ニコール・トレースのギグ・ワーカーの現実の書評

新しい働き方や経済の象徴として世界中で話題となっている「ギグ・エコノミー」。「単発または短期の仕事」を意味する「ギグ」は、生き方そのものも激変させるパワーを持ち、急速な広がりを見せている。(ニコール・トレース)


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ギグ・ワーカーの2つの未来

ギグ・エコノミーの未来はその人の働き方によって2分されます。ニコール・トレースギグ・ワーカーの現実 DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文の中で、ギグ・ワーカーの実態を明らかにし、可能性と問題点を指摘しました。実際、ギグ・ワーカーには大きな格差がつきものです。価値あるスキルを持つ人々にとっては、ギグ・エコノミーはしばしば、より魅力的で起業家に近いライフスタイルを可能にしてくれます。しかし、スキルを持たずに仕方なくウーバーやリフトで働く人にとっては、それは「劣悪な職の中の最もましな選択肢」にすぎません。

プロジェクトベースで働く頭脳労働者は自分のスキルによって、稼げる可能性が高まります。Forbesの記事によるとギグ・ワーカーの一部は高収入を得ています。決済業界情報サイト「PYMNTS.com」の最新報告書「ギグエコノミー指標(Gig Economy Index)」によると、ギグ・ワーカーの40%が今や10万ドル(約1090万円)以上稼いでいるそうです。専門技術を持つギグ・ワーカーは2018年の第4四半期だけで12.2%増加しました。

また、彼らの大半(70%)がペイパルなどのサービスを通じた支払いや、デジタルマーケットプレイスを通じた即時払いを利用しています。恒久的かつフルタイムのギグワーカーの37.6%は修士号を取得するなど高学歴で、新しい働き方を楽しんでいます。パーソナルブランディングに長け、強固なネットワークを持つギグ・ワーカーは成功する確率が高いのです。SNSとリアルの弱い紐帯が彼らに仕事を紹介し、彼らに成功をもたらします。

しかし、その一方で、経済的に不安定なギグ・ワーカーも存在します。彼らは、経済的にはとても不安定なうえ、心配事を抱えています。人とのつながりも少ないことも彼らの幸福度を下げています。

シリコンバレーが仕事の再編成を試みたことは、誤りではなかったと思う。働き方の現行モデルは機能していなかった。実験を試みるスタートアップ精神は必要だった。しかし、職にまつわるサポート構造を準備せずに(中略)この問題に取り組もうとすれば、進歩などとはまったくいえないもの、イノベーションとは似ても似つかないものになってしまう。(サラ・ケスラー)

スキルを持たない人が会社から追い出されると職と収入は安定せず、その後の人生の可能性を閉じてしまうのです。

ギグ・ワーカーに可能性はあるのか?

ギグ・エコノミーは二つの世界の最良のものを合わせ持つ可能性がある。すなわち、賃労働以前の経済世界の自立性および独立性を持ちながら、個人が工業経済世界の生産能力を持てる可能性がある。(ルイス・ハイマン)

コーネル大学のルイス・ハイマンは米国の伝統的組織は、新しい経営理念(リーン革命など)と価値観の変化(短期的利益の優先など)により、フルタイム雇用の提供から、より柔軟な短期雇用の提供へと移行し始めていると指摘します。

この労働力再編は、「長時間労働、ストレス、不確実性は、すべて働くからには当然のこと」と考える経営コンサルタントと、必要に応じて利用できる待機労働要員をつくり出した、人材派遣会社によって推進されたのです。

ハイマンは1998年までに、10社中約9社が臨時雇用者を使用するようになり、91年以降は、景気後退が起こるたびに雇用が失われたままとなり、95年までには企業の85%が「少なくとも一業務機能のすべて、あるいは一部について労働力を外注」するようになったと言います。

この煽りを受けた労働者の大半は、ギグ・ワーカーの分断の悲惨な側に落ちる可能性が高いのです。企業の正社員(安定した収入と特典を持つ)削減方針など、自分では制御できない出来事のせいで、彼らは臨時雇用者や「ギグ・ワーカー」にならざるを得ません。

その一方で、ある程度の収入と福利厚生などの生活の保障が担保されれば、労働者は自立しながら、自由な働き方ができるようになります。ギグ・ワーカーが自由に稼げるような政策が取られれば、幸せに働く人を増やすことができます。政府や企業がギグ・ワーカーへのセーフティネットを用意することで、彼らの生活が安定します。柔軟な働き方と稼ぎが両立することで、自由で幸せな人を増やせるようになるのです。自分のスキルを磨き、人に貢献することができれば、ギグ・ワーカーとしての価値を高められ、幸せな時間を増やせます。

まとめ

ギグ・ワーカーは今後2分され、格差が広がる可能性があります。価値あるスキルを持つ人々にとっては、ギグ・エコノミーはしばしば、より魅力的で起業家に近いライフスタイルを可能にしてくれます。しかし、スキルを持たない人は低収入になりやすく、セーフティネットを用意する必要があります。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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