ジョン・ルイス・ギャディスの大戦略の書評

キツネはたくさんのことを知っているが、ハリネズミは大きいことを一つだけ知っている。(パロス)


photo credit: Tambako the Jaguar Next photo of the vixen via photopin (license)

私は時空を超えてパターンを探しているうちに、比較研究において守るべき制約を一時的に棚上げしてもかまわないのではないか、さらには歴史上の人物を自由に対話させてもよいのではないかと感じるようになったのである。というわけで本書では、聖アウグスティヌスとマキアヴェリが言葉を交わしたり、クラウゼヴィッツとトルストイが会話したりする。トルストイは私にとって想像力を大いに刺激してくれる人物であり、本書はずいぶんとこの大作家に頼っている。ウェルギリウス、シェイクスピア、F・スコット・フィッツジェラルドもそうだ。(ジョン・ルイス・ギャディス)

ジョン・ルイス・ギャディス大戦略論を読み始めていますが、この大作を一度のブログで紹介するのは、無理があるので、少しづつ紹介していこうと思います。今日はキツネとハリネズミの寓話を元に、成功するために何をすべきかについて考えてみたいと思います。歴史上の偉人たちを対話させることで、何が成功の秘訣かがわかるとアメリカの歴史学の大家のジョン・ルイス・ギャディスは述べています。

イギリスの哲学者のアイザイア・バーリンは歴史上の偉人をハリネズミとキツネに分類します。
●ハリネズミ
プラトン、ダンテ、ドストエフスキー、ニーチェ、プルースト
●キツネ
アリストテレス、シェイクスピア、ゲーテ、プーシキン、ジョイス

ハリネズミ族は「すべてのことをたった一つの構想あるいは体系に関連づけ」、この構想によってのみ「彼らの言動は初めて意味を持つようになる。これに対してキツネ族は「いくつもの目的を追求する。目的同士はまったく関連性がなかったり、ときには相矛盾したりする。仮に関連性がある場合でも、何らかの原則に基づいて関連づけられているわけではない」。(アイザイア・バーリン)

アメリカの政治心理学者フィリップ・E・テトロックのチームは、世界の政治について1988~2003年に行なわれた予測の精度分析を行ないました。大学、政府、シンクタンク、財団、国際機関、メディアなどの「専門家」284人が行なった結果、キツネの予測のほうがはるかに的中率が高いことがわかったのです。一方ハリネズミはと言えば、チンパンジーのダーツ投げ程度にしか当たらないという悲惨な結果でした。

キツネは予測にあたって本能的に「複数の情報源から得た情報を統合」しようとし、「壮大な前提」からの演繹には頼らない。キツネは「政治というもやもやした代物が科学的予測の対象になり得る」こと自体を疑ってかかり、「ものごとを批判的に検証することが何よりも大切だ」という謙虚な姿勢を崩さない。しかしキツネはいつまでも思い惑い、自分の主張が一分の隙もなく盤石になるまで確かめようとして相手をうんざりさせる。トークショーのホストは、二度とキツネをゲストに招かない。政策担当者は、キツネの助言に耳を貸すほど暇ではない。対照的にハリネズミは、優柔不断とは無縁だ。批判もあっさり無視する。結論ありきで強気の自説を展開し、「納得しない者に対する苛立ち」を隠さない。論理的におかしいと指摘されれば、さらに強硬に主張する。「自分の壮大な見通しに囚われ」牽強付会の罠に陥る。ハリネズミの主張は耳に心地よく響きはするが、そのとおりのことが将来に起きる確率はひどく低い。(フィリップ・E・テトロック)

キツネのように自己批判的にものごとを考える人は、変化する状況の中で複雑な要因を見つける能力に長けています。彼らは自分の予測能力に懐疑的で、失敗を正確に思い出すことができ、失敗を正当化しようとしません。状況の変化に応じて適宜考えを修正することで、次の予測の精度を高めているのです。

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すぐれた知性とは、「二つの相反する考えを同時に持ちつつ、しかもきちんと働く」知性

すぐれた知性とは、「二つの相反する考えを同時に持ちつつ、しかもきちんと働く」知性である。(フィッツジェラルド)

私たちの選択には性格や価値観だけでなく、過去の経験も反映されています。初めてのときは何も知らずに選択するにしても、二度目になれば経験から学んだことで結果を変えられます。私たちは一つの知性(つまり自分の知性)の中で、一つの目的だけをめざすハリネズミの方位磁石のように揺るぎない方向感覚と、環境変化に対するキツネの鋭敏な感性を共存させつつ、うまくやっていく必要があるのです。ハリネズミとキツネの相反する考えを同時に取り入れ、時代に適応するようにすべきです。

摩擦に直面したら、臨機応変に対応するしかありませんが、それは、成り行き任せとはちがいます。ときには計画に従い、ときには計画を修正し、ときには計画を捨てるなど、学んだ教訓に基づき、自分の力量で選択する必要があります。

持てる手段以上のことを望んだら、遅かれ早かれ手段に合わせて目的を縮小しなければならない。手段を増強すればより多くの目的を達成できるかもしれないが、全部は達成できない。なぜなら、目的は無限になりうるが、手段は無限にはなり得ないからだ。どの時点で折り合いをつけるにせよ、思い描いていた目的を目の前の現実と結びつけなければならない。言い換えれば、現在地から目的地までの道筋をつけなければならない。いかに両者に隔たりがあろうと、自分の置かれた状況で両者を結ぶめどが立たない限り、戦略を立てることはできない。

明確な目的地を決め、コンパスを持ち、自分の過去の経験や知識を頼りに歩き続けることが重要です。ゴールに向かって、自分の直感を信じて、良い選択を続けるしかないのです。良いチームを作り、スポーツ選手のように訓練を繰り返すことで、結果を残せるようになります。

しかし、立場が上になり、卓越したリーダーになると自意識が強まり、大切なトレーニングをしなくなります。訓練をするより自分を能力を見せつけることを優先したり、評判を落とすことを恐れるようになり、選択の幅を狭めてしまうのです。リーダーになると、自分をある鋳型にはめ込み、そこから脱け出すことができなくなり、大きな失敗を犯してしまうのです。過去の歴史がハリネズミ型のリーダーの失敗を物語っています。自分の壮大な見通しにとらわれ、キツネのアドバイスに従うことをよしとしないのです。戦略を身に付けるためには、歴史を学び、理論を構築できるようにすべきです。孫武が行ったように過去の戦から学んだり、フィッツジェラルドの言う所の優れた知性を持つことが重要なのです。

まとめ

良い結果を出したければ、思い描いていた目的を目の前の現実と結びつけなければなりません。現在地から目的地までの道筋をつけ、点と点を結ぶことを考え、戦略を組み立てます。その際、キツネとハリネズミの両方の思考を持ち、壮大に戦略考え、きめ細かにプランの漏れをなくすようにすべきです。

この記事を書いた人
徳本昌大

 
●複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。

●多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。

●著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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