中山秀紀氏のスマホ依存から脳を守るの書評


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スマホ依存から脳を守る
著者:中山秀紀
出版社:朝日新聞出版

本書の要約

インターネットやスマホが依存症に拍車をかけています。依存症から逃れるためには、動画やSNS、オンラインゲームなど何らかのインターネットコンテンツに依存している場合には、すべてのインターネット機器の使用を断つこと(断ネット)が治療において最善です。

なぜ、子どもたちはゲームに依存するのか?

子どもたちは「楽しい」のでゲームをします(正の強化)。「楽しくて」「飽きにくい」、そして「手軽」にできるのでつい、たくさんゲームをしてしまいます。そのうちにゲームをしていないと「不快」になってきます(負の強化)。今度は「楽しみ」を求める他に「不快」の解消手段が必要になります。ゲームは「手軽」に快楽を得られるので、「不快」の解消にもってこいです。そこでさらにゲームをすることになります。次第にゲームをしていないときの「不快」が強くなり、依存物から離れがたくなり、依存症が重症化していきます。まさに悪循環です。(中山秀紀)

2019年WHOは、ゲーム依存症は疾患であると認めました。依存症専門の久里浜医療センターの医師である著者は、スマホ依存の危険性を指摘します。大人も子どももスマホを依存物だと知らずにつきあい、 気づいたときには重症化しているのがスマホ依存症の危なさです。著者は子供はスマホなどのネットデバイスと「同棲」するという表現を使っていますが、それほど子供はスマホに依存しているのです。

なかなか飽きがこなくて比較的つづけやすい快楽が依存症をもたらします。手軽で確実に快楽を得られ、格安なゲームはいつでもどこでも楽しめます。子供たちは、疲れていても快楽を得られるゲームを手放せなくなるのです。ゲームを繰り返しているうちに、子供たちはゲームに依存しはじめ、やがては睡眠をも犠牲にします。

依存症は〈正の強化=快楽を得られるから依存物を使用する〉と〈負の強化=不快を解消するために依存物を使用する〉を脳内につくる精神疾患です。依存症になってしまうと、快楽をもたらすはずの依存物を使えば使うほど、使っていないときの不快度は増してゆくのです。  人は「快楽」を得るために依存物を使います。「快楽」を得ることによって、より「幸福」に なろうとするのです。

ところが、依存物を使いすぎて依存症になると、依存物で「快楽」を得られる(正の強化)ものの「幸福」というゴールに至るのではなく、依存物を使わないときにはいつも「不快」(負の強化)が生じてしまうのです。依存症の人はしばしば、依存物を使用する問は「快楽」を得られるので、それに満足して「幸福」になれると信じて使い続けます。しかし同時に、負の強化も進行していきます。そして実際には、いつの間にか、自らが依存症の負の強化によって「不快」になっていることに気づきにくくなります。 

インターネットは、大量の情報を瞬時に相互に送ることができるため、時間の様相を変えたことが依存症を引き起こすと著者は指摘します。インターネットはやりだしたらきりがない「依存的性質」を備えるメディアで、「使用中止」の判断はあくまでも自分の手、自制心にゆだねられることになります。 ゲーム、SNSや動画、メッセージアプリ(LINEなど)、掲示板、情報サイトだけでなく、買い物依存症やギャンブル依存症も、インターネットが介在することによって(オンラインショッピングやギャンブル要素のあるアイテム課金など)、依存体質を加速します。

依存症から逃れるたった一つの方法

依存物は「快楽」をもたらすので食べられてもすぐには気づきません。つまり、飼いならせずに食われていることに気づくことができないのが、依存物なのです。依存物に食われてしまう人は後を絶ちません。

ゲームは「手軽」に快楽を得られるので、「不快」の解消が可能になり、さらにゲームをすることになります。次第にゲームをしていないときの「不快」が強くなり、依存物から離れられなくなります。この繰り返しのうちに依存症は次第に悪化し、重症化していきます。

ゲームやアルコールに、違法薬物、タバコなどすべてが依存症を引き起こします。こうした関係は、猛獣使いと猛獣に喩えられます。人々にとって、依存物という猛獣を飼いならすのは憧れであり、かっこいいかもしれません。しかし依存物は猛獣よりもしたたかです。猛獣に食べられれば痛いのですぐ気づきますが、依存物は「快楽」をも たらすので食べられてもすぐには気づきません。

ほとんどの依存物は「石コロ」と同じで、動物や虫のようにあちらから襲いかかってくることはありません。たとえばアルコール、違法薬物、ゲームすべて、それ自体が能動的に動くことはありません。動かない液体、白い粉、小さな機械にすぎません。

人が勝手に依存物を製造し、それを使い始めて、使いすぎて、依存症になって止められなくなって自滅しているだけです。しかし、人はその状態すなわち依存症を、長い歴史のなかでも克服できずにいます。たとえば、2016年現在アルコールが原因で亡くなっている人は、世界中で300万人と推計されています。 最初に依存物を使用してから依存症の状態になるまでよりも、2回目以降に依存物を再使用したときのほうがより早く依存症の状態に戻るとされています。

アルコールの場合には顕著で、最初に飲酒を始めてから依存症になるまでに何十年かかった人でも、一旦止めて依存状態から脱却し、その後再飲酒すると、たちどころに依存状態に逆戻りしてしまつことも稀ではありません。この状態を、「再発準備性が高い」といいます。アルコール依存に悩んでいた私は12年前に断酒に成功しましたが、その際、この再発準備性を意識しました。禁酒ではなく、完全にお酒をやめる断酒を選択し、それ以来一滴もお酒を飲んでいません。

依存症からの回復には、「依存物の使用を断ち続けること」と「依存物を適切に使用し続けること」の2種類がありますが、どちらがより難しいのでしょうか?一見「依存物を適切に使用し続けること」のほうが簡単そうに見えるかもしれませんが、実際は全くその逆です。

「依存物の使用を断ち続ける」と「負の強化」は軽減していきますが、「依存物を適切に使用し続ける」と常に「負の強化」と闘い続けなくてはなりません。 断ネットか、節ネットか依存症回復の原則は、すべて同じです。動画やSNS、オンラインゲームなど何らかのインターネットコンテンツに依存している場合には、すべてのインターネット機器の使用を断つこと(断ネット)が治療において最善です。

インターネットへの依存が重篤な場合や、依存症によって人生に重度の影響があるような場合には、一時的であってもインターネットから完全に離れるべきです。依存体質から逃れるためには、対象から距離を置くのがもっとも賢い選択なのです。親はこのルールを覚え、子どもと共にスマホ利用の対策を考えるべきです。

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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