インドのNearbuyが行っているコンテクスト・データの活用法。

企業と顧客が何かをしたいと思った瞬間を迎えるとき、この「どう」感じているかという情報が現在に影響を及ぼす。人は1日のうちに何回か、程度の差はあれ、必ずと言ってよいほど何かをしたいと思う瞬間があるだろう。グーグルはこれらを「マイクロモーメント[人々が何かをしたいと思って反射的にモバイル端末で検索行動を起こす瞬間]」と呼ぶ。(アニンディヤ・ゴーシュ)


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マイクロモーメントが重要な理由

あなたが何かを検索したり何かにお金を支払うたびに、そこに時刻の記録が残ります。こうした「マイクロモーメント」で行われる検索の多くは地元のローカル情報が対象であり、購入にいたる可能性がきわめて高いとアニンディヤ・ゴーシュTapスマホで買ってしまう9つの理由の中で述べています。マスメディアを使ったブランディングも大事ですが、スマホがこれだけ普及しているのですから、マーケターは消費者の今を意識し、マーケティング施策を実施すべきです。

マーケターは、即時性を重視しないブランド知名度にばかりに力を入れず、消費者が助けを必要とするときに支援する必要がある。モバイルは、ブランドがこの種の”いますぐに必要な”支援を提供できるようにする。

エモリー大学、ゴイズエタ・ビジネススクールの情報システム・業務管理助教授ビルマ・トードゥリたちのモバイルのコンテクスト・マーケティングの効果に関する研究を活用し、著者はモバイルアプリ内のさまざまなタイプのおすすめに対する消費者の反応を調査しました。これらのおすすめは、レストランやバーといった地元の店に関するものでした。アメリ力国内のもっとも人気のある10都市の1万2119店と、それに対するアメリ力最大級のモバイル都市ガイドアプリの数百万人のアクティブ・ユーザーの来店データを入手し、分析した結果、消費者は、専門家や過去のデータに基づいたおすすめよりも、現在はやっている店に関する「いま」のおすすめの影響をはるかに強く受けることがわかりました。

「いま」のおすすめ頻度を10パーセント上げると、おすすめされている店全般の来店者が7.1パーセント上昇し、モバイルのコンテクスト・マーケティングの力がはっきりと証明されました。今ここにいる人に、適切な情報を送ることで売り上げをアップできるのです。

 

消費者のコンテクスト・データを活用するメリット

消費者のコンテクスト・データを活用して関連性の高いメッセージを送り、モバイル経済の可能性を引き出している企業がアメリカ以外にもあります。インドの超地域密着型の電子商取引企業Nearbuy(ニアバイ)もそのひとつです。

ニアバイは、ユーザーの現在位置に時刻と行動履歴の情報を紐づけて、それぞれの顧客の目的、ニーズ、心理状態と人間関係を推測しようとする。過去に何を閲覧し、どんなものを好み、購入したか、何を捨てて何を共有したかを知っていて、よく行く店(と職場と自宅の場所)も把握している。消費者の行動パターンと店のプロファイルを相互に参照すると、ユーザーがいつどこにいるかというコンテクスト・データを得る役に立つ。そのようにして、バンガロール、デリー、ムンバイの特定のタグづけされた場所にユーザーが入ると、アプリがマーケティング・オファーの通知を送信する。通知は、時間と曜日に基づいて変更される。

ニアバイは時間帯が朝であれば、朝食か買い物のオプションを表示します。午後なら、ランチ、スパ、映画のオファーを送ります。夕方(たとえば、金曜日の夕方)なら、パブ、クラブ、レストランの情報を送信し、ニアバイは成功を手に入れました。実際、同社は、場所、時間、ユーザーの行動履歴を紐づけて、30パーセントのクリック率(一般的な通知の場合は 4パーセント )と12パーセントの取引コンバージョン率 [目的とする成果が得られた率] (一般的な通知の場合は 7パ ーセント )と言う驚異的な数字を達成しています。

マイクロモメントのコミュニケーションでは、過度の情報配信はやめるべきです。どんなときも見込み客とコミュニケーションできる技術力があるからといって、それ多用しないことです。顧客とよい関係を築くためには、適切なマイクロモーメントを待つようにし、顧客との信頼関係を築きましょう。コミュニケーションの頻度が低くなっても、顧客の役に立つ関連性の高いメッセージを作ることに重点を置くようにするのです。顧客は自分に役立つ情報を受け取ることで、自分の端末をストーカーではなくコンシェルジュや執事と見なすようになり、商品やサービスが売れるようになるのです。

まとめ

適切なタイミングで顧客の喜ぶローカル情報をスマートフォンに配信することで、購買する可能性が高まります。マスメディアだけでなく、「マイクロモーメント」を重視し、場所、時間、ユーザーの行動履歴を紐づけ、情報を配信するようにしましょう。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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