会社を辞めて年収が上がる人、下がる人(池上真之著)の書評

習ったことを翌日に使えない人は、1週間経っても1か月経っても使えないものだ。翌日に1歩でも歩を進めれば、翌々日も1歩進めないともったいない気持ちになる。そのうち、意識しなくても進むようになる。これが習慣化だ。慣れてきたら1日の歩数を増やせばいい。いきなり何歩も進もうとして、始める時期を見定めているのが一番いけない。まず「やってみる」は、スマホ作家の第1法則だ。(池上真之)

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世界で格差拡大が進み、日本人の平均所得は年々減少する。国内に閉じこもって逃げ切ろうとしても、グローバル化で国内の物価は上昇し、若者が減って税負担は増えていく。

会社を辞めて年収が上がる人、下がる人(池上真之著)から多くの刺激を受けました。
若者向けに書かれた本ですが、これからの時代を生きてくための処方箋として
おじさん世代の私も本書から多くのことを学べました。
また、若者のアニメやスマホ文化に加え、習慣の重要性も学べるなどとても内容の濃い一冊でした。

日本人は、今後どう働けばよいかが本書には書かれていますが
著者池上氏の日本の現状分析が私の考え方にとても近く、まずそこに共感しました。

日本全体が地盤沈下することは止められないからだ。国内の格差是正は学者や官僚に任せるとして、一般の国民は、まず自分が結構な泥舟に乗っていることを冷静に認識し、最低限 「自分の身を守る」方法から考え始めたほうがいい。自分の身の安全が確保できたら、周りの困っている人を助ける。そうすることで、一人でも多くの人が助かる。

海外に旅すると日本が成長から一人取り残されていることがよくわかります。
ランチを食べる時に、私はいつも海外の物価の高さに驚かされます。
フィリピンやドバイのホテルでのランチは、東京よりも高くなってきています。
豊かな人が増えれば、当然物価は上ります。
デフレの日本にいると、日本が弱体化していることに気づきませんが
海外に出るとこの国の体たらくがよくわかります。

グローバル化によって、日本が経済的に鎖国ができない以上
日本人も競争にさらされるのは自明の理です。
もはや、私たち日本人は中流を維持することが難しくなっているのです。
サラリーマンであっても、自分の価値を追求し、独り立ちする術を見つけておかないと
生き残れないというのが著者のメッセージになのです。
その時に、若いスマホ作家の生き方やアニメの主人公の思考が役立つのです。

小説投稿サイト「エブリスタ」を立ち上げた著者は
若いスマホ小説家の生き方から、これからの日本人に必要な3つのスキルを見出します。

第1法則 正解よりも行動
第2法則 理屈より成果
第3法則 身内より顧客

■第1法則 正解よりも行動

設計図もそこそこに物語を書き始めるスマホ作家のやり方は的を射ている。今の時代はスピードが命だ。止まったら死ぬ。マグロと一緒だ。下手だったら実戦のなかで上手くなればいいし、「やり方が違うな」と思えば途中で変えればいいだけだ。(中略)この時代に生きるビジネスパーソンは同じスピード感のなかで戦っている。失敗を恐れてチャレンジしない時間があるなら、その時間が最大の失敗である。

アイデアを考えて、何も行動しなければ、その思考のために使った時間は無駄になります。
また計画が立派でも、他社に先をこされれば
ユーザーからはモノマネだと見なされ、ルーザーになる可能性が高まります。
まずは、企画ができたら、小さなことからでもすぐにスタートし
どんどん情報発信し、ユーザーを巻き込みながらフィードバックをもらいましょう。
そこから、面白いアイデアをもらえたり、ファンが生まれてきます。
応援者が集まれば、プロジェクトはどんどん面白く進化し、成功の可能性が高まります。

■第2法則 理屈より成果

スマホ作家の生存戦略の第2法則は、「成果にこだわること。スマホ作家が自己紹介の時に尋ね合うのは「どの作品の作者か」だ。作品は本人以上に作家のことを雄弁に語るので、それ以上の自己紹介はほとんど必要ないくらいだ。「何をするか ?」よりも、「どうやるか?」 「どれだけ続けられるか?」が大切であり、そうした「実行すること」の難しさを彼らはよく知っている。生みの苦しみを知っているから、お互いに敬意を払っている。ライバルとして競い合うこともあるが、一緒に戦ってきた仲間だという意識も強い。ビジネスパーソンならば、「作品」に相当するものは「成果」である。きちんと仕事に向き合っている人は、何らかの「目に見える成果」を出していて、それが作品と同じ意味を持つ。その出来栄えにこだわることがその人の評価になる。

「成果」を出すまでやり続けることは、とても難しいことです。
頭のいい人ほど、「できない理由」をたくさん思いつき、行動を先延ばしします。
やり始めてからも同じで、「やめる理由」をたくさん思いついてしまいます。
「最後に勝つ人は、勝つまでやめない人」=行動力があり、習慣化できる人なのです。
変化の激しい時代だから、「やり方」は途中で変えることは問題ないのですが
最初に決めた目標は変えないことが重要だという著者の言葉が響きました。
やはり、コツコツ(習慣化)に勝るメソッドはないのかもしれません。

■第3法則 身内より顧客

スマホ作家が「作品」をどんどん軌道修正する背景には、いつも読者の存在がある。構想段階の作品は、一人の読者も喜ばせてはいない。だから無価値なのだ。彼らほど顧客と直接心を通じ合わせているサービス提供者を私はほとんど知らない。第3法則は「顧客第一」である。

仕事で顧客視点に立てているかを自分でチェックするひとつの方法は
自分のやっている仕事の「主語」を見ることだと著者は言います。
広告のバナーのコピーや、運営サイドからの公式発表において
主語が「お客さま」になっていない場合は、とても危険なのです。

例えば「○○という新商品が…」「○○という新機能が・・・…」などと
商品や機能が主語になっている企業は顧客との関係を見直さなければなりません。
「(お客さまが)○○できるようになります」「(お客さまの)時間が大幅に短縮されます」と言う
メッセージをルールにしない限り、企業はやがて生き残れなくなるのです。
逆に顧客をファンにできれば、自分の可能性を広げられる時代に生きているわけですから
顧客との関係を徹底的に重視するようにすべきなのです。

表紙の第一印象から私には縁遠い本かと思って、最初は買うのを躊躇しましたが
内容はとても素晴らしく、起業を目指すビジネスマンにはオススメです。

今日もお読みいただき、ありがとうございました。

私の好きな本と私の著書を以下にピックアップしています。
ぜひ、書籍の表紙をクリックしてご一読ください。
    

    

photo credit: Student girl. via photopin (license)

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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