小泉信三「私の履歴書」の書評

人生において、万巻の書を読むより、すぐれた人物に一人でも多く会う方が、どれだけ勉強になるか。(小泉信三)


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書物だけでなく、人との出会いを大事にしよう!

戦後を代表する言論人であり、慶應義塾の塾長として活躍した小泉信三の名言が気になり、小泉信三「私の履歴書」を読んでみることにしました。1966年に書かれた少し古い本ですが、本書から多くの刺激を受けることができました。こういった良書がKindleで復刻されることは大歓迎です。

私たちは読書によって多くの学びを得られますが、それだけに時間を割くのは片手落ちです。確かに本を読むことで、過去の偉人や海外の経営者との対話が可能になります。読書には時代と場所を超越するメリットがあります。しかし、人との交流や新たな体験がなければ世界は狭いままで、人生を面白くできません。旅行や人との交流を若い頃にスタートし、それを続けることが自分へのよい投資になるのです。

今回、本書で小泉氏の一生を振り返ることで、読書と行動の重要性に気付けました。彼の新たなチャレンジが不思議な偶然を生み出し、そこから「奇跡」が生まれることを知ることで、今まで以上に動き回りたくなりました。可能であれば小泉氏に会って、話を聞きたいのですが、今を生きる私にはそれは不可能です。しかし、書駅を通じて彼との対話を疑似体験することで、戦時中の慶應の塾長が日本のために何を行ったかを知ることができました。当時の様子を知ることで平和は努力しない限り続かないこと、変化が突然訪れることに気付けました。第一次大戦前のヨーロッパで多くの人たちは世界大戦が起こるなど考えてもいませんでしたが、一つの小さなきっかけで、ヨーロッパ全土が戦場になり、イギリス中心のパワーバランスが崩れたのです。日清戦争や日露戦争の勝利やアメリカとの関係悪化によって、日本は戦争への悲惨な道を進んでい9ことになります。

また小泉氏の履歴書から、明治・大正、昭和初期の文化人や学者たちが何を考え、行動していたかがわかりました。特に戦中の学徒動員によって、慶應は大学であることをやめ、研究機関になったという小泉の一言が響きました。戦争で学内に学生がいなくなれば、大学は存在理由を失います。二度とこのような悲劇を日本人には味わせてはなりません。小泉は学生のための最後の餞け(早慶戦)に尽力します。軍部や文部官僚、早稲田の反対論を押さえ込み、早慶戦を実現します。今の右傾化や教育予算の削減などを見ていると確実に空気が変わってきたことを実感します。ここでブレーキを踏まないといやな時代に逆戻りしそうです。多くの政治家や経営者、教育関係者に今こそこの書を読んでもらい、国民のために何を選択すべきかを再考してもらいたいです。

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時には、書を捨て、街に出よう!人に会おう!

小泉は学者になる際、先輩の堀江帰一氏から以下の激励をもらい、アクティブに行動するようになります。読書だけではなく、人との交流や海外視察を繰り返し、自分を強くしていきます。

学者になるのは相撲取りになるようなものだ、これが役者だと、家柄の子に役がつくということもあるが、相撲にはそれがない、相撲は土俵が強くなければ何ともならない、それだけに面白いのだ。(堀江帰一)

経済学が専門である小泉は文学書耽読と「三田文学」の仲間や永井荷風との交際によって、異なる視点でものを考えるようになります。好きでやったことが後々の授業に活かされます。経済学や社会学の本ばかりでなく、近代文学一般に興味をもって読んでいたことが彼の人生を面白くしたのです。

利益ということを考えず、ただ好きでやったことによって、却て利益を得るという人生の経験の、これもその一つと思います

体験や知識という点と点をつなげることで、彼は自分という価値を高め、やがては慶應の塾長になり、慶應を一流校に育てます。彼が22歳から26歳の時には第一次大戦前後のイギリス、ドイツに留学し、見聞を広めます。その後塾長になり、1936年にアメリカの大学を訪問し、慶應の教育を変えていきます。ジョン・ホプキンス大学のギルマン博士の「大学の財産は学者だ」という主張を取り入れ、彼は学者を大事にし、慶應の研究論文全てに目を通すようになります。大学の研究者を大事にしない今の政治家や官僚たちに前述のギルマン博士の言葉をプレゼントしたいです。

最後に私がもっとも刺激を受けた小泉信三の一言で今日のブログを終わります。

人は自分の歴史を造るが、今日は昨日から生れて昨日の束縛を受け、明日は今日から生れで今日の束縛を受ける。

私たちは日々の積み重ねで自分の人生を作り出しています。昨日のアクションが今日の自分を変え、明日の自分をよくするのです。悪い選択ではなく、よい選択を重ねることが自分の人生をワクワクなものに変えてくれます。読書や行動をやめずに、明日をよりよくしたいと思います。 福沢諭吉や島崎藤村などの大人物が普通の人として描かれているのも本書の魅力だと思います。

まとめ

読書や人との出会い、様々な体験が人生に刺激を与えてくれます。特に人との出会いから不思議な偶然が生まれ、人生を左右することがあります。今ここの一つ一つの偶然を大事にすることで、未来の自分によい影響を及ぼします。時には書をおいて、街に出かけましょう。偶然手にした小泉信三の履歴書を通じて多くのことを学べました。過去の優れた偉人の伝記を読むことで、私たちは思わぬ発見を得られます。過去や海外の偉人たちにとは書籍で対話し、実際に会える人たちには積極的にアプローチをすることが人生をより面白くする秘訣です。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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