南彰氏の報道事変 なぜこの国では自由に質問できなくなったかの書評

日本はいま、「質問できない国」に陥っている。不都合な公文書の改ざん、廃棄。嘘や強弁を上塗りするような政府答弁書の閣議決定。被害者や告発者に対するデマなどによる攻撃。聞きたいことは山ほどあるが、政治家による記者軽視は著しい。権力が”一強”化するなかで、政治・行政の規範が、底が抜けたように崩れている。(南彰)

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劣化する政治家とメディア

政治の劣化が酷い状況に陥っています。特に、政府の情報公開には問題があり、それを問いただす立場にあるメディアも力を失っています。官房長官会見における、東京新聞の望月記者へ質問妨害も露骨になるなど、権力の情報コントロールが進んでいます。一部の御用メディアが幅を利かす中、どんどん国民の知る権利が失われています。このまま安倍政権の暴走を許すと独裁国家の道を突き進む可能性も否定できません。

そんな中、朝日新聞記者の南彰氏の報道事変 なぜこの国では自由に質問できなくなったかを見つけたので、早速読んでみました。その中には、記者をスルーする政治家の事例が数多く紹介されています。

安倍政権になって、首相動静に「報道各社のインタビュー」と書かれているものはたいてい1、2問の短いぶら下がりである。マイクを持つテレビ局の記者が代表して質問し、その内容は事前に官邸側に伝えているものだ。出来レースと込っても過言ではない。それを崩そうと、新聞社の記者が質問をぶつけようとすると、首相の周辺にいる秘書官たちがその記者に怒りの抗議を伝えてくる。

官邸だけでなく、政府全体で質問をスルーことが日常化しています。メディアの幹事会社が質問を仕切ることで、政治家に対する嫌な質問が減らされているのが実態です。報道の自由という面で見れば、日本は後進国でしかありません。実際、2019年の報道の自由度ランキング(NGO「国境なき記者団」)で、日本は調査対象の180カ国・地域のうち67位で、先進国では最下位になっています。

東京新聞の望月記者の厳しい質問によって、加計学園の怪文書問題が明らかにされた事で、官邸はオフレコ取材を人質にとります。「今まで通りの取材をしたいならば、望月を何とかしろ」と番記者たちにプレッシャーをかけ、メディア内の分断を図ったり、望月記者の質問がおかしいというレッテルを貼るために菅氏は「事実に基づいて質問を」「主観の質問には答えない」という形での質問者への攻撃を行うようになったのです。

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忖度をやめ、事実を明らかにする報道を!

重要な話しはオフレコで、会見が単なる儀式に成り下がっているのが、今の政治報道の問題です。オフレコの取材チャンスを失わないがために、望月記者へのバッシングを行ったのです。政治家が話したいことだけを話す今の記者会見は、国民の未来を暗くするはずです。まずは、首相や官房長官、主要閣僚にオフィシャルな場所での会見をさせ、さらに追加取材をすることが必要なのではないでしょうか?

本書には安倍首相や政治家の会見のファクトチェックが行われていますが、ここには数々のフェイクが存在しています。安倍首相は自分のこだわりが強い政策になると、事実を歪めた強い言葉が飛び出します。憲法改正議論の際には、集団的自衛権の説明にふさわしくない砂川事件を持ち出し、事案を正当化しようとしましたが、最高裁判事経験者から疑義を示されました。働き方改革でも答弁を通じて、裁量労働制のデータ改変問題が明らかになるなど国会運営に強引さが目立ちましまた。

最近では、文書の改ざんだけでなく、破棄も当たり前になっています。元首相の福田康夫氏はそのような状況が未来を暗くすると指摘します。公務員も政治家に忖度するのではなく、時には諭すことも必要です。

きちんとした記録さえあれば歴史の一部の拡大解釈や過小評価は起きにくくなる。未来の人たちの負担を減らすことになります。 公文書の管理で行政への不当な政治の要求や圧力も排除できるんです。公務員が『違うんじゃないですか』『記録に残りますよ』と言う。そうすれば政治家だってむちゃなことは言えませんよ。(福田康夫)

適切に文書を残すことが、行政内部の規範を高め、政府に対する信頼を厚くしますが、今の政府の動きはこれに逆行しています。これでは、戦前の独裁政権と同じと言われても仕方がありません。自由に質問でない国、文書を改ざん、破棄する国の未来は暗いと言わざるを得ません。国民の知る権利を守るために、メディアは政権への忖度をやめ、事実を明らかにする質問を行うべきです。

まとめ

政治家に対する厳しい質問が減り、政治家の会見の質が劣化しています。日本の報道の自由は世界的に見ると後進国並みで、国民の知る権利はないがしろにされています。メディアの自由が確保されない国の自由は、やがて制限される可能性が高いことを考えると、記者が質問を自重するのはとても危険な状況だと言えます。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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