SAME AS EVER この不確実な世界で成功する人生戦略の立て方 人の「行動原理」が未来を決める (モーガン・ハウセル)の書評

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SAME AS EVER この不確実な世界で成功する人生戦略の立て方 人の「行動原理」が未来を決める
モーガン・ハウセル
三笠書房

SAME AS EVER (モーガン・ハウセル)の要約

変化の激しい現代社会でも、人間の基本的な欲望や恐怖、自己利益の追求といった行動パターンは変わらないとといいます。。モーガン・ハウセルが指摘するように、未来を予測しようとするよりも、こうした「変わらない人間の本質」を理解することが、賢明な判断への近道となるのです。

人間の行動パターンが重要な理由

あなたがどんな人だろうと、どんな生まれだろうと、何歳だろうと、稼ぎがどれだけあろうと、人間の行動から時代を超えた教訓を得ることができる。それは、あなたが学べるものの中でも、とりわけ重要な教訓だ。こうした「人間の行動パターンは変わらない」という考えはとてもわかりやすいが、見落とされがちだ。 (モーガン・ハウセル)

将来を予測することはほぼ不可能です。しかし、盲目的に未来を予測する必要はありません。私たちがすべきことは、歴史と人間行動についてより良い学習者になることです。

サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセットの著者のモーガン・ハウセルが示すように、変わりゆく世界の中でも「決して変わらないもの」があります。

人間の欲望、野心、恐怖、そして自己利益の追求は時代を超えて繰り返されてきました。こうした人間の行動パターンを理解することで、私たちは過去に犯された過ちを繰り返す際に驚かず、より冷静に対処できるのです。

変化は目に見えてわかりやすく、私たちの関心を引きます。しかし、ハウセルが指摘するように、真に重要なのは「変わらないもの」、つまり人間の行動パターンです。私たちが未来を理解し、賢い選択をするためには、変わり続ける社会の中で変わらない本質に注目する必要があります。

経済や社会の進歩により、私たちの生活水準は確実に向上しています。家電製品や通信技術、医療の発展によって、数十年前と比べてはるかに快適で便利な生活を送れるようになりました。インフレ調整後の家族収入や時給も向上し、多くの人がより豊かな生活を手にしています。

持ち家率も改善され、生活インフラも整いました。それにも関わらず、幸福度は驚くほど変わっていません。なぜ私たちはこれほど生活が向上しても、満足感や幸福感を感じられないのでしょうか?

その答えは、人間の幸福が「絶対的な富」ではなく、「周囲との相対的な比較」に依存しているからです。私たちは自分の生活がどれだけ向上したかよりも、周囲の人々と比べてどれほど良い生活をしているかに敏感です。経済的な豊かさが増しても、「他人よりも幸せになりたい」「他人よりも優れた生活を送りたい」という欲求が続く限り、私たちの期待値は際限なく上昇し続けます。 こうした現象は、社会全体が経済成長を遂げる中でさらに顕著になります。

例えば、1950年代は現代と比べれば、物質的には豊かではありませんでした。しかし当時の人々が幸福そうに見える理由は、生活水準が多くの人々の間でほぼ均一であり、他人との比較が少なかったからです。

ハウセルが指摘するように、当時の人々は限られた範囲の中での生活を送り、それが「普通」であるという共通認識を持っていました。比較対象が少なく、他人と競い合う意識が薄かったため、多くの人が自分の生活に満足していたのです。

ところが現代社会では、インターネットやSNSの普及により、他人の生活が容易に見えるようになりました。誰かが高級車を買った、海外旅行をした、高級レストランで食事をした――こうした情報が瞬時に伝わり、比較の範囲は自分の身の回りの人々から、世界中の人々へと広がっています。

結果として、「もっと良い生活を送りたい」という欲求が高まり、幸福のゴールポストは常に先へと移動してしまいます。 また、経済的な豊かさが増すにつれて、私たちの期待値もそれに比例して高くなります。例えば、現代ではスマートフォンやインターネットが当たり前のものとなっていますが、数十年前には考えられなかった贅沢品でした。

今では、それがない生活は「不便」と感じてしまいます。同様に、医療技術が進歩し、寿命が延びたことで、健康に対する期待も高まりました。昔なら受け入れていた病気や体調不良も、現代では「治るはずだ」と期待し、治らないことに不満を感じます。

このように、私たちの生活が豊かになるにつれ、私たちの「普通」の基準も変わっていきます。人間は環境の変化にすぐに適応するため、新しい快適さや利便性もすぐに当たり前と感じてしまうのです。そして、その当たり前の基準を超えるものが現れれば、また新たな欲求が生まれます。この「ヘドニック・トレッドミル(快楽順応)」と呼ばれる現象が、幸福の追求を終わりなきものにしています。

過去のデータをもとに未来を予測することは、一見理にかなっているように思えます。しかし、現実はそれほど単純ではありません。世界は驚くほど複雑に絡み合い、予測を超えた出来事が頻発します。

たとえば、ガソリン価格が上昇した場合、「車の利用が減る」と単純に考えるかもしれません。しかし、実際には消費者の行動変化、政策の転換、技術革新の加速、産業界の対応といった複雑な反応が起こります。これらが絡み合い、時には予測とは正反対の結果を生み出すこともあります。予測を超える連鎖反応が、社会全体に予期せぬ影響を与えるのです。

変化は直線的に起こるのではなく、複利的に積み重なります。小さな変化が時間をかけて、予想を超えるほど大きな影響をもたらすのです。歴史を振り返れば、これは明らかな事実です。しかし、私たちの直感はこの複利的な変化を理解するのが苦手です。

短期間での劇的な変化には反応しやすい一方、長期的な進歩には気づきにくい傾向があります。 未来を正確に予測することは不可能です。しかし、人間の行動パターン――欲望、恐怖、リスクへの反応――は驚くほど一貫しています。これを理解し、変化に対して柔軟な想像力を持ち続けることが、未来を見通す鍵です。

テクノロジーや医療、経済が劇的に進化しても、人間の本質的な欲求や感情は変わりません。もし私たちが500年前や500年後にタイムスリップしても、人々が同じように欲望や恐怖に振り回されていることに気づくでしょう。

「期待したもの」と「現実」とのあいだに大きなギャップがあるときに、人は感情を揺さぶられるのだから。そう考えると、期待がいかに強力なものかがわかる。

人は誰しも、心の中に夢や理想を描きます。しかし現実は必ずしも思い通りにはならず、そのギャップに私たちは大きく心を揺さぶられます。期待という感情は、私たちの幸福感や満足度に驚くほど強い影響力を持っているのです。

豪邸に住む著名人でさえ、さらなる名声や富を求めて心が満たされないこともあれば、質素な暮らしの中でも、家族との温かな時間に幸せを感じる人もいます。

これは期待値の設定によって、同じ状況でも全く異なる感情が生まれることを示しています。 社会的地位や経済状況に関係なく、人は皆、自分が思い描く理想と目の前の現実とのギャップに向き合っています。このギャップを埋めようともがく姿は、人間の普遍的な性質といえるでしょう。

私たちの本質的な部分、つまり基本的な感情や行動パターンは、テクノロジーが進歩し社会が変化しても、実は大きく変わっていません。恐れ、喜び、欲望、そしてリスクに対する反応――これらは古今東西、驚くほど一貫しています。この理解をもとに、変化に柔軟に対応し、予測不能な世界を生き抜くための賢明な判断をしていきましょう。

幸福になる方法は過度な期待を持たないこと

富と幸福には、2つの要素 既に手に入れているものと、期待しているもの/欲しているものがあることを常に心にとどめておこう。どちらも等しく重要であるとわかれば、より多くのものを手に入れることに夢中になり、過度な期待を抱くことはナンセンスと気づくだろう。

富や幸福について考えるとき、私たちはすでに持っているものと、これから得たいと願うものという2つの要素を常に意識する必要があると著者は主張します。この両者が等しく大切だと理解できれば、際限なく新しいものを追い求めたり、非現実的な期待を抱いたりすることがいかに無意味かが見えてきます。

しかも、自分の期待値を意識的に抑えることは、望むものを手に入れることよりもずっと容易な方法なのです。 期待値のコントロールは、私たちが避けて通れない心理的なゲームといえます。時には苛立ちや不快感を覚えることもありますが、誰もが直面する課題である以上、そのルールや対処法を知っておくことは有益です。

人は誰しも、自分の人生や社会全体がより良くなることを願います。しかし、実はそれは表面的な願いにすぎないことが多いのです。私たちが本当に求めているのは、期待と現実のギャップを体験することかもしれません。このギャップこそが、私たちの感情を大きく左右するのです。

重要なのは、期待値は外部環境を変えるよりも、自分の心持ちでコントロールできる部分が大きいという事実です。環境を変えることは往々にして困難を伴いますが、自分の期待値を調整することは比較的容易です。 むしろ、期待値の調整は実践的な幸福戦略といえるでしょう。

現実を受け入れながらも、適度な期待を持ち続けることで、より安定した満足感を得ることができます。これは決して諦めを意味するのではなく、より賢明な生き方を選択することなのです。 私たちは常に期待値と向き合い、それを意識的にマネジメントしていく必要があります。それは人生における重要なスキルの一つであり、幸福感を持続的なものにするための鍵となります。このバランス感覚を磨くことで、より充実した人生を送ることができるのです。

人間の視野はとても狭いので、現在起きていることであれ過去の出来事であれ、私たちは、未知の出来事、注意の及んでいない出来事、悪い予兆である出来事を、つい甘く考えてしまう。

歴史を振り返ると、誰もが予想しなかった出来事がいくつもあります。たとえば、1929年の世界恐慌です。金融市場は安定していると思われていましたが、一瞬にして崩壊し、世界経済を混乱に陥れました。多くの専門家や経済学者たちが、危機が迫っていることに気づかず、結果的に壊滅的な損害を招いたのです。

さらに最近では、2022年に始まったウクライナ戦争も同様です。戦争勃発の数週間前までは、多くの専門家が「侵攻は起こらないだろう」と予測していました。しかし、現実にはロシアがウクライナに侵攻し、国際社会は驚愕しました。こうした出来事は、私たちがどれだけ情報を持っていたとしても、未来のリスクを完全に予測することが不可能であることを示しています。

なぜ私たちはこれほどまでにリスクを見誤るのでしょうか? その理由は、人間の認知の限界にあります。人間の脳は目の前の出来事や短期的な変化に対して敏感ですが、長期的なリスクや不確実性を正しく評価することが苦手です。日常生活において、目の前の課題や問題に集中することは効率的ですが、その一方で、見えないリスクや「まさか起きないだろう」と思われる危機を軽視してしまうのです。

しかし、リスクが予測できなくても、備えることは可能です。予測不可能なリスクに対して有効なアプローチは、柔軟性と多様性を確保し、さまざまなシナリオに対応できるよう準備することです。個人レベルでも、組織や社会全体でも、この「備え」の姿勢が求められます。

例えば、投資の世界では「リスク分散」という考え方があります。未来の市場の動向が不確実である以上、一つの資産に全てを投資するのではなく、複数の資産に分散投資することでリスクを抑えます。また、企業であれば、事業の柱を複数持ち、どれか一つが失敗しても全体が揺らがないようにすることが重要です。

個人の生活においても、収入源を複数確保したり、緊急時に備えて貯蓄や保険に加入したりすることが、リスクへの備えとして有効です。 リスクへの備えは、単に防御的な意味合いだけではありません。備えがあることで、不確実性が高まる状況でも冷静な判断が可能になり、むしろチャンスを掴む余裕が生まれます。予測が外れた時にも柔軟に対応できる構えがあることで、変化に対して前向きに行動することができるのです。

世界恐慌、ウクライナ戦争、新型コロナウイルスのパンデミック――これらすべては、予想をはるかに超えた形で私たちを襲いました。こうした現実を受け入れ、私たちは「予測する」ことに固執するのではなく、「備える」ことで柔軟に対応する力を養うべきです。 リスクは見えない形で潜んでいます。

予測は外れるかもしれませんが、準備をしておけば、いざという時に冷静に行動し、困難を乗り越えることができます。不確実な未来に立ち向かうためには、私たちの認識の限界を理解し、備えるという姿勢を常に持ち続けることが何よりも重要です。

成功したければ、物語を語ろう!

いつだって、勝つのは「最高の物語」だ。

「最も影響力のある物語が勝利を手にする」というのは、歴史を通じて証明されてきた真理です。優れたアイデアや正確な情報だけでは、人々の心を動かすことはできません。真の変革をもたらすのは、説得力のある物語として伝えられる真実なのです。

これは、モーガン・フリーマンと無名の科学者の対比に鮮やかに表れています。フリーマンは単純な買い物リストの朗読でさえ聴衆を魅了します。一方、画期的な医学的発見も、効果的に伝えられなければその価値は埋もれてしまうのです。

歴史上の偉大な変革者たちは、この原理を完璧に体現してきました。マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの「I have a dream」という有名な演説は、その代表例です。用意された原稿を超えて、その場の空気と聴衆との共鳴から生まれた即興の言葉が、世界を変える力となりました。

同様に、マーク・トウェインも鋭い観察眼と物語る才能を併せ持ち、社会に大きな影響を与えました。彼らの成功は、メッセージの真実性と伝達力の見事な融合によってもたらされたのです。 現代社会では情報過多により、人々の注意力は常に分散しています。

スマートフォンやソーシャルメディアの普及は、この傾向をさらに加速させています。そんな中で、複雑な真実を伝えるには、データや統計の羅列ではなく、心に響く物語が必要不可欠です。これは単なる技術ではなく、人間の本質に根ざした伝達方法なのです。 成功の方程式は明確です。

正しい答えを持っているだけでは、成功するかもしれませんし、しないかもしれません。話術だけが優れていても、その成功は一時的なものにとどまるでしょう。しかし、正しい答えと優れた伝達力を兼ね備えた人は、ほぼ確実に成功への道を切り開いてきました。

私たちは幼い頃から、物語を通じて世界を理解し、学んできました。それは人類の知識伝達の最も基本的な形式であり、今日でもその効果は変わっていません。複雑な概念や抽象的なアイデアも、適切な物語の形で伝えられれば、誰もが理解し、共感することができるのです。

ハウセルが指摘するように、世界は常に変化していますが、人間の本質的な部分は変わりません。物語の力を理解し、それを効果的に活用できる人が、これからも成功を手にしていくことでしょう。最も重要なのは、真実を持ちながら、それを人々の心に響く物語として伝える能力なのです。

経済で起こることの大半は感情に根ざしている。だからこそ、理解しようにもなかなかできないのだ。

経済活動の本質を探ると、そのほとんどが人間の感情に深く根ざしていることがわかります。だからこそ、経済を完全に理解し、予測することは極めて困難なのです。表計算ソフトでは捉えきれない要素、数値化できない感情の動きこそが、実はビジネスや投資の世界で最も大きな影響力を持っています。

この原理は経済の領域だけにとどまりません。軍事戦略、政治活動、個人のキャリア形成、そして人間関係に至るまで、人生の重要な局面において決定的な役割を果たすのは、往々にして数値化や計算が不可能な要素なのです。 優れたリーダーや教育者は、この真実を本能的に理解しています。

彼らは複雑な情報や難しい概念を、聴衆の感情に響く物語へと変換する術を心得ています。数値やデータを超えて、人々の心に直接訴えかけることで、より深い理解と共感を生み出すことができるのです。

最強Appleフレームワーク


この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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