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パーパス

ラーメンと瞑想 (宇野常寛)の書評

宇野常寛氏の『ラーメンと瞑想』は、編集者T氏との6年間の「水曜日の朝活」を描いたエッセイ集です。ジョギング、瞑想、昼食を通じ、ラーメンを「獣の世界」、瞑想を「神の世界」と位置づけ、人間を相対化する営みを提示します。立ち食いそばやタヌキとの遭遇は、半径五百メートルの世界を見直す契機となり、情報過多の時代に「今ここ」に集中する重要性を教えてくれます。
AI

アフターAI 世界の一流には見えている生成AIの未来地図(シバタナオキ, 尾原和啓)の書評

生成AIの進化が企業の競争力を左右する時代、日本企業は慎重姿勢が目立ち、導入の遅れが課題となっています。本書『アフターAI』は、生成AIがもたらす社会やビジネスの変化を捉えつつ、日本の強みである現場力や暗黙知を活かす視点を示します。実践的なヒントに富んだ一冊です。
歴史

世界経済の死角 (河野龍太郎,唐鎌大輔)の書評

自民党敗退の背景には物価高と賃金停滞があり、特に中低所得層の生活水準低下が影響しています。日本は欧米の利上げ期も金融緩和を続け、円安で輸入物価が高騰しましたが、企業利益は賃上げに回らず内部留保が増加しました。河野龍太郎氏と唐鎌大輔氏は、生産性向上が賃金に結びつかない構造や、円安だけでは説明できない国際的価格差を指摘します。
投資

ひと月百冊読み、三百枚書く私の方法 (福田和也)の書評

福田和也氏は、読書と執筆を人生を動かすエンジンと捉えています。重要なのは「選び方」と「向き合い方」であり、目的を持った読書が発想と仕事を生み出すのです。抜書きは書き手の思考を追体験し、理解を深める有効な手段です。さらに、文章上達の鍵は模倣から分解、そして自分の言葉に置き換えることです。読む・コピー・分解・書くというサイクルを続けることで、確かな成長と読者に届く力を育てていくのです。
ウェルビーイング

ウェルビーイングのジレンマ 幸福と経済価値を両立させる「新たなつながり」 (デロイト トーマツ グループ)の書評

2025年、日本の幸福度は世界55位と低迷し、経済大国でありながら先進国の中で最下位にあります。その背景には、社会的孤独・孤立や将来不安があり、コミュニティーの希薄化が幸福を阻害しています。幸福と経済の両立には、双方向のつながりを重視する「ウェルビーイング経営」が必要であり、個人の成長や貢献を軸に企業・投資家・自治体が連携することが重要です。丸井、日本生命、福井県、FC今治などの事例は、新たなコミュニティー形成の方向性を示し、日本をウェルビーイング先進国へ導く実践的な手がかりとなっています。
歴史

「進歩」を疑う なぜ私たちは発展しながら自滅へ向かうのか (スラヴォイ・ジジェク)の書評

スラヴォイ・ジジェクは、哲学・時事・文化を縦横に結びつけ、現代社会の進歩を問い直すスロベニア出身の哲学者です。彼は真の進歩を「まず前進し、犠牲に気づいたら再定義する」二段階で捉えるべきだと指摘します。気候変動や極右台頭に対し、否認を超えて行動する必要を説き、未来は行動によって書き換えられると主張します。
ウェルビーイング

トレイルズ 「道」と歩くことの哲学(ロバート・ムーア)の書評

ロバート・ムーアの『トレイルズ』は、アパラチアン・トレイル踏破を起点に「道」の起源と意味を探る哲学的紀行です。道を文化や自然を結ぶ血脈と捉え、先住民の知恵や東洋思想、ケヴィン・ケリーの技術進化論までを交え、道と人が互いに形づくる関係を描きます。速さを追求する現代が失った「足元を味わう余白」を取り戻し、寒山の詩のように先人の足跡から学ぶ大切さを説きます。
コミュニケーション

となりの陰謀論 (烏谷昌幸)の書評

SNS上では根拠があいまいでも断定的で感情を揺さぶる陰謀論的言説が広がり、正論のように響くことがあります。陰謀論は特別な人だけのものではなく、人間は複雑で不確実な現実より単純な物語を好むため誰もが信じる可能性があります。インターネットとSNSはこの傾向を加速させ、陰謀論は信念であると同時に政治やビジネスの道具にもなっています。
コミュニケーション

心穏やかに生きる哲学 ストア派に学ぶストレスフルな時代を生きる考え方(ブリジッド・ディレイニー)の書評

本書は、英国『ガーディアン』紙コラムニストのブリジッド・ディレイニーが、古代ストア派の知恵を現代の生活に適用する方法を解説したものです。セネカやエピクテトス、マルクス・アウレリウスの教えをもとに、「アタラクシア(不動心)」の実践を説きます。スティーブ・ジョブズの「毎日を人生最後の日だと思って生きる」という姿勢とも重なり、時間の有限性を意識することが行動を変える鍵になるのです。
AI

人生の大問題と正しく向き合うための認知心理学 (今井むつみ)の書評

人は感情や思い込みによる認知バイアスで、十分な情報があっても誤った判断を下してしまいます。慶應義塾大学の認知科学者・今井むつみ氏は、因果と相関の混同や、無意識の補完を行う「スキーマ」が確証バイアスを生む仕組みを解説します。鍵となるのは、不完全な情報から仮説を導くアブダクション推論で、これはAIにはできない人間固有の能力です。人間は記号接地によって体験を意味化し、知識を身体化しますが、効率偏重はこの力を損ないます。
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