「価格上昇」時代のマーケティング なぜ、あの会社は値上げをしても売れ続けるのか (小阪裕司)の書評

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「価格上昇」時代のマーケティング なぜ、あの会社は値上げをしても売れ続けるのか
小阪裕司
PHP

本書の要約

顧客は自分にとって意味があると思ったら、景気が悪くとも惜しみなくお金を使います。今後、日本経済が厳しくなっても、自社の価値を顧客にしっかりと伝え、適正な値付けをしていれば、 あなたの会社やあなたが売っているものに顧客のお金を十分に配分します。 経営者が意識すべきは、顧客の心のシェアを高めることなのです。

価値のある商品の価格を上げるべき理由

いいものを「高く」売ることは、商売の本質ではないのか。安くしなくては買ってくれないというのは、自分たちが扱っているものに関して「安さしか価値がない」と言っているようなものではないのか。そう考えると、むしろ値上げというのは、しごくまっとうなことなのではないか。(小阪裕司)

長年デフレが続いた日本では、ウクライナ危機から始まった猛烈なインフレに多くの企業が対応できずにいます。価格を上げることを恐れている経営者が、コストダウンに走り利益を削ることで、自らの首を締めてしまっています。

今回起こっている物価高は決して、一過性の物価上昇や価格高騰ではありません。今後も物価が常に上がっていくことが常態化します。デフレの30年間は終わりを告げ、徐々に物価は上がっていきます。そんな「価格上昇時代」に適応できい企業は淘汰され、生き残れなくなります。

今こそ「我慢するビジネス」をやめ、値上げをして、適正な価格で販売することを始めるべきです。このまま「値上げせずに頑張る」ことを続けると、日本経済の発展が阻まれ、日本はただの安売りの国になり、国民が貧乏になってしまうのです。

「安いこと=善」「高いこと=悪」という常識を捨て去ること。言い換えると、価格維持のため、あるいは値下げのために「頑張るのはやめる」と決断すること。それが、価格上昇時代にうまく対処するためのスタートだ。

顧客のお金の使い方を多くの経営者は見誤っています。顧客はどうでもいいものにはお金を使いませんが、自分にとって意味があると思ったら、惜しみなくお金を使います。著者はこれを「意味合い消費」と呼んでいます。

これからインフレがさらに進むことで、消費意欲が落ち込んでいくだろうという予測をする人がいますが、デフレになろうがスタグフレーションが進もうが、人は意味あるものにはお金を使います。意味合い消費を狙うことで、売上と利益をあげられるのです。

顧客に自社の価値をしっかり伝えれば、価格維持どころか、価格を上げても売上が落ちることはありません。自分の商品に価値があると考えるのなら、値上げを実施すべきです。

価値を顧客にしっかりと伝えれば、価格は二の次になる!

「価格を語る前に価値を語れ」ということであり、それは値上げ局面においても同じこと。価値を伝えたうえで、「この価値だからこの価格です」「この価値を維持するにはこの価格になります」と説くのである。

顧客は「価値」を感じれば、「価格」は二の次になります。顧客には買いたいと「買えるか・買えないか」の2つのハードルがありますが、「買いたい」のハードルを越えることができれば、顧客が確認するのは「買えるか・買えないか」だけなのです。  

自分にとってどれほど意味ある商品だと顧客が感じれば感じるほど、顧客にとって「買えない」のハードルは下がり、お金の配分を多くしてくれます。

「お客さんにとっての価値につながること」を伝えれば伝えるほど価値は上がります。「目に見えないところへのこだわり」や「商品誕生の秘密」「歴史」などの自社の強みをしっかりと伝えることで、顧客は価値を感じてくれるようになり、財布の配分を変えてくれます。

勝手に顧客の懐を心配することをやめ、価値を伝えることで、適正な価格で商品やサービスを販売できるようになります。価値を伝えるのには時間がかかることもありますから、「価値ある」 と思う商品・サービスをしっかりと育てるようにしましょう。

「価値」あるものになりさえすれば、「価格」は消滅するのである。

また、値付けする際には、今までの常識を捨て、原価から考えないようにすべきです。同業他社とも価格を揃えないようにします。自社の提供価値から価格を考え、顧客の心の中の価値を指す「内的参照価格」から値段を考えるようにしましょう。

消費者が価格の妥当性や魅力度を判断する際の基準として、過去の記憶や体験から価格を想起します。 この内的参照価格と実際の価格が同じなら妥当な価格となりますし、内的参照価格より安ければ安いと感じ、高ければ高いと感じます。 この内的参照価格を活用し、競合を自分とは全く異なる業界に広げることができれば、値付けの可能性はいくらでも広がります。ディズニーや高級レストランを競合として捉え、彼らの顧客体験価値を意識し、適正価格を考えるようにするのです。

日本経済が厳しくなっても、価値を顧客に提供し、適正な値付けをしていれば、 あなたの会社やあなたが売っているものに顧客のお金を十分に配分してもらえます。 意識すべきは「顧客の心のシェアである」という著者の言葉が響きました。

本書には価値から値付けをして顧客をファンにした事例がいくつも紹介されています。このケーススタディを真似しながら上手な値付けをすれば、物価上昇の時代でも売上と利益を増やせます。


この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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