ベーシックインカムは今後定着するのだろうか?

ユートピアとまでは言わないが 、資本主義の皮を被った新自由主義にによってもたらされた格差社会是正の施策として、欧州を中心に夢のように取り上げられるのが、「べーシック・インカム」だ。(高城剛)

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ベーシックインカムとは何か?

昨年から今年にかけて、メディアでベーシックインカムの記事をなんども見かけました。ベーシックインカムをWikipediaで調べると以下のように説明されています。

ベーシックインカム(basic income)とは、最低限所得保障の一種で、政府がすべての国民に対して最低限の生活を送るのに必要とされている額の現金を定期的に支給するという政策。

新自由主義者は、ベーシック・インカムを導入するかわりに、生活保護・最低賃金などの社会保障制度を無くそうとしています。富裕層に貧困層と同じようにお金を支払うことにもなりかねません。

今回の大統領選挙でもこのベーシックインカムが話題になりました。アメリカ大統領選の予備選で、アンドリュー・ヤング候補がこのベーシックインカムを公約に掲げています。「フリーダム配当金(Freedom Dividend)」と呼ぶ制度がそれで、18歳から64歳のアメリカ市民全員に毎月1000ドルを支給するとのことです。あらゆる市民にこのお金は配られ、富裕層からホームレスまでが同じ恩恵を受けられます。 果たして、このベーシックインカムは今後定着するのでしょうか?

このベーシック・インカムの大規模な実験を行ったのが、北欧フィンランドです。高城剛氏は2049 日本がEUに加盟する日 HUMAN3.0の誕生の中で、その実態をレポートしています。フィンランドの社会保険庁事務所(KELA)のシニア・リサーチャーであるミンナ・ウリカンノ氏よれば、ベーシック・インカムの対象に2000人が無作為に選ばれました。約17万人いた失業給付金受給者の中から、抽選で選ばれたのです。カナダやオランダで行われた実験では、参加希望者を募ったために実験結果に偏りが出たために、フィンランドは無作為の抽選を選択したそうです。

北欧ならではの手厚い失業給付金とは別に、1ヶ月間の給付額は一律560ユー口(約7万2000円)が足され、受給者は実験期間中に就職先が見つかっても、そのまま給付金を受け取れ他のです。また、失業給付金などとは異なり、求職に関する報告をする必要もないという仕組みを採用しました。多い人だと、総額で月に3000ユー口近くを手にすることができました。実験は2017年1月から2年間の予定で始められましたが、期間は延長されることなく2018年末で打ち切られました。 

計画通り、ベーシック・インカムの実験は2018年末に終了します。当初は期間の延長や、受給者を増やすという話も出ていたのですが、比較的早い段階で立ち消えになってしまいました。すでに、失業者に対して週18時間以上の労働を行うか3カ月間の訓練プログラムへの参加を求める新プログラムが可決され、そちらへの切り替えが進められています。(ミンナ・ウリカンノ)

ウリカンノ氏は、ロボット化や自動化が進み、人間のやるべき仕事が減る時に備えて、ベーシック・インカム制度を考えるのは、大事なことだと捉えています。しかし、フィンランドは不況が続き、政府の予算に余裕はありません。また、フィンランド人には『働かざる者食うべからず』という考え方が根付いています。事実上、フィンランドのベーシックインカムの実験は失敗したのです。

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ベーシックインカムは失敗する?

フィンランドの人口は約550万人。国民全員に給付金を支給するとしたら、総額は550万人×560ユーロー130.8億ユー口(約4000億円)が必要だ。一方、2018年のフィンランド国家予算は28.7億ユー口。つまり、ベーシック・インカムを全面的に導入すると、国家予算を上回る原資が必要になるわけだ。これに、失業保険など、ただでさえ手厚い北欧ならではの社会保障が加味される。これまで、北米やヨーロッパ、インド、アフリカなどでベーシック・インカムの実験が行われてきた。おそらく、今後もどこかで実験が行われるだろう。しかし、この仕組みが世界的な広がりを持つまでには、まだまだ時間が必要だと僕は考えている。(高城剛)

フィンランドの予算がベーシックインカムを許容できませんでした。また、働かない者全てにお金を払うという考え方も現状では理解されませんでした。高城氏は多くの国でベーシックインカムをど運輸することは予算を考えると難しいと述べています。

持てる者はますます富み、社会的弱者は救われず、格差は拡大しそうです。ボトムを支える網は穴だらけどころか、ないも同然と考えたほうがよいと高城氏は言います。この網から落ちる人が増えれば増えるほど、社会は改革を求められ、不安定になるはずです。

株価が高くなれば高くなるほど、格差が広がる現実があります。一部の富裕層に完全に富が集中する一方で、貧しい人が増え、社会が不安定になっていくのです。

現在のヨーロッパは「落日の地域」に見える。どの国も、おしなべて成長力が鈍い。社会が成熟し、国民の平均年齢が上がったことから、労働時間が著しく減っている点にある、と僕はみている。欧州内では働き者と言われるドイツ人でも、夕方5時になれば皆帰路につき、夏休みは数週間にわたって、しっかり休む。一方、インドをみれば、5時に帰る者は、ほとんどいない。この差は、10年後に如実に表れることだろう。

高城氏は今後ヨーロッパの落日が始まると予測します。ヨーロッパの平均年齢が上がり、熱心に働かない人が増えていると言うのです。一方、インド人は必死で働いています。社会がフラットになる中で、人口構成や労働観の違いが、先進国を没落させるかもしれません。日本もこの罠から逃れられないでしょう。AIやロボティックスが普及した時にお金を稼ぐためには、自分を変化に適応させるしかありません。格差が広がる未来が見える中、セーフティネットに期待できないとしたら、自分を成長させるしか選択肢はなさそうです。

まとめ

ベーシックインカムの実験がフインランドで行われましたが、結果はあまりよくありませんでした。予算や労働観の問題でベーシックインカムを導入することは難しそうです。AIやロボティックスが普及すれば、失業率が高まりますが、セーフティネットは心許ないのが実情です。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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