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マッキンゼー ネクスト・ノーマル―アフターコロナの勝者の条件
小松原正浩,住川武人,山科拓也
東洋経済新報社
本書の要約
企業がデジタル化を行い、最適なオムニチャネルを形成するためには、 “アジャイルな意思決定”が欠かせません。ニトリホールディングスのような”本質的なデジタル化”を実現した企業は、そうでない企業よりも株式市場からの評価とEBITDAが伸びていることが明らかになっています。
“本質的なデジタル化”の5つの要件
中国では、以前から日本より進んでいたオンラインチャネルへの移行がより一層加速し、新型コロナ禍でも成長を実現している企業も存在する。また、経済の見通しが不透明な中、商品に対して価格と価値を見極める消費者の目は厳しくなっており、買い物のチャネルや購入する商品のスイッチも起き、新チャネルと新ブランドに顧客は満足している。(小松原正浩,住川武人,山科拓也)
マッキンゼー ネクスト・ノーマル―アフターコロナの勝者の条件の書評を続けます。コロナ禍の中、顧客の購買体験が変化しています。オンラインチャネルへの移行が進み、新しいチャネルやサービスへの評価が高まっています。
アフターコロナの時代には、この数年で厳しくなった消費者の目に耐えうる顧客体験を提供しなければなりません。日本企業がネクスト・ノーマル(コロナ後の新常態)で戦うためには、オンラインを通じて消費者との接点を増やし、そこで得られたデータを活用して、戦略の展開や意思決定をしていく必要があります。
企業がデジタル化を行い、最適なオムニチャネルを形成するためには、 “アジャイルな意思決定”が欠かせません。”本質的なデジタル化”を実現した企業は、そうでない企業よりも株式市場からの評価とEBITDAが伸びていることが明らかになっています。
マッキンゼーが2017年行ったデジタルストラテジーサーベイの結果、売上で見ると、年平均売上高成長率が10%以上を記録した企業が47%存在しています。3年間の株主総利回りの年平均成長率で見ると、デジタル化の評価において上位20%に入っている企業は18%あり、そうでない企業は7%になっています。同様にEBITDAの3年間の年平均成長率は6%に対して1.5%と、パフォーマンスに3~4倍の差が生まれています。
“本質的なデジタル化”を実現するためには、5つの要件が満たさす必要があるとマッキンゼーは指摘します。
①サプライチェーンが、上流から下流まで一貫してデジタル化すること
②ビジネスモデルを変革すること
③トップダウンの全体戦略と、従業員一人一人からのボトムアップの施策創出の両面からアプローチすること
④ビジネスケースの精査、成果予測、意思決定など、ガバナンスが変革されること
⑤失敗しながら学ぶ文化が浸透すること
ニトリホールディングスがコロナ禍でも成長を続ける理由
新型コロナ以前より進められてきたデジタル化だが、デジタル化した企業とそうでない企業の問で、市場のニーズに応えるスピードの差が、新型コロナによってこれまで以上に広がった。日本企業が”本質的なデジタル化”を果たしていく重要性はより一層高まったといえるだろう。
日本企業は、まずデジタル化を通じて達成したい「ありたき姿を」定義すべきです。その上で、注力すべき投資領域を決定する必要があります。また、経営陣自らが関わって、デジタル部門だけでなく事業部を巻き込む形で、各部門における必要な人材をリスキリングする体制を構築しなければなりません。
競争力を失わないためには、”本質的なデジタル化”をいますぐ取り入れるべきです。実際に「ありたき姿」に沿ったデジタル化を実施する際、社内の業務機能の一つ一つに対して、次の5つの視点で注力投資領域を決定するようにしましょう。その際、損益計算書へのインパクトを大きくできるように設計します。
①ビジネスモデル変革:デジタル技術を活用した新たなビジネスモデルの構築ができるか
②Al(データ分析):大量・複雑なデータの新たな分析による価値最大化ができるか
③ロボティクスと自動化:AIによる機械学習による業務効率化ができるか
④プロセスのデジタル化:ビジネスプロセスをデジタル化できるか
⑤AR(拡張現実):モノとヒトの相互接続によるコスト削減ができるか
それぞれの寄与度を考慮に入れつつ、デジタル化投資の優先順位を付けることでロードマップを築いていきます。最適なリソース配分を自死することで、短期間でデジタル化に成功できるようになります。
ニトリホールディングスは、ウイズ・コロナの時代にも”本質的なデジタル化”で成長を続けています。提携先との共同管理が可能なブロックチェーンを活用して、他社と荷物を共同配送することで積載率を高めたり、積極的にロボットを物流工場に取り入れたりなど、様々な分野でデジタル化を進めています。
その結果、2020年の1年間で株価を約28%上昇させています。同社は以下の4つの取り組みを戦略的に実施し、競合への優位性を発揮しました。
①内製化
デジタル関連スキルに加え、ビジネスに対する洞察力も有する人材を350人育成。約20年前からシステムを内製化②アジャイル開発
1日に約10件のリリースという開発スピードを実現
③経営者の意識と信念
デジタル部門は事業部からの要望を請負つのではなく、顧客満足・業務改善を主導
④インパクト主義
開発着手時のみならず、リリース後もメリット、ROI(投資利益率)で徹底的に評価
ニトリではビジョンを明確にし、経営陣と社員やサプライチェーンが一体化しています。2032年には、3,000店舗、売上高3兆円を達成するという目標を掲げ、あらゆる最新技術を試行し、国内外のパートナーとの提携を進めています。
例えば、広告のROIを高めるためにグーグル・アナリティクスと協働することで顧客属性ごとに配信広告を1,128パターン作成することで、クリック率を2倍に増加させました。それ以外にも、ブロックチェーン・テクノロジー関連事業を展開するレイヤーX社(LayerX社)と提携することで紙ベースの伝票を撤廃し、トラックの現在地情報や積荷情報を最適化しています。
ニトリホールディングスでは顧客体験だけでなく、従業員やパートナーの生産性を高めることを目指しています。様々な分野で最適なデジタル投資を行うことで、ニトリホールディングスは類まれな成長を続けているのです。
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