オンラインとオフラインが、もはや対立するものではないと認識した小売たちは、先を争うように両者の均衡を手に入れようとしている。しかし問題は、誰が最初にそこへたどり着くかだ。従来の実店舗型チエーン店が先にeコマースをものにするか、はたまたデジタルネイティブのブランドが実店舗運営でリードするか時は刻々と迫っている。(ナタリー・バーグ&ミヤ・ナイツ)
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プライム・ナウがもたらす即日配送の競争激化
ナタリー・バーグ&ミヤ・ナイツのamazon「帝国」との共存の書評を続けます。アマゾンはプライムナウを武器にし、新たな市場に参入します。アメリカで培ったノウハウを用いて、2017年にはプライム・ナウを携えてシンガポールへの進出を成功させました。
アマゾンがこれまで実施してきたすべての食料品関連サービスの中でも、プライム・ナウは最も破壊的なサービスだといってよいだろう。価格戦争は時間戦争に取って代わられ、今や世界中のスーパーマーケットが我先にと即日配送の導入を目指している。
イギリスなど最先端の生鮮食品ネット通販市場での昨年のアマゾンのシェアは2%未満でしたが、プライム・ナウの開始以降、次の変化が起こったのです。プライム・ナウによってイギリスの消費者は多くの便益を手に入れました。
・テスコがテスコ・ナウに加えて、国内の即日配送を本格的に開始(クイックアップと提携)。
・英・スーパーマーケットのセインズベリーズが1時間配送サービスの「チョップ・チョップ」を開始。2018年現在、国内の40%で即日配送を提供している(前年度は11%)。
・マークス&スペンサーが、ゴーファー(英・集荷配送サービス)とパートナーシップを締結し、2時間配送を試行。
・スーパーマーケットのコープがデリバルー(英・出前サービス)と提携し、スナック、菓子、アルコール飲料のスピード配送を開始。
・スーパーマーケットのモリソンズとブースがアマゾンと提携し、プライム・ナウに便乗。
アマゾンが即日配送という新しいトレンドに火をつけ、消費者行動や期待を劇的に変えると、一部の競合はレリバンシーを保つためにアマゾンのインフラに頼り始めました。プライム・ナウを通じて販売を行っているのは、何もイギリスのモリソンズとブースだけではありません。スペインのディア、フランスのフォションとモノプリ、ドイツのロスマンとフェーネベルクなど、アマゾンは全国区の大手食品小売から独立系スーパーマーケットまで、世界の食料品小売と同様の供給契約を結んでいます。
しかし、さまざまなイノベーションを経てもなお、アマゾンはいまだ生鮮食品の分野で確固たる信用を得られずにいます。アマゾンは魅力的な商品を取り揃える必要があるのです。インフラを強化してきたアマゾンは食品デリバリーで顧客を満足させるために、次の進化を求められています。
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アマゾンは2025年に食品スーパーの覇者になれるのか?
食料品以外の分野では、拒みようがないほど巨大化していく権力を前に、アマゾンのプラットフォームにひれ伏す小売は増える一方だ。
ナイキは、何年も抵抗した挙句にアマゾンにショップを開きました。生鮮食品部門でもそのシナリオを再現できるはずでしたが、アマゾンはホールフーズを買収することを選択しました。アマゾンは、スーパーマーケットになるのか、それとも市場としての役割を果たすのか、を決める必要に迫られます。 小売におけるオンラインとオフラインの融合(OMO)は避けては通れない道になっています。
2017年6月16日ウォルマートは、eコマース専業メンズアパレルブランド、ボノボスの買収計画を発表しました。ウォルマートによる買収は1年間で4度目を数えました。そして同日、アマゾンも、ホールフーズの買収を発表し、両社の戦いはより一層激化したのです。
アマゾンによるスーパーマーケット市場への参入は、一種の破壊を意味していた。昔ながらの食料品店はより一層の苦戦を強いられ、その過程では当然、脱落するものも現れるだろう。しかしもう一方では、その取引は実店舗型小売に未来があるという最大の証明でもあった。おそらく、明るい未来が。
この発表を受けて、アマゾンの時価総額は156億ドル(約1兆5600億円)上昇しました。なんとホールフーズの買収に投じた額を約20億ドル(約2000億ドル)上回ったのです。実質的に、アマゾンはホールフーズをただで手に入れ 、ほかのスーパーマーケット部門は市場価格370億ドル(約 3兆7000億円 )の損害を被ったことになります。
アマゾンは顧客満足を高めるために以下の動きを加速します。
1、消費者がすでに、自分のスタイルで買い物をすることが当たり前になっていることから、生鮮食品のネット通販でも顧客第一を念頭に民主化を進める。
2、テクノロジーを利用して、食料品の買い物から煩わしさを排除する。アマゾンは、実用的・日用的な消耗品の自動補充の分野では他の追随を許さない。よって、こうしたカテゴリーのPB開発を意欲的に進めていく。
3、店頭体験にテクノロジーを導入し、カスタマージャー二ー(顧客が購入に至るまでのプロセス)のナビゲーションと決済のプロセスで、フリクションを最小限に抑える。また、高度にパーソナライズされた商品の推奨や特典をリアルタイムで提供する。
4、実店舗が取り扱うカテゴリーは、次の項目に取って替わられる。
(1)生鮮食品や調理済み食品といった消費者の心を動かす商品力テゴリー
(2)料理教室やシェアオフィスなどの体験型スペース
(3)クリック&コレクト/返品力ウンター
(4)即日配送に対応できる生鮮食品ネット通販のフルフィルメント
5、プライムがアマゾンの生鮮食品戦略を下支えする。アマゾンが生鮮食品部門へ進出する最大のインセンティブとなるのは、毎週買い物をする消費者を囲い込み、より広域なエコシステムへ取り込むことである。
アマゾンがホールフーズ買収で獲得したのは460カ所の実店舗だけではありません。彼らは同時に、460カ所のミニ倉庫を手に入れたのだです。この店舗(倉庫)を基軸に、アマゾンは生鮮食品のデリバリーを強化し、顧客満足を高めていくはずです。
著者たちは、2025年までに、アマゾンが食料品部門の壁に新たなひびを入れ、新風を吹き込むだろうと考えています。2025年までに、アマゾンによる生鮮食品サービスは、オンラインとオフラインがシームレスにリンクするようになり、顧客は買い物の時短を行い、ストレスを減らすはずです。アマゾンは拡張性の高いスーパーマーケットのコンセプトを確立し、それをグローバルに発信して、世界の消費者の食料品購入方法を変えてしまうのです。
まとめ
アマゾンはホールフーズの買収で、生鮮食品のデリバリーでの勝利に一歩近づきました。アマゾンはオンラインとオフラインをシームレスにマージし、拡張性の高いスーパーマーケットのコンセプトを確立するはずです。それをグローバルに発信して、世界の消費者の食料品購入方法を変えてしまうのです。
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