誘惑の抱き合わせが習慣化に効果あり!ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣の書評

人間も、誇張された現実に惹かれやすい。たとえば、ジャンクフードはわたしたちの報酬系を熱狂させる。何十万年も自然のなかで狩りをしたり食料を探しまわったりしたため、人間の脳は、塩と糖分と脂肪を重視するよう進化した。そういう食物はたいてい高カロリーだし、古代の祖先たちがサバンナを放浪していた頃には、めったになかった。次はどこで食物が見つかるかわからないとき、できるだけたくさん食べることが、生き残るための最善の策である。(ジェームズ・クリアー)


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行動変化の第2の法則「魅力的にする」を活用しよう!

ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣書評を続けます。ジャンクフードや甘いものを食べ過ぎてしまうのは、私たちの脳の報酬系に影響を及ぼすからです。現代人は古代人と異なり、高カロリーのものが多い環境に住んでいます。食料はあふれるほどあるにも関わらず、脳は食べ物が不足しているかのように振る舞います。

塩と糖分と脂肪の過剰摂取はもはや健康によくないのに、食べるという欲求は今も根強く残っています。脳の報酬系は約5万年前から変わっていないため、食品業界に恩恵を与えています。彼らは消費者にとってより魅力的な製品を作るために、マーケティング戦略を練り、少しづつ改良を重ねてきました。ポテトチップスの歯ごたえを最高にするためや、炭酸飲料の泡の量を完壁にするために、投資を続けます。

ケールをなんど噛んでも、脳は興味を示しませんが、食感のコントラストが強い食品は、新鮮で楽しい経験をいつまでも与えてくれるので、もっと食べたくなってしまうのです。食品科学者は各製品の「至福点」を見つけることで、現代人の報酬系をくすぐり、肥満を増やしているのです。過食の習慣は、行動変化の第2の法則「魅力的にする」によって、生み出されているのです。

歴史からみれば、未来は今より魅力的になるだろう。報酬はより濃厚に、刺激はさらにそそるものになっていく。ジャンクフードは自然の食物よりカロリーを濃厚にしたものだ。ウィスキーなどの強い酒は、ビールよりアルコールを濃厚にしたもの。ビデオゲームはボードゲームより楽しみを濃厚にしたもの。自然と比べて、喜びがたくさん詰まった経験には抗いがたい。わたしたちは祖先と同じ脳を持っているが、それは祖先が出合わずにすんだ誘惑を知らない脳である。

脳は魅力的なものに抗えません。このルールを使って、自分が行動する確率を上げればよいのです。すべき行動をより魅力的にすれば、私たちは習慣を変えられます。

習慣化のためには、ドーパミンスパイク(ドーパミンの量を示す波形が急激に上昇すること)を理解しておく必要があります。習慣はドーパミン主導のフィードバックループであると著者は言います。麻薬の摂取、ジャンクフードを食べること、ビデオゲームをすること、ソーシャルメディアを見ることなど、非常に習慣化しやすい行動には、多量のドーパミンが関係しています。

ドーパミンは喜びを経験するときだけでなく、予測するときにも放出されることがわかっています。ギャンブル依存症の人は、勝ったあとではなく、賭けをする直前に、ドーパミンが急激に増えるのです。コカイン中毒者は、コカインを摂取したあとではなく、粉を見たときにドーパミンが溢れ出ます。報酬がありそうだと思うといつも、その予測でドーパミンの量が急増するのです。ドーパミンが増加すると、行動へのモチベーションも上がります。

わたしたちを動かすのは、報酬の実現ではなく、報酬の予測である。興味深いことに、報酬を受けたときに脳内で活動する報酬系と、報酬を予測したときに脳内で活動する報酬系は、同じものである。そのため、ある経験の予測が、達成そのものよりうれしいことがよくある。

脳は、「好む」報酬よりも、「欲する」報酬のために、はるかに多くの神経回路を割り当てています。脳内の「欲する」を司る部位は、脳幹や、側坐核、腹側被蓋領域、背側線条体、扁桃体、そして前頭前野の一部に散らばり、とても大きいことが明らかになっています。これは「快楽のホットスポット」と呼ばれるもので、脳内に小さな島のように散在しています。たとえば、何かを欲するときには、側坐核の100パーセントが活性化しますが、何かを好むときは、その部位の10パーセントしか活性化しないことが研究からわかっています。

 

誘惑の抱き合わせで習慣を魅力的にしよう

願望は行動を駆りたてるエンジンだ。どの行動も、それに先立つ予測のために行われる。反応を導くのは、欲求である。そのように考えると、行動変化の第2の法則の大切さがわかってくる。わたしたちは習慣を魅力的にする必要がある。そもそも行動する気にさせるのは、報酬となる経験への期待だからだ。これには、誘惑の抱き合わせ(テンプテーション・バンドリング)として知られる戦略が役に立つ。

誘惑の抱き合わせは、「プレマックの原理」として知られている心理学の理論を応用した方法です。デビッド・プレマック教授の研究にちなんで名づけられたこの原理は、「起こる確率の高い行動は、起こる確率の低い行動を強化する」というものです。返信が遅れた仕事のメールを片づけるのが嫌でも、それで本当にしたいことができるなら、やろうという気になるものです。

以前は音楽を聴きながら、本を読むのが私のよい習慣でしたが、数年前にSNSに時間を割き過ぎ、本を読む時間が少なくなっていることに気づきました。その時、私は誘惑の抱き合わせのルールを活用することにしました。音楽を聴く時には、フェイスブックではなく、Kindleを開くようにうしたのです。音楽と本を抱き合わせることで、読書を魅力的なものに変え、私は読書の時間を取り戻せました。(同時にKindleのアプリを目立つ場所に置き、フェイスブックのアプリを目立たぬところに移動しました。)

この誘惑の抱き合わせは、習慣の積み上げの戦略と組み合わせると効果を発揮します。(参考 習慣の積み上げ戦略の記事)習慣の積み上げ+誘惑の抱き合わせの公式は以下のようになります

1、〈現在の習慣〉をしたら、〈必要な習慣〉をする。
2、〈必要な習慣〉をしたら、〈したい習慣〉をする。
ニュースを読みたいけれど、もっと感謝の気持ちを表す必要があるなら
1、朝のコーヒーを飲んだら、昨日の出来事で感謝していることをひとつ言う(必要なこと)。
2、感謝していることをひとつ言ったら、ニュースを読む(したいこと)。

スポーツを観たいけれど、セールスの電話をする必要があるなら
1、昼休みから戻ったら、三人の見込み客に電話をする(必要なこと)。
2、3人の見込み客に電話をしたら、好きな番組をチェックする(したいこと)。
Facebookを見たいけれど、もっと運動する必要があるなら
1、スマートフォンを取り出したら、10分運動をする(必要なこと)。
2、運動をしたら、フェイスブックを見る(したいこと)。

誘惑の抱き合わせは、自分がしたい行動とセットにすることで、やるべきことを魅力的なものに変えられます。習慣にしたいことを明確にし、それをしたいことと組み合わせることで、よい習慣が身につくようになります。

まとめ

習慣はドーパミン主導のフィードバックループで、ドーパミンが増えると、行動のモチベーションも上がります。行動へ駆りたてるのは報酬の実現ではなく、報酬の予測で、予測が大きいほどドーパミンが急増することがわかっています。「したい行動」と「する必要のある行動」をセットにする誘惑の抱き合わせは、習慣化に効果があります。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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