高橋祥子氏のビジネスと人生の「見え方」が一変する 生命科学的思考の書評


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ビジネスと人生の「見え方」が一変する 生命科学的思考
著者:高橋祥子
出版社:NewsPicksパブリッシング

本書の要約

ただ、思考するだけでなく、人は行動することで、情熱を持てるようになります。経験することで感情が動き、記憶に定着し、新たなアイデアが生まれ、そこからまた行動できるようになります。私たちは自ら「行動」を起こすことによって初めて学び、前進していけるのです。

生命原則を知り、主観的に行動しよう!

未来差分を認識し、覚悟を決め、初速を持って行動を起こすには、相当の努力が求められます。しかし、努力はエネルギー消費を伴うため、できるなら努力せずに楽に生きたほうが生物的には効率が良さそうなものです。ただ残念ながら、努力せずに生きることはできません。なぜなら、この宇宙は乱雑になるよう変化する性質をはらんでいるからです。私たちを取り巻く宇宙の性質は、残念ながらヒトが努力せずとも生き延びて種として繁栄していけるシステムにはなっていませ(高橋祥子)

著者の高橋祥子氏には以前雑誌でインタビューさせてもらったことがあります。彼女が開発した遺伝子検査によって、自分という存在を理解することもでき、著者には親近感を抱いていました。高橋氏は生命科学の研究者であり、遺伝子ビジネスの会社であるジーンクエストの経営者でもあります。その高橋氏がビジネスと人生の「見え方」が一変する 生命科学的思考を出版したので、早速読んでみました。

日本人が2人に1人という高い割合でがんを発症するのはどうしてなのか?
なぜ人類の出産は危険で非効率な仕組みなのか?
なぜ人類は個々がまったく異なる特有の遺伝子情報を持ちこんなにも多様なのか?
多様性とは何か?
病気とは何か?
なぜ生命は老いるのか?

生命には様々な謎がありますが、これらの答えの背景には「個体として生き残り、種が繋栄するために行動する」という共通する生命原則があると著者は指摘します。

著者は研究者と経営者という2つの仕事を通じて、生命原則と人生や経営には共通の仕組みが多いことに気付きます。

「生命の原理や原則を客観的に理解した上で、それに抗うために主観的な意志を活かして行動できる」ということです。生命原則を客観的に理解し、視野を自在に切り替えて思考することで主観を見いだし行動に移せば、自然の理に立脚しながらも希望に満ちた自由な生き方が可能となります。

思考はエネルギーを消費する行為で、人は思考しなくてもよい環境であれば極力思考をしないことを無意識に選択します。私たちが思考するためには、エネルギー効率を高めようとする生命の原則に意識的に抗う必要があります。これには大変な努力や覚悟が求められ、効率はよくありません。しかし、遺伝子に抗って思考するという非効率的な行為こそが、人類にとって唯一の希望なのです。

この生命原則を受容した上で、主体的に思考して学習し前に進み続けることで、次々と現れる課題を解決できます。次々に現れる課題に諦めず、思考して行動することで、人類は常に前進してきました。思考することは面倒だし、エネルギーも消費しますが、テクノロジーが発展して常に変容する世界において、思考し、行動し続けることこそ、人類の一つの希望なのです。

現在は未来の一部であると考えよう!

他人に対して怒りを覚えてしまうのは、自分の敵に対応するためであり、孤独感は人と集団で生活することで生き延びてきた人類が、一人で生きることを避けるための機能です。こうした感情は、生きていく上での危険を察知し、その危険から離れたり排除したりするために必要な機能として存在します。ですから、こうした感情を抱いたときは、「自分が感じている」というよりも、「遺伝子に搭載された機能が正常にはたらいている」と客観視するように私は心掛けています。メカニズムやその意味を知っておくと、非効率で面倒くさいものにも思えるネガティブな感情とも向き合いやすくなります。漠然と、不安だ、怒りっぽくなっている、寂しい、と感じるのではなく、遺伝子が正しく機能していると認識して、何に対して不安や怒りを覚えているのかと客観的に分析できるようになると、解決策が見えてきます。

著者は何かに対して不安を感じたときには、それが遺伝子の機能によるものであると冷静に捉えた上で、actionableな不安(不安の対象となるものに対して具体的な行動を取ることができるもの)とactionableでない不安(不安の対象となるものに対して行動を起こせないもの)に分けて考えるそうです。

行動を起こせないものの場合は「不安なものには蓋をする」ことで、悩みを減らせます。不安を感じた時に、事前に打つ手を考え、準備できることはすべて行動し、それでも残った不安については考えないようにすることで、人は行動できるようになります。 

人は目の前の快楽に流されてしまいますが、視野を広げ、時間軸を考えることで、自分の行動をコントロールできるようになります。

私たちは基本的には遺伝子に則って快楽が得られる方向に行動を起こします。しかし、快楽と幸福の性質や時間軸の違いを客観的に理解することで、行動をコントロールし、より良い未来のためにエネルギー消費を伴う行動を起こすなど、本来自分が取りたい選択肢を選べるようになります。現在の快楽に身を委ねてしまいそうなときには、時間的視野を未来に広げ、達成したい目的を明確に意識した上でもなおその選択をするかどうか自身に問う習慣をつけておくと幸福になりやすいと、私は考えています。

未来をよくするためには、覚悟が重要になります。はじめに「これをやり切るまでは中途の過程で何があっても後悔しない、なぜなら自分がそう決めたから」と覚悟を決めたならば、葛藤はそもそも生じません。

フリードリヒ・ニーチェの、「過去が現在に影響を与えるように、未来も現在に影響を与える」という言葉を信じて、現在を未来の一部と捉えましょう。

未来をよくすると決め、「これは絶対やり切る」「それでダメでも後悔しない」と考え、行動することで、後悔をなくせます。未来を思い描くことが、現在の思考と行動を変えられます。主体的により良い未来を思い描き、現在と繋げて考えるという思考によって、現在をより良いものにできるのです。

ただ、思考するだけでなく、人は行動することで、情熱を持てるようになります。経験することで感情が動き、記憶に定着し、新たなアイデアが生まれ、そこからまた行動できるようになります。私たちは自ら「行動」を起こすことによって初めて学び、前進していけるのです。

ブロガー・ビジネスプロデューサーの徳本昌大の5冊目のiPhoneアプリ習慣術がKindle Unlimitedで読み放題です!ぜひ、ご一読ください。

 

 

 

 

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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