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FOOTPRINTS(フットプリント) 未来から見た私たちの痕跡
著者:デイビッド・ファリアー
出版社:東洋経済新報社
本書の要約
私たちが生み出してきたイノベーションが、未来の人類にとってはマイナスの遺産でしかないとイギリス・エディンバラ大学の英文学と環境学の教授のデイビッド・ファリアーは指摘します。私たちの子孫のために、今すぐ環境を守るアクションを行うべきです。
未来の化石という視点を持てば、やるべきことが見えてくる。
未来の化石は私たちに、自分と直接つながる世代、つまり私たちの子供の子供の子供だけでなく、私たちとは何百世代どころか、何千世代も隔てられている人びとにも責務を負っていることを示す。(デイビッド・ファリアー)
私たちが生み出してきたイノベーションが、未来の人類にとっては、マイナスの遺産でしかないとイギリス・エディンバラ大学の英文学と環境学の教授のデイビッド・ファリアーは指摘します。
5000万キロにわたって延びる道路、放射能で2万年後まで住めない土地、10万年後も残り続ける二酸化炭素、
化石化するプラスチックごみ、沈みゆく巨大都市なども、やがては「化石」になってしまうのです。未来の私たちの子孫は、この化石をどう評価するのでしょうか?
私たちが住む地球は、この数十年の温暖化によって、暮らしづらい場所になっています。地球の平均気温はすでに1850年当時よりも1℃高くなっており、今世紀なかばにはその差は1.5℃にも達し、現生人類が進化した世界とは根本的に異なる世界となる瀬戸際に立たされています。
旱魅や洪水、森林火災や暴風雨が世界の多くの場所で頻繁に生じ、多くの人々を苦しめています。今後気温が1.5℃以上上昇すれば、かつての常識が通用しなくなります。今まで収穫できていた作物が実らなくなり、赤道付近の都市には人が住めなくなり、海抜の低い島や国は消滅してしまいます。今後も温室効果ガスを放出され続ければ、数世紀のあいだに間違いなく「鮮新世」のような気候に戻ると予測されています。
シカゴ大学の気候科学者のデイビッド・アーチャーは、化石燃料を燃やすことで生じる炭素の3分の1もの量が、いまから1000年間は大気に留まりつづけるだろうと推計しています。私たちが輩出してきた炭素が、この先50万年もの未来の気候に影響を及ぼす可能性があるのです。
飽くことなく延びる道路は、未来の化石のきわめて有力な供給源となるはずだ。たとえ断片となっても、道路は大陸の隅々まで、あらゆる大自然のなかまで、人間の勢力がおよんだことをほのめかすだろう。そうした断片を観察した鋭い人のなかには、より大きな物語を構築できる人もいるかもしれない。繁栄した巨大都市や、地球にまたがる産業や、化石燃料にたいする私たちの欲望や、それを追い求めた深さについての物語だ。さらに信じ難いことに、海の底には陸と陸を結ぶきわめて長い道路もあり、それらもそのまま残るかもしれない。
海は1901年から2010年のあいだに毎年平均1.7ミリ上昇していますが、上昇の大半は温暖化が進んだこの数十年間に生じたと言います。1993年からは年率が平均値の2倍近くになっています。今世紀の終わりには、地球の平均海水準は、今日よりも1メートルは高くなるとも言われています。
海面の上昇が進むことで、グリーンランドと西南極の氷床のいずれか、もしくは両方の崩壊を伴います。氷がすべて解ければ、海洋が世界地図を描き換えてします。北アメリカは西側に縮小し、南アメリカは内陸にまで三角洲が拡大して埋め尽くされてしまいます。中国の海岸線は、現代の位置から150キロは離れた北京付近までも後退します。
どんな化石を未来の子孫に残すのか?
いまでは大気全体に私たちの通った痕跡が残っている。あたかも、人類が経てきた旅と消費してきたエネルギーの地球化学的な巨大な生痕化石のようなものだ。
現代文明はコンクリートの塊を地上だけでなく、地下にも遺そうとしています。そこには、廃棄物がたっぷり埋められています。最も傷つきやすい生命が最もひどく影響を被ることになり、未来の世代に全体でどれだけのツケがおよぶかはまだ計算されていません。
未来の化石は私たちの遺産であり、自分たちがどのように記憶されるかを選ぶ機会を与えてくれています。未来の化石を認識することが、私たちの行動を変えるきっかけになります。
南極大陸は人類の過去の行動をを記録しています。南極大陸は、何十万年もさかのぼる地球の記録保管所だったのです。氷床全体の横断面は地球の気候の記憶図を明らかにし、そこからは年ごとだけでなく、季節ごとの違いまで正確に教えてくれています。
しかし温暖化が過去の記録の化学的痕跡を消し去ろうとしています。また、北極海の氷には捨て去られたペットボトルなどの3兆個のプラスチック片が凍りついていると考えられています。北極海にたどり着いた太平洋からのマイクロプラスチックは細かい水の結晶によって集められ、それが固まって「氷晶」となり、やがて海氷に結合されていきます。温暖化で、氷が解けると、このプラスチックがさらに多く海へと戻るようになり、自然環境を破壊します。長年、人間由来の残骸の吸収源となってきた北極海が、いまではその発生源にもなろうとしています。
サンゴ礁はまた、驚異的なほどの数の生命を宿す場所になっています。1500種の魚と4000種の軟体動物、および数百種の鳥と30種以上のクジラが住処や餌、繁殖場所などを求めてサンゴ礁に依存していますが、このサンゴ礁も破壊されようとしています。
上昇する水温によってサンゴ礁は白化しています。海面の上昇で水没するほか、海洋にさらに多くの二酸化炭素が溶け込めば、サンゴが必要な炭酸カルシウムが不足することで、やがて地球の海のオアシスであるサンゴ礁が死滅してしまいます。
世界の海洋が被っている損害に抜本的な対策が取られない限り、大半のサンゴは30年後にはなくなると予測されています。私たちが、最後のサンゴ礁を知る世代になるかもしれません。産業廃棄物やコンクリートの塊などのマイナスの遺産を未来の子孫に残せたとしても、大切な自然環境を彼らに伝えられない可能性が高まっています。
著者は世界中を探索し、思考を重ねます。環境学と英文学者の両方の視点から地球を捉えることで、現在進行する地球の危機をわかりやすく明らかにしていきます。
未来の子孫から見れば、私たちはとてつもない犯罪を犯しているのです。ここでブレーキを踏まなければ、ロクでもない遺産ばかりを未来の子孫に残すことになってしまいます。
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