは、自分が世界の中心ではなく、より大きな何かの一部であることを直感的に理解します。
著者はこれを「スモール・セルフ(Small Self)」と呼びます。 これは自己否定ではありません。むしろ、自分を縛っていたプライドや執着、不安や焦りから解放される状態です。視野が広がることで、目の前の問題を絶対視しなくなり、より大きな文脈の中で物事を捉えられるようになります。
その結果、私たちは短期的な感情に振り回されるのではなく、長期的な構造や本質的なパターンを見抜けるようになります。 経営戦略を考えるときも同じです。優れた経営者ほど、目先の数字だけではなく、社会の変化、人々の価値観、テクノロジーの進化といった大きな流れを見ています。キ
ャリアの選択や新規事業への投資、リスクマネジメントのような正解のない意思決定においても、AWEがもたらす大局観は強力な武器になります。 なぜなら、AWEは「部分」ではなく「全体」を見る力を与えてくれるからです。
さらにAWEは、私たちの世界観そのものを変えます。 私たちは自然界の頂点に立つ独立した存在ではありません。無数の生物が相互に依存しながら成り立つ生態系の一部です。空気、水、植物、微生物、他の動物たちとのつながりなしに、人間は一日たりとも生きられません。 AWEは、その複雑で美しい相互依存のシステムに気づかせてくれます。 そして、その洞察は自然界だけにとどまりません。
社会、コミュニティ、組織、文化、さらにはデジタル空間においても、私たちは無数の関係性によって結ばれています。個人の行動は他者へ影響を与え、その影響が再び自分へ返ってくる。AWEは、その背後にある見えないパターンや法則に目を向けさせてくれるのです。
言い換えれば、AWEとは「つながりの発見」です。 自然とのつながり。 他者とのつながり。 文化とのつながり。 歴史とのつながり。 そして未来とのつながり。
AWEのエピファニーは、自分という小さな存在を消すのではなく、より大きな生命の流れの中へ位置づけ直してくれます。 だからこそ、AWEを経験した人は利己的になるのではなく、協力的になり、孤立するのではなく共同体とのつながりを求めるようになります。
著者の研究によれば、AWEは人々の利他性を高め、共感を促し、コミュニティへの帰属意識を強めることがわかっています。AWEは私たちを競争の論理から協力の論理へと導く社会的感情なのです。 幸いなことに、その恩恵を受けるために特別な体験は必要ありません。
・空を見上げ、雲の変化に目を向ける。
・林を歩き、風の音に耳を澄ませる。
・音楽に深く聞き入る。
・誰かの美徳を見つける。
・美術館で一枚の絵の前に立ち止まる。
・本を読み、新しい世界の見方に出会う。
こうした小さな「立ち止まる時間」が、凝り固まった思考をほぐし、心に余白を生み出します。 AIが瞬時に答えを出し、情報が溢れる時代だからこそ重要なのは、より多くの情報を集めることではありません。 自分を超えた大きなつながりに気づくことです。
生命のシステムとは、共同体、集団、自然界、そして音楽やアート、宗教といった文化、さらにそれらの複雑な概念の網目を理解しようとする私たちの心の努力のことを指す。AWEのエピファニー、気づきは、AWEの経験が私たちの個別の自己を生命の広大な力につなげることからくる。
AWEとは、世界をより大きな視点で見つめ直すきっかけを与えてくれる感情です。その視点に立ったとき、私たちは初めて、自分が単独で生きているのではなく、生命、文化、共同体という壮大なシステムの一部であることに気づかされます。テクノロジーに囲まれ、日々忙しなく過ごす現代人にこそ、AWEは欠かせないものだといえるでしょう。
コンサルタント 徳本昌大のView
AWEは、AI時代に人間の判断力と創造性を取り戻すための感性の技術です。 『AWE 心と人生を変える力』は、効率化やロジカルシンキングに偏りがちな現代人に、「世界の見方」を根本から変える視点を与えてくれる一冊です。
私たちは日々、成果を出すために、情報を集め、分析し、最短距離で答えを出そうとします。ビジネスの現場では、論理的思考やデータ分析は欠かせません。
しかし、論理や過去のデータだけでは、どうしても越えられない壁があります。 顧客自身もまだ言語化できていないニーズを読み解くとき。 不確実な未来に向けて新しい戦略を描くとき。 既存の延長線上にはないアイデアを生み出そうとするとき。 そこでは、単なる情報処理を超えた「直感」や「閃き」が必要になります。
私自身、コンサルティングや執筆を続ける中で、考え抜いても答えが出ない場面に何度も直面してきました。そういうとき、机の前でさらに考え続けるだけでは、かえって視野が狭くなります。
むしろ、一度自然の中に身を置いたり、美しい芸術に触れたり、歴史的建造物の前に立ったりすることで、自分の小ささを感じる時間を持つようにしています。 それが、本書のテーマであるAWEです。
AWEとは、自分の理解を超える大きなものに触れたときに生まれる畏敬の感情です。 AWEの面白さは、単に「感動して気分がよくなる」だけではない点にあります。
本書は、AWEが私たちの心や行動に与える影響を、科学的な視点から整理しています。 AWEを感じると、まず自我が小さくなります。 「自分がどう見られるか」「自分だけが損をしていないか」といった過剰な自己意識が薄れ、反芻思考も和らぎます。すると、心が軽くなり、物事を大きな視点で捉え直せるようになります。
次に、人とのつながりを感じやすくなります。 自分だけの利益ではなく、他者や社会との関係性に目が向くようになるため、共感や利他性が高まります。これはチームづくりやリーダーシップにおいても重要な力です。
さらに、AWEは創造性を刺激します。 いつもの景色の中に新しい意味を見出し、自分の経験を別のストーリーとして編み直す力を与えてくれます。行き詰まっていた問題に対して、突然別の角度から光が差し込むような感覚が生まれるのです。
そして、AWEはウェルビーイングにも関わります。 ストレスを和らげ、幸福感を高め、長期的な健康の土台にもなりうる感情だと考えられています。
AWEを感じると、過剰なエゴや「こうあるべきだ」という思い込みが削ぎ落とされます。その結果、不思議なことに、物事の構造が以前よりもクリアに見えてきます。自分を大きく見せようとする力が弱まることで、逆に本質が見えるようになるのです。 AI時代には、知識や情報処理だけでは差別化できません。
AIは膨大な情報を処理し、文章や企画のたたき台を瞬時につくります。だからこそ、人間に問われるのは、何に心を動かされ、何を美しいと感じ、どんな未知に畏敬の念を抱けるかです。 AWEは、感性の贅沢ではありません。 人間らしい判断力、創造性、共感力を保つためのインフラです。
最近、心から驚いたことはあるでしょうか。 自分の理解を超える何かに、心が震えた瞬間はあったでしょうか。 もしすぐに思い浮かばないなら、日々のタスクや効率化の中で、心が少し疲れているのかもしれません。 本書を読むことは、日常の中にある「不思議」にもう一度目を向けるきっかけになります。
自然、音楽、芸術、人の善意、歴史、誕生と死、集団の熱狂、そして人生そのもの。そこにAWEを見出すことができれば、私たちの思い込みは少しずつほどけていきます。
『AWE 心と人生を変える力』は、判断の質を高め、創造性を取り戻し、人生をより豊かにするための実践的な一冊です。効率だけでは満たされない時代にこそ、読む価値があります。
FAQ
Q1: AWE(オー)とは具体的にどのような感情ですか?
Q2: AWEを「トレーニングする」とはどういう意味ですか?
A: AWEは生まれつきの才能や偶発的な体験を待つだけのものではありません。日常の中で意識的に「生命の八つの不思議」(他者の親切、音楽、自然など)に目を向け、立ち止まって心を開く時間を意図的に作ることで、誰もがその感性を磨き、幸福度や創造性を高めることができるという意味です。
Q3: AWEが「人類の協力を駆動する感情インフラ」とはどういうことですか?
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