パートナーシップ PARTNERSHIP――マイクロソフトを復活させたマネジメントの4原則
イ・ソヨン
ダイヤモンド社
本書の要約
パートナーシップでは、職場、職場外、プライベートの三角形をバランスよく構築する必要があります。未来はますます予測困難となり、不確実な時代を生きる私達は、職場、職場外、個人が力強いパートナーシップを築き、お互いの力を引き出す必要があります。組織の枠だけでなく、家族とのパートナーシップを見直し、家族の成長を相互に扶助することで、幸せな時間を増やせます。
成長マインドセットが重要な理由
マイクロソフトは、創業以来数十年間にわたり競争に勝つことのみを最重要課題としてきた企業文化を一変し、次のように問い始めたのです。 「あなたは、誰かの成功に貢献したことがあるか?」(イ・ソヨン)
しばらく低迷を続けていた王者マイクロソフトが、この数年元気を取り戻しています。一時は時価総額1位にも返り咲きましたが、何がそれを後押ししたのでしょうか?
マイクロソフト・アジアリージョンマネージャーとして活躍する著者のイ・ソヨンはその理由を本書で明らかにしています。マイクロソフトはデジタル時代に適合した文化と新たな制度を導入することで、再び企業を成長させることに成功しました。そこにはパートナーシップという相手とともに成長するという考え方があったのです。
「一人で成功する時代は終わった」と著者は指摘します。マイクロソフトのリーダーは、チームに貢献するだけなく、周囲から必要な助けも得られる「パートナーシップ」を築くことで、組織を変革していったのです。
サティア・ナデラCEOは、硬直マインドセットから成長マインドセットを重視した企業文化へのシフトを目指しました。社員は自分を有能に見せるのではなく、学ぶこと(成長すること)を求められたのです。
成長マインドセットには以下の特徴があります。
1.チャレンジする状況を積極的に受け入れ、
2.挫折にも耐えられる。
3.失敗は完成のためには必ず必要なものであり、
4.批判からも学び、
5.他人の成功からもヒントを得る。
マイクロソフトでは、社員の評価基準にしている影響力という指標を使っています。影響力とは「他人と協力し、自分の成果だけでなく誰かの成功にも貢献した度合い」を指します。経営者は社員にこの影響力をバランスよく達成することを求めています。同社では個人の成長指標だけでなく、他者への貢献、他者からの影響力の3つの指標で人事評価を行っています。
パートナーシップを築くための4原則
著者はパートナーシップを築くための4原則を明らかにしています。
①お互いのビジョンを確認する。
②助け合い(相互扶助)ベースで動く
③徹底的に寄り添い、フィードバックをする。
④全ての関係者とパートナーシップを築く。
以下、一つづつ見ていきましょう。
①お互いのビジョンを確認する。
相手に共感し、傾聴することで、相手のビジョンが見えてきます。
②助け合い(相互扶助)ベースで動く。
・他人や他部署の成功に必ず貢献する。
・自分の成果を上げるときも、誰かの仕事やアイデア、努力を生かして遂行する。
・「自分の仕事が誰かの仕事にどう影響するのか」を常に考える。
会社のビジョンと自分のビジョンが一致して、同僚や上司がすばらしい成長パートナーだと思えると、自分にもよい影響を及ぼします。 相手のビジョンや求めることを知ることで関係が強化されます。相手とのパートナーシップでどんなベネフィットを与えられるかを知り、相手もそれを望んでいるかを確認できたら、どんどん自分の価値を提供し、貢献していきましょう。
③徹底的に寄り添い、フィードバックをする。
私たちは皆、未熟な人間であると同時に、互いの成長の役に立つパートナーであると考え、相手に寄り添い、よいフィードバックを与えるようにします。フィードバックは相手が成長するための潜在能力を自ら見つけ出せるようにサポートすることにあると考え、意見を交わすようにしましょう。
④全ての関係者とパートナーシップを築く。
2021年6月時点で、マイクロソフトには全世界で18万1000人の社員がいました。前年2020年1430億ドルという売上は、マイクロソフトの社員のみで達成されたわけではありません。社員数以上のパートナー軍団が世界各地にいて、彼らと綿密に連携することでこの数字を達成できたのです。
パートナーシップは、マイクロソフトの戦略の中心軸だと言っても過言ではありません。
マイクロソフトのパートナー戦略は、単純に売り上げを共有するだけではありません。 パートナーがマイクロソフトとともに成長できるよう、各種教育を提供し、マーケティングやセールスをサポートします。
また、マイクロソフトは、顧客やユーザーが好むサービスであれば、たとえライバル会社であっても積極的にパートナーシップを結びます。
・iPhoneやMacなどの競合商品
・LinuxやOpenStackのようなオープンソースなど
アップルなどの強豪とも手を結ぶ戦略の変化が、長期的な不振を払拭し、マイクロソフトを再生させたのです。
互いの経済活動の鍵を握る企業や個人の評判が、最終的な付加価値を決定づける経済構造の「レピュテーション・エコノミー(評判経済)」の時代になることで、パートナーの重要性はますます高まってきています。
職場と自分の成長を別のものとして考える人と、職場での成長を積極的に活用しようという人とでは、将来の成長の差は歴然です。職場で出会う人たちのことをパートナーだと積極的に考えて、自分と自分を含む会社を成長させてくれるパートナーシップに昇華できる人だけが、変化の時代を生き残るのです。
サティア・ナデラCEOは、役員や社員、同僚、顧客の一人ひとりを会社に革新や成長をもたらす貴重なパートナーとして考え、組織や個人がともに成長できる成長マインドセットの文化を作り上げました。個人の成果だけでなく、他者の成果にも貢献してこそよい評価を得られるように、評価制度を変化させたことのです。
組織内で経験を積んで成長し、その結果を会社に還元しようというパートナーシップにシフトすると、個人と組織、その両方の成長が可能になります。
マイクロソフトでは、「成長マインドセット」と「影響力」という以下の2つの指標で社員を評価しているといいます。
①成長マインドセットを持って常に学び、
②他者や技術コミュニティの成長のために努力し影響力を発揮しているか?
コミュニティ・リーダーシップを兼ね備えた人たちが、マイクロソフトの成長を支えています。組織をよくするコミュニティ・リーダーシップは会社だけでなく、社外にも活用できます。オンラインを活用すれば自分の知識や体験をシェアできます。
成功するパートナーシップを築くための7つのステップ
成功するパートナーシップを築くための7つのステップを著者は明らかにしています。
1、自分を知り理解する。
自分の強みをナラティブにし、パーソナルブランドをつくります。
2、ビジョンの「方向」を確認する。
独善的なビジョンを誰かとともに成長するビジョンに切り替えます。
3、人生を5つのカテゴリーに分けて、管理する。
・誰かと歩む人生
・目的のある人生
・主体的な人生
・健康な人生
・自由な人生
4、今、パトナーシップが必要なことをあぶりだす。
前述の5つのカテゴリーで悩んでいることを書き出します。
5、各カテゴリーで必要なパートナーシップを見つける。
既存のパートナーシップで足りなければ、新たな関係を築きます。
6、自分が貢献できる部分を探し、積極的に提供する。
パートナーシップのベネフィットとはお互いの成長になります。他者へのギブに積極的になりましょう。
7、パートナーシップをアップデートする。
ライフステージの変化とともに、パートナーシップをアップデートし続ける必要があるのです。
パートナーシップでは、職場、職場外、プライベートの三角形をバランスよく構築する必要があります。未来はますます予測困難となり、不確実な時代を生きる私達は、職場、職場外、個人が力強いパートナーシップを築き、お互いの力を引き出す必要があります。
組織の枠だけでなく、家族とのパートナーシップを見直し、家族の成長を相互に扶助することで、幸せな時間を増やせます。
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