PB戦略によって、アマゾンはより強くなる?

小売業者のサイトと、グーグルなどの従来の検索エンジンとでは、検索の意図に大きな違いがある。小売サイトの場合、検索の内容がより詳細になる。商品の利点や特徴に注目して検索する傾向が高いのだ。そのため、アマゾンは消費者が何を求め、何を見つけたか、あるいは何を見つけられなかったかを分析することができる。(キース・アンダーソン)


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進化するアマゾンのPB戦略

ナタリー・バーグ&ミヤ・ナイツamazon「帝国」との共存書評を続けます。 アマゾンは検索エンジンの分野でも存在感を増しています。アマゾン検索では、顧客は商品名やカテゴリーを入れるという特徴があり、そのデータを分析することで、アマゾンはPB商品を開発できるようになったのです。

アメリカではPBよりもナショナルブランドが相対的に好まれてきましたが、リーマンショック後、消費者の行動は大きく変化しました。前回の不況と同時にスマートフォン時代が始まり、テクノロジーが多くの人たちの購買行動に影響を及ぼしたのです。

大不況が終わりを告げる頃には、消費者は自分のスマホで情報を集められるようになり、かつてないほど価格の透明性が高まり、自分の判断で主体的に買い物ができるようになりました。多くのスーパーマーケットが、顧客との関係を深めるために、PBの品質やメッセージ性を強化し、独自ブランド商品の開発に注力しました。ブランド執着度の低いミレニアル世代が大不況の間に成人を迎え、彼らはPBを積極的に購入したのです。

2009年にアマゾンはPBの「アマゾン・ベーシック」をスタートさせました。 アマゾンは、リスクが低く、主要製品を補完するコモディティのカテゴリーである電子アクセサリーでテストを始めました。主要ブランドより価格が約30%低く設定されたケーブル、充電器、電池などのアマゾン・べーシックは数年でシェアを伸ばしました。アマゾン・ベーシックはアマゾンにおける電池総売上の3分の1近くを占めるようになり、エナジャイザーやデュラセルなどのNBの売上を上回りました。

eコマース分析のワン・クリック・リテールによると、アマゾン・ベーシックは立ち上げから10年未満で、ホーム用品、家具、ペット用品、旅行用かばん、スポーツ用品など、数十種にわたるカテゴリーに拡大し、2017年にはアマゾン・ドット・コム全体で第3位の売上を誇るブランドとなりました。わずか10年で、アマゾンはPBブランドでもしっかりと利益を上げることができるようになったのです。

消費者の商品検索や実際の購入履歴など、アマゾンは莫大なデータに基づいて、買い物客の二ーズを細かく拾い上げることができる。そのおかげで、PBカテゴリーへの投資の適正と優先度を測ることができるのだ。 ブランドは顧客への露出を確保するために、実店舗の陳列棚のスペースを買う。そしてスーパーマーケットは、「NB商品相当」のPB商品を同一力テゴリーの人気銘柄と並べて陳列する。小売にとってのゴールは、利益率の高いPBを最善の場所に配置し、コンバージョン率(顧客転換率)を高めることだ。オンライン上のバーチャルシェルフにも同じことがいえる。今日の多くのブランドにとって、世界最強の小売プラットフォーム、つまりアマゾンが誇る高い可視性より重要なものはない。(ナタリー・バーグ&ミヤ・ナイツ)

アマゾンの買い物客が「ブランド名」であまり検索しないことがわかっています。実は、アマゾンのサイトで検索される商品のおよそ70%は、「アイテム名」で検索されています。顧客は「ジレット」ではなく「シェービングクリーム」で検索しますから、PBに誘導しやすいというメリットがあります。

また、ノーブランドの検索、あるいは商品の特性に基づく検索であれば、アマゾンはより簡単に買い物客をPBへ誘導できます。当然、この動きはアマゾンの広告ビジネスにも効果があります。最近では王者グーグルがアマゾンの広告ビジネスの成長によって、影響を受け、株価を下げる程です。

アマゾン・ドット・コムでコーヒーを検索すると、最初のページの1番上にフォルジャーズのバナー広告が表示されますが、トップページを下方に少しスクロールすれば 、アマゾンの「Top Rated  from our Brand(アマゾンブランドの人気商品 )」というPBのバナーと、アマゾン・フレッシュやソリモ(日用品のアマゾンブランド)の取り扱い商品が目に飛び込んでくるようになっています。

アマゾンのPBは、「ベストセラー」「スポンサープロダクト」「Amazon’s Choice」といったバッジが付されているのが特徴です。アマゾンはデジタル広告で利益を生みながら、同時にアマゾンPBのコンバージョン率を最大化するため、サイト内のPBの配置を最適化しているのです。これは、ブランドがスーパーマーケットに棚代を支払っているものの、すぐとなりに競合するPBが置かれている状況と同じです。 

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アマゾンのPBはカテゴリーを広げ、顧客満足度を高めている!

驚くかもしれないが、実はアマゾンのPB事業への取り組みは、大部分がファッションに集中している。アマゾンではひそかに、極端にターゲットを絞り込んだサブブランドのポートフォリオを構築してきた。2018年度のガートナーL2のレポートによると、服、靴、ジュエリーがPB取り扱い品目の86%を占めていた。(ナタリー・バーグ&ミヤ・ナイツ)

アマゾンはPBで領域をカテゴリーを広めています。驚くことにファッションカテゴリーの86%がPB商品によって占められています。アマゾンはファッションカテゴリーで存在感を増すことで、出店していないブランドサイトに揺さぶりをかけています。自社商品を売りたければ、アマゾンとの関係を強化しなければなりません。長年出店を拒んでいたナイキも、終にアマゾンの軍門に降ったのも、アマゾンがファッション領域での売上を伸ばしているからです。

強者アマゾンは改善を重ねながら、PBでの成功の糸口を絶えず探しています。アマゾンは生鮮食品力テゴリーでのPB商品の発売をしばらくの間見送ってきましたが、ホールフーズの買収以降、この分野で勝負を挑んできました。ホールフーズで人気の「365エブリデーバリュー」や、ホールフーズの名を冠する商品を積極的に展開しています。

ワン・クリック・リテールによると、「365」はその後4カ月以内で1000万ドル(約10億円)もの売上を記録し、アマゾンPBとして第2位にまで上り詰めたことがわかりました。

食料品業者がPBを重要視する理由は、このカテゴリーが持つ高頻度で習慣的な性質にある。アマゾンの目標は、日用品を自動補充することにより、食料品の買い物の煩わしさを解消することだ。自動補充サービスそのものも強力だが、補充されるものがアマゾンのPBであればなお強力だ。

アマゾンはホールフーズ買収によって、PBでのビジネスを強化し、顧客の買い物時のストレスを減らしたのです。

音声ショッピングが定着するにつれ、アマゾンでの顧客の行動に変化が起こります。アレクサの検索結果はたった2つに限られるため、ここに入らなければ、アマゾンでの存在感がなくなるのです。

音声検索で1位か2位になれなければ、すごすごと退散するほかない。1位と2位以外に未来はないのだ。(セバスチャン・スチェパーニアック)

顧客の買い物履歴が不明の場合、アレクサは「Amazon’s Choice」のレコメンドします。ベイン・アンド・カンパニーが2017年に行った調査によると、アレクサではじめて買い物をする顧客がブランドを指定しなかった場合、おすすめの半数以上が「Amazon’s Choice」の商品(検索結果の上位ではなく)になります。たとえ売上がカテゴリー総売上のたった2%しかなくても、アマゾンのPBを含むカテゴリーでは、検索結果の17%でPB商品をすすめたそうです。

一方、音声ショッピングでは、買い物客の目的が明確であればあるほど、NBにうまく作用します。明確なブランド・ロイヤルティが存在すれば、アレクサがその情報に基づいて、ブランドの商品を購入するまでのプロセスを短縮してくれます。また、次回の買い物に備えてアレクサはブランド名を記憶してくれます。アマゾンがPBを強化する中で、NBは自社のブランド価値を高める必要が出ています。消費者の志向が変化する中で、アマゾンの動きをチェックし、対策を練ることが求められています。グーグルやウォルマートなどの競合だけでなく、NBもアマゾンとの関係を意識しなければならないのです。

まとめ

アマゾンのPBがその存在感を増しています。アマゾンは顧客データを分析しながら、PBやマーケティング施策を日々改善しています。アマゾンのこの動きは、グーグルやウォルマートなどの競合だけでなく、ナショナルブランドにも大きな影響を及ぼしています。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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