新エクセレント・カンパニー: AIに勝てる組織の条件
著者:トム・ピーターズ
出版社:早川書房
本書の要約
一人一人がエクセレントな生き方を実践することで、AIやロボティクスに負けない組織を作れます。人はいつも舞台にいて、その瞬間のエクセレントな振る舞いによって、結果が変わります。瞬間瞬間に現れる私たちのエクセレントな振る舞いが、エクセレントな会社の土台になっていくのです。
エクセレントが企業を強くする理由
エクセレントは増益への道。エクセレントは安定への道。エクセレントは楽しい。本当だ。(トム・ピーターズ)
私は若い頃にトム・ピーターズに相当影響を受け、彼の本をなんども読み返しました。今回新編が出たエクセレント・カンパニーは分厚い一冊で、当時の私にはとても高い本でしたが、思い切って購入したことが懐かしい思い出になっています。トム・ピーターズは、1982年、マッキンゼー時代の同僚ロバート・ウォータマンと『エクセレント・カンパニー』を出版し、これが世界的ベストセラーになりました。今回、その一冊がAI時代に新たに生まれ変わり、私たちに届けられたのです。
AIやロボティックスの時代に「人」はますます重要になると著者は言います。
ソフトウエアが人間の仕事を肩代わりするようになるにつれ、世界じゅうのさまざまな企業に危機が迫ってきている。テクノロジーの波はすでに押しよせつつある。いまや問題はタイミングだけだ。それは15年先か、10年先か、5年先かもしれない。テクノロジーが雇用市場をむさぼりつくすまでどれほどの時間があるのだろう。私たちの戦いは、けっきょくのところ負け戦なのだろうか。この質問に対して私が出した答えは、明確なノーである。
テクノロジーが進化し、人間の仕事を奪うというクレイジーな状況をコントロールし、利益を上げる方法が、「エクセレント」なのです。
来たるべきその日に備えるスタッフの姿勢が反映されたエクセレントな組織文化が、顧客を引き寄せます。顧客やコミュニティとの感情的な結びつきを生みだすエクセレントなサービスは、機械からは生み出せません。エクセレントは、人間主導型の出来事や、マインドの状態であって、コンピューターでつくられた練習問題には宿りませんん。
エクセレントはいかなる取引や仕事ににおいても「Wao」をつくりだす何千ものスタッフから生まれます。顧客の笑顔や従業員の成長を目にし、人間的な要素に重きを置くことで、ビジネスの世界の勝者になれるのです。
エクセレントなサービスとは何か?
組織は人や社会に奉仕するために存在する。
本書は著者の集大成とも言える一冊で、彼と共に生きてきた有名な経営者の名言やアクションに触れられます。トム・ピーターズは、自分の体験を整理した4094枚のスライドを公開しています。これが本書のたたき台になっています。(https://excellencenow.com/)
エクセレントは測定の指標ではなく、心の状態であり、一つの生き方なのです。エクセレントはテクノロジーの津波に対抗するための最良の対抗策だと捉えましょう。エクセレントは人間味のあるサービスで、じっくり考えることから始まります。
エクセレントは今から5分間で生み出すことが可能です。著者はエクセレントを短いメッセージで表現しています。
■エクセレントは長期目標じゃない。
■エクセレントは超短期戦略だ。
■エクセレントはいまから5分くらいのあいだのことだ。
■エクセレントはいまからする会話。
■エクセレントはいまから始まる会議。
■エクセレントは口を閉じて耳を傾けること、 つまり本気で人の話を聴くこと。
■エクセレントはいまから連絡を取る顧客との会話。
■エクセレントは「ささやかな」ことに「ありがとう」ということ。
■エクセレントはいまから責任を負って謝罪すること。
■エクセレントは失敗に対処するためにものすごいスピードで最大限の努力をすること。
■エクセレントは今日職場に持って行った花。
■エクセレントは計画から遅れている「落ちこぼれ」に手を貸すこと。
■エクセレントは財務(または情報システム部または人事部)の人の考えかたをあえて学ぼうとすること。
■エクセレントは3分間スピーチのために「過剰に」準備すること。
■エクセレントは「取るに足りない」作業をエクセレントの見本に変えること。
エクセレントは従来(ほぼ間違いなく)、長期的な目標とみなされてきましたが、たった5分の努力で実現可能です。エクセレントは、エクセレントとは、毎日毎日、毎分毎分、私たちを支え、鼓舞してくれるひとつの生きかたなのです。
一人一人がエクセレントな生き方を実践することで、AIやロボティクスに負けない組織を作れます。人はいつも舞台にいて、その瞬間のエクセレントな振る舞いによって、結果が変わります。瞬間瞬間に現れる私たちのエクセレントな振る舞いが、エクセレントな会社の土台になっていくのです。
IBMの初代の社長のトーマス・ワトソンの言葉を最後に紹介します。ワトソンはエクセレントになるための時間を聞かれ、以下のように答えます。
1分だ。何かを行うときこれからは決してエクセレントではないことをしないと心に決めるだけだ。(トーマス・ワトソン)
今、この瞬間に顧客やコミュニティのために、何ができるかを考え、貢献することで、エクセレントな存在になれるのです。
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